悪役令嬢 夢と力
さて、少し話は変わるが、エリーには夢がある。
それは、
ーー闇の組織を作りたい!
という夢。
明日花は闇の組織というモノに憧れを抱いている。
だから、同じ憧れを持っていたゲーム内のエリーが好きだったのだ。
そして、明日花はとてもファンタジーな世界に転生した。
エリーに、チャンスが訪れたのだ!
エリーは闇の組織を作るため、行動を始めた。
彼女は赤子のため、かなりの時間を寝て過ごしているのだが、起きているときには色々と活動をしている。
重要人物の顔を覚えることももちろん活動の1つであり、もう1つ重要だと思って活動していることがある。
それが、
《スキル『魔力感知LV1』を獲得しました》
《スキル『魔力操作LV1』を獲得しました》
魔力を操ることだ。
魔力を上手く扱えるようになれば、必然として強くなることができるはずだとエリーは考えている。
その考えが間違っているかはともかく、
《スキル『魔力感知LV9』が『魔力感知LVMAX』になりました》
《称号『魔力と共存するモノ』を獲得しました》
《スキル『魔力操作LV9』が『魔力操作LVMAX』になりました》
《称号『魔力を扱うモノ』を獲得しました》
成果はあった。
成果を出したのはほかにもある。
「あ、あぁ~。まっきゃなおはにゃの~とにゃかいしゃんはぁ~」
舌足らずではあるが、エリーは話せるようになったのだ。
エリーは話せることがうれしくて、色々と歌を歌っていた。
だが、
コツコツッ。
足音が近づいてくる。
すると、すぐに歌うことをやめた。
ガチャッ!
「エリー。元気かな」
足音の主はそのまま部屋に入ってきて、エリーを抱きかかえた。
抱きかかえたのは彼のイケメンな兄、バリアルである。
「びゃりありゅにぃしゃま~(バリアル兄様ぁ~)」
エリーが名前を呼ぶ。
すると、バリアルの顔が固まった。
そして、
「え、えええええ、エリーがしゃべったぁぁ!!???」
バリアルの絶叫が響き渡った。
エリーは兄の絶叫に意識が飛びそうになるが、必死で耐えた。
「ちょ、ちょっと早すぎないか!?」
「バリアル!エリーが何かやったの!?」
バリアルから話を聞いた両親は、不審げにしていた。
だが、
「まぁあぁ~。ぱぁあぁ~」
「「か、可愛い!」」
簡単に陥落させることができた。
「エリー。パパ格好いいって言ってごらん」
エリーの父親が期待のこもった瞳をエリーに向ける。
エリーとしては、父親(公爵)に媚を売っておいて損は無いと思うので、
「ぱぁあぁ、きゃっきょいぇ~」
全力でやってやった。
父親は涙を流しながらうんうんと頷いている。
そんな父親に、母親が肘打ちを繰り出した。
肘打ちは父親の横腹に決まり、父親は悶絶しながらうずくまる。
「い、良いじゃないか。娘にこんなことを言って貰えるのはこういうときだけだって、他の公爵たちも言っておったのだ」
父親が額から汗を流しながら言い訳をする。
それを、母親は冷たい目で見つめていた。
「それに、エリーは国王様のお気に入り。私になつかせておくのは大切だ」
父親は表情を真剣なモノにして言う。
ーーさすがは公爵。侮れないわね。
エリーは父親が、とんだ狸であったと驚く。
そして、父親の観察にいそしんだ。
こんな言葉の分からない赤子の時だからこそ、父親のガードが緩くなるのだろうとエリーは考えたのだ。
だからこそ、これからの父親の行動に惑わされないようにしようと、心に誓う。
それから少し時間が経ち、エリーは歩けるようになった。
「きゃあぁぁ!!エリーが歩いてるわぁ!可愛い!」
「エリー!おいで!」
歩けるようになったエリーに、家族は大はしゃぎ。
因みに現在のエリーの家族は、父、母、兄の3人だ。
父の側室や使用人などは沢山いるが、それはまた別の機会に。
「エリーがもう少し歩けるようになったら、屋敷内で散歩させても良いかもしれないわね」
「散歩!それはいい!我が家の素晴らしさを教えてやろう!」
散歩。
その言葉には、エリーも心が躍った。
貴族の屋敷を探索するのに心が躍らないわけがないだろう。
エリーは散歩に期待を膨らませながら、今日は早く眠ることにした。
「あら?エリーちゃんは、もうおねむかしら?」
「ははは。慣れない動きをしたんだ。疲れたんだろう」
「エリー。おやすみ」
お休みの挨拶をして、部屋から出て行く家族たち。
エリーは家族を見送って、まどろみに意識を手放、
すわけがなかった!
ーー闇の組織を作るには、家族にバレずに外出よ!歩けるようになったわけだし、今すぐ行くわ!
まだまだ夜は終わらない。
いや、夜はこれからといった方が正しいかもしれない。