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悪役令嬢、次期国王を洗脳中

「作戦は成功のようですね」


満足そうに微笑むエリーに、サードが無表情にいってくる。

エリーは深く頷いた。


「そうだな。これで、しばらくすれば影響が目に見えて出るだろう」


エリーはこれからの未来のことを考えて、笑みを深めた。

仮面で顔は見えないが、なんとなくエリーの表情を読み取ったサードは、同じように笑みを薄く浮かべる。


それから2日後。


「どういうことだ?なんでこんなに人事異動が!?」


エリーの父親は頭を抱える。

エリーが思っていたより、影響は早く出た。


貴族や教会が、次々と火傷蜥蜴の人員を解雇していったのだ。


ただ、解雇とは名ばかりで、大半が処刑されている。

それによって国内には少なからず混乱が生じた。


火傷蜥蜴のモノは上のポストにいることが多い。

上の存在が消えてしまえば、混乱が起こるのも当たり前。


その影響は、王宮まで及んでいた。




「はぁ」


小さなため息が部屋の中で響く。

孤独な空間のようだが、そういうわけでもない。


部屋には、10人近く人はいた。

だが、ほとんどがため息をつきたいような暗い表情だった。


「最近、王宮も人事異動が激しいらしいですわね」


エリーは面倒そうに呟く。

王宮でも異動が起きたと言うことは、そこまで深く火傷蜥蜴が入り込んでいたと言うこと。


ただ、王宮での火傷蜥蜴は異動しただけだ。

決して殺されたわけではない。


国内の火傷蜥蜴は、大量殺害を受けて1度撤退をすることにしたのだ。

それによって、潜んでいたモノたちが一斉に出て行ったわけで。


「俺の教育係も消えた。どうなっているんだ?」


第1王子のロメルは、落ち込んだような声を漏らす。

その様子から、ロメルの心の深いところまで教育係が入り込んでいたことが読み取れた。


だが、決してそれは悪いことばかりではない。

なんと言ったって、


「大丈夫ですわ。ロメル。きっとその方は、どこかで生きているはずですわ」


エリーがその穴を埋める隙が与えられたのだから。


「ロメル。辛いなら、部屋で休んできてもよろしくてよ?」


エリーは気遣うように言う。

ロメルは大丈夫だというように首を振った。


だが、それもどこか力ない。

エリーは、心配そうな顔を浮かべる。


顔は心配そうだが、

 ーーふふふっ!いいわね!この様子なら、私の方に洗脳できそう!


心の中はかなりひどい。

そんなエリーは、作った表情を貼り付けながらロメルに近づく。


そして、


さわっ

「え?エリー?」


ロメルの頭を撫でた。

驚くロメルをよそに、エリーは優しく撫で続ける。


「ロメル。寂しいなら、私を頼って下さっていいんですのよ」


エリーは優しく語りかける。

ロメルは、顔を赤くしながら静かに頷いた。


しばらくそうしていると、


「お前は、俺の目指すところじゃない」


頭をなで続けられているロメルが、突然そう呟いた。

いきなりですぐには意味が分からなかったが、エリーはとりあえず頭をなで続ける。


 ーーそういえば、サードが教育係も火傷蜥蜴だって言ってたわね。その教育係が、私を理想としないように洗脳していたんだったかしら?

エリーはそこまで考えて、ロメルにかける言葉を決める。


「ロメルの言うとおりですわ。確かに、ロメルの目指すところは私ではありません。ロメルが目指すべきは、私より上ですわ。私など、簡単に超えて頂けなければ」


エリーが優しく言うと、ロメルはガバッと顔を上げた。

その顔は驚愕に染まっている。


「何を驚いておりますの?あなたは王となるのですわ。資金も権力も、私より断然上なのです。私より大きなことをできるのは当然ですわ」


「……不安だ」


エリーの言葉に、ロメルは1言呟いて返す。

 ーー不安ねぇ。権力を持つことが不安なのか、それとも結果を出せるのか不安なのか。どちらかは分からないけど、


「不安ですか?でしたら、それをお友達に相談されては如何かしら?あなたには、あなたに寄り添える友人がいるんですわよ」


「相談。相談か…………エリー。ありがとう」


ロメルは感謝の言葉を口にして、エリーの手から離れる。

どうやら何かしら結論のようなものが出たようだ。

エリーは少し残念そうな顔に。


「なんとなくだが、心が晴れた気がする」


「そう。それなら良かったですわ」


ロメルは言葉の通り、少し顔が明るかった。

エリーも自分の役目は果たせたと安心する。


その時だった。

エリーの頭に、


《スキル『洗脳LV2』が『洗脳LV3』になりました》


声が響く。

いつの間にかレベル2になっていた洗脳のスキルが、レベル3になったのだ。


 ーーもう気にしないわ。

エリーは、スキル関係を気にしないことにした。


だからだろうか、


《スキル『調教LV1』を獲得しました》

余計なものが増えた気がした。


そんなこともあった後。


「なあ、エリー。今度から、お茶会の時間を長くしても良いか?」


ロメルが真剣な表情でいってくる。

エリーは断る理由もなかったので頷いた。王族とのつながりを強くできることは公爵家として悪い事では決してないのだから。


ただ、少し理由に問題があり、


「エリーに、勉強を教えて貰いたいんだ」


「勉強を?」


ロメルのさらなるお願いに、エリーは表情を変える。

表情が少し考え込むようなものになったので、ロメルは少し不安な様子。


 ーーそれは、王や貴族が許してくれるかしら?私の家が好きなように洗脳できる状況になってしまうわけだし。

エリーはそう考え、さらに表情を険しくさせる。


エリーの考え込む表情を初めて見た王族たちは、顔を見合わせる。

エリーが何に悩んでいるのか分かっていないのだ。


しばらくして方針が決まり、エリーは顔を上げる。


「とりあえず、それは陛下に相談して頂けると助かりますわ。私が教育係になってしまえば、私の家の影響力が大きくなりすぎます」


エリーの言葉に、王族たちは表情を変える。

何がマズかったのか気づいたのだ。


そこから改善点などをいくつか話して、


「それでは、また」


「またねぇ!」


時間となったため、エリーは王族たちに別れを告げた。

エイダーが元気よく言葉を返してくる。


ただ、他のモノたちは少し難しい表情をしている。


「お父様には、伝えておくから」


第1王女のタキアーナが、真剣な表情で言う。

それにエリーは苦笑で返した。


そのままエリーは王族たちに背を向ける。

そして、振り返ることもなく部屋から出て行った。


「メアリー。色々とあるかも知れないから、教材関係を買っておいてくださいませ」


「はい。承りました」


専属メイドのメアリーに指示を出しておく。

メアリーはメモ帳を取り出し、そこに何かを書き込んでいった。


 ーーこの展開は予想してなかったわ。流石に全てが計画通りに行くことはないわね。

エリーは今回のことを振り返りながら、これから先の方針を考える。


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