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悪役令嬢、サッド家の息子

「せっかくのドレスが汚れてしまいましたわ」


メイドたちに着替えさせられながら、エリーは気落ちした声で呟く。

すると、素速くメアリーはフォローした。


「大丈夫ですよ。エリー様。きっと、公爵様が今回のお礼もかねて、素晴らしいドレスを送って下さるはずです」


その言葉に悪気はなかった。

だが、エリーにとってはかなり問題の発言である。


 ーーお詫びでドレスは困るんだけど!今回のお礼もかねて色々ふっかけるつもりだったのに!メイドにも聞かれちゃってるし、ドレスだけで解決できると思われてしまうわ!

エリーは思考を巡らせ、自分の有利な方向になるよう発言をする。


「ふふふっ。今回私は沢山の貴族の方々を救ったんですわ。それをドレスで代えようとしたら、どれだけ高いものになるか分からないですわ」


「ああ。そうですね。では、ドレスはお礼の品の1つという扱いになるんでしょうか?」


「そうなると思いますわぁ」


エリーは微笑みながら言った。

その微笑みは、新しいドレスに期待する表情に見えた。


が、全くそんなことは思っていない。

 ーー上手く方向を変えられた!ナイスよ私!


そんなハプニングもありつつ、エリーは着替えを終えて気分一新。

パーティー会場まで戻る。


そこには、同じく服を着替えたバリアルが待っていた。

エリーはバリアルに駆け寄る。


「お兄様。体調は大丈夫ですか?ケガなどをされていませんか?」


「ああ。大丈夫だよ。エリーの方こそ、大丈夫かい?」


「はい!お兄様に助けて頂いたので、ケガなどするわけがないですわ!!」


お互いに、先ほどの戦闘でケガをしていないか心配し合う。

そんな2人、小さな影が近づいてきた。


「お兄様!お姉様!お疲れ様でした!!お2人とも、とてもお強いんですね!!!」


弟のアシルドが、目をキラキラさせながら言う。

エリーとバリアルは目を合わせて苦笑した。


「私は大して強くないですわ。お兄様と違って、私は3人を相手するのも辛かったですから」


「いやいや。エリーの方が凄いよ。エリーが人質を取らせないように立ち回ってくれたおかげで、僕が全力で戦えたんだから」


そのまま3人。

本来のパーティーではあまり褒められたことではないのだが、囲炉裏音事件も起きたということで許される状況の中楽しくパーティーの残りを楽しむのであった。


そんな中エリーは次の暗殺にも警戒をしていたのだが、


「それでは、今夜はここでお開きとさせて貰う」


サッド公爵がそう言って、この日のパーティーは終了。

あっけない終わりである。


エリーたちは、割り当てられた客室へと向かって行った。


「ふぅ」


エリーはベットに座り、一息つく。

戦って疲れただろうと判断した専属メイドのメアリーは、休んだ方が良いと判断して声をかける。


「エリー様。今日はお疲れでしょうし、もうお休みになっては如何でしょうか?」


だが、エリーは首を振った。

まだ、やることがあるのである。


「とある人に呼び出されているんですの。行かなければなりませんわ」


エリーはそう言って、ベットから腰を上げる。

その脳裏に浮かぶのは、着替えに行く前に声をかけてきた人物の姿。


エリーはいくつもある部屋を通り過ぎ、外の庭へと出る。

庭には、色とりどりの花が淡く発光して、不思議な世界を作り出していた。


「来たか。エリーちゃん」


「ええ。来ましたわ。デュランス様」


「様はいらないよ。呼び捨てで良いさ」


エリーの目の前の、黄色い髪の少年は言う。

彼はデュランス。


次期サッド公爵家の家主だ。

つまり、現公爵の息子でもある。


そんな彼に、エリーは呼び出されたのである。

警戒しないわけにはいかない。


が、呼び出しを断るわけにもいかなかった。

エリーとしてはかなり覚悟を決めていて、再度ここで暗殺が行なわれる可能性も考えている。


「それではデュランス。私をこんな所に呼び出して、何のおつもりですの?」


「……うぅん。ここで話す内容でもないし、僕の部屋に来てよ」


デュランスはそう言って、屋敷へと歩く。

全くエリーの事情など考えていないような雰囲気。


エリーは警戒しながらその後をついて行った。

因みに、エリーはデュランスのことを警戒している理由は、サッド公爵の息子だからと言う理由だけではない。


エリーが警戒する理由は、


「ねぇ。エリーちゃん。僕と一緒に、この家を潰さない?」


「この家を潰す。ですの?」


エリーは首をかしげる。

ただ、心の中では頭を抱えていた。


「そう。この家は腐ってるんだよねぇ。だからさ。潰した方が良いかなぁ、って思ったわけ。どう?協力してくれる?」


口調が軽い。

全くといって良いほど真面目な話をしているようには思えない。


だが、エリーには彼の真剣さが分かった。

 ーーなんで、デュランスにしてもイルデにしても、子供の頃から身の回りの人たちを潰そうと考えるのかしら?まさか、デュランスも洗脳されてたりとか?


気になったので、聞いてみることにした。

 ーー可能性が高いのは、


「デュランスは、教育係が消えたりしましたの?」


「へ?なんで分かったのかな?まさか、前から俺のこと気になってたりとか?」


エリーの勘は当たった。

デュランスも洗脳されていたのだ。


「ハアピ家とは敵対関係ですし、ある程度相手の家のことを調べるのは当然ですわ。……それはいいとして、私からは2つ提案がございますの」


エリーは、自分の家を潰したいデュランスに2つの提案をした。

1つは、教会を潰したかったイルデにしたモノと似たようなモノである。


潰すんじゃなくて、自分で操れ。

というヤツだ。


ただ、もう1つの提案はイルデにはしなかったモノ。

それが、


「本当に潰したいのなら、何もしなければ良いですわ。そうすれば、この家は勝手に潰れてくれるはずですの」


「……は?」


デュランスは目を丸くした。

何もするなって言われれば、それも当然である。


「いやいや、何を言ってるんだい。エリーちゃん。俺が手を出さないと、この家は腐り続けて民たちにも被害が出ちゃうんだよぉ」


口調は軽いが、焦っているのはよく分かった。

協力してくれそうだったエリーが、思ったより頭が良くない可能性が見えてきてしまったのである。


「はぁ。ごめんねぇ。エリーちゃんにはこの話、早すぎたかも知れないねぇ。今日のことは忘れて」


そう言って、デュランスは去ろうとする。

財分の部屋に読んでおいて一体どこに去るのかはよく分からないが、とりあえず去ろうとしたのだ。


それを、エリーは一言で止めた。


「デュランス。サッド家が大量の借金を抱えていることをご存じですの?」


「借金?」


何を言っているんだという顔で、デュランスはエリーを見つめる。

貴族が借金をするのはよくあることだ。


少し高いものを買うときにはよく借金をする。

それでも、貴族たちの得られる収入はかなり高いので、大抵はすぐに返し終わる。


だが、今回は事情が違った。


「借金、80兆ほどでしたかしら?」


「80兆、かぁ。そんな高額な借金、なんでこの家が………え?もしかして?」


80兆というのは、何百年かけても得られないような金額である。

そんな金額の借金を無計画に公爵家がやるとは、デュランスには思えなかった。


だが、そこである買い物を思い出した。

その買い物は、今回のパーティーに関わるモノで、


「そう。私の事業を100兆で買って下さったおかげで、そちらはかなり無理な借金をされたようですね。そんなに無理をしなくても良いと思うのですが」


エリーはそう言いながら肩をすくめる。

デュランスは、そのエリーの言葉に反論する。


「いや、たとえ80兆の借金があったとしても、それ以上の収益があるから買い取ったんでしょぉ?今は借金が邪魔になるだろうけど、数十年後には利益に変わってるんじゃない?」


「まあ、今のままもうけることができれば、あなたの言うとおり80兆くらい数年で返せると思いますわ。ただ、私はあの事業がこのまま上手く行き続けるとは思えませんが」


エリーはそう言って、肩をすくめる。

デュランスはそこに食いついた。


「なんでだい?今の状況だと、普通に行けそうな気がするけど」


「簡単ですわ。ハアピ家がサッド家に売却したのは、移動用の船の事業。そして、その業界には敵がいるんですの」


敵。

という言葉の意味をデュランスは考える。


そして、その存在を理解して顔をゆがめた。

なぜならそれが、


「教会かぁ」


教会という、強大な組織だからである。

デュランス1人では、どうやっても相手にできないような組織。


因みに、公爵は教会と競争になってしまうことは理解している。

だが、エリーとの敵対関係で協力しているので、そこまで亀裂は生まれないだろうと考えているのだが、


(旅行用の船を持ってたことって、私を教会が敵視してた大きな理由の1つなのよねぇ。それが私の手から離れれば、私への気持ちは薄れていくはず)


「なるほどねぇ。なんとなくは理解したけど、そんなに上手くはいかないと思うなぁ。僕が、何もしないなんてことは無い」


デュランスは力強く言った。

エリーも、デュランスの性格的に何もしないと言うことはないと考えたので特に何も言わなかった。


これで、話し合いは終わり。

と、思ったのだが、エリーはあること思い出して足を止めた。


「じゃあ、デュランス。もし良かったら、教会のイルデと話してみる気はありませんこと?」


「へ?それは、嬉しいけど、エリーちゃんに利益がないんじゃない?」


エリーは、教会のモノと接触してみないかと提案した。

デュランスは、自分に利益があるとは分かったものの、エリーには利益が無いと思ったので首をかしげた。


「ふふっ。お友達のためにお手伝いするのは、当然のことですわ」


「エリーちゃん!僕のことを、友達だと思ってくれるんだね!」


エリーの言葉に、デュランスは顔をほころばせる。

地位が高くなってくると、出世狙い以外で友達と呼んでくれる人間は少ないので、友達という言葉に弱いモノが多いのだ。


もちろん、エリーは友達だからと言う理由で言ったわけではない。

 ーーイルデとデュランスとアロークスの3人で特殊グループが作れたはず!

夏休み用に新作アップしました!

タイトルは


黒幕ですけど一向にバレる気配がありませんわ


になります。8月中はできるだけ投稿していきますのでこちら是非是非よろしくお願いします!

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