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悪役令嬢、護衛を任せる

次の日、エリーはファーストの家までやってきた。

家はクラウンたちの仕事により、かなり改築されており、秘密基地感は全くなくなっていた。


家の中に居るのは、今までのメンバーだけでなく、昨日の加護持ちが加わったため、100人を超えていた。

エリーが家に入ると、家に居る部下たちが膝をつく。


「お待ちしておりました」


先頭に居たファーストがそう言うと、エリーは首をかしげる。

 ーー何かしら?いつもと雰囲気が違うわね。


「今回、我々クラウンは。闇の加護を持つモノたちを救出することに成功しました。それによって、我らの戦力はかなり大きなモノとなり、目標までかなり近づいたように思われます」


「そうだな。だが、全ての闇を飲み込むには、まだ足りないな」


エリーは、ファーストが何を言いたいのか分からなかった。

首をかしげていると、今度は、妹と再会したばかりのセカンドが口を開く。


「そこで、私たちは考えたのです。クラウンが強いのは、ゼロ様が強いからだと。そして、私たちでは到底ゼロ様を支えることはできないと」


 ーーっ!?そういうことかぁ。

エリーは、セカンドたちの言いたいことを理解して、寂しさを覚えた。


「我々は、クラウンの強化。そして、我々自身の強化のために、これからしばらく、この場所から離れたいと思います」


「そ、そうか。しばらくの別れということだな」


エリーは、感情がないように言う。

 ーー私の闇の組織ごっこに飽きちゃったのね。


エリーは悲しくなった。

 ーーセカンドは妹と会えて目的は達成したわけだし、他のメンバーも時間が経って復讐心が小さくなっちゃったんだろうなぁ。


エリーは感じたのだ。

クラウンの皆が、自分の手元から飛び立っていくのだということを。


 ーー悲しいわね。でも、こういうことだってあるわ。私は、火傷蜥蜴潰しを頑張りましょう。

そう心に決めたとき、エリーはあることを思いだした。


「だが、頼んでいたとおり。昼の護衛は頼むぞ」


エリーは昨日頼んでおいた、自分の護衛は念を押して頼む。

セカンドは深く頷いた。


「それに関しては、俺と新人たち数名で行おうと思っている。安心してくれ」


「ならいい。せいぜい、技術を高めることだ」


エリーはそう言って、仲間たちに背を向ける。

そのまま仮面を懐にしまって、憂さ晴らしへと向かった。


感情的になり、人目も気にせず殺害を行い続けたため、この日、王都に噂が立った。

光をまとった高速で動く精霊が、悪を打ち倒すという噂が。


ただ、幸いなことにというべきかその噂の主がエリーと結びつくことはなったようで、


「エリー。少し聞きたいことがあるのだが」


父親がそう言って、キシィとの勉強の邪魔をしてきた。

エリーは内心苛立ちつつも、笑顔で、


「何ですの?」


と、かわいらしく首を倒した。

 ーー領地の話かしら?


「実は、エリーの護衛を増やしたいと思っていてな。何人ほど欲しい?」


「ご、護衛を増やすんですの!?」


エリーは珍しく声を上げた。

これ以上護衛を増やされると、夜に家から出て行けなくなってしまうため、できればやめて欲しいのだ。


「ひ、必要ないですわ。私、個人的にも護衛を雇っておりますし」


エリーは、父親に諦めさせるために本当のことを言った。

まあ本当のことというと、エリー自身が強すぎて護衛がいらないというのがさらに真実に近いが。


だが、咄嗟に言ってしまった事実に、父親は反応した。


「どういうことだ?そんな話、聞いていないぞ」


 ーーあら?もしかして、面倒なことになりそうな予感が。


「……エリーが自分で選んだなら、それはそれでいい。だが私は、その護衛を信用することはできない」


父親が真面目な顔でエリーに言ってきた。

エリーもそれは分かっているので、反論はできない。


ということで、


「なら明日辺りにでもお父様が暗殺者でも雇って、軽く攻撃して頂ければ良いですわ。それで簡単に結果は分かるはずですの」


エリーはそう言って、困った顔をした。

父親も同じく困った顔をしたが、結局首を縦に振った。


「ならば、明日仕掛ける。そこで護衛をどれくらい増やすか考えるとしよう」


エリーは父親から解放され、勉強を再開する。

兄であるバリアルとキシィは特に今までの話に反応を示さなかったが、1人だけエリーと父親の会話に驚きを覚える者が居た。


それは、

 ーー私、1日中見張ってたけど護衛を雇った所なんて見てないわよ!?


エリーに張り付いていることが仕事の、専属メイドであるメアリーだった。

メアリーの記憶には、エリーが護衛を雇った場面など無かった。


メアリーは夜になってエリーが眠ったのを確認してから、エリーの父親に護衛を雇ったところを見ていないことを報告した。

ただそこではいったん様子を見ようということで落ち着く。


すぐに1日経ち、エリーが襲われる日になった。

その日はエリーが漁村へ向かう日だったため、エリーは移動中に襲われるだろうと予想。


因みに今日襲われることは、セカンドたちにもきちんと伝えてある。

護衛はシッカリしているはず。


まあエリーが思うとおり、過剰すぎる護衛が付いているわけだが。

とは言っても、その数はいつもとは違わない。


ガタンッ!

予想通り、行きの道中で馬車は襲われた。


そして、誰かの悲鳴が………

しなかった。


「ん?どうしたんだ?」


父親も首をかしげている。

いつまで経っても襲撃が来ないため、父親が馬車の扉を開けると、


「なっ!?そんなバカな!我が家の精鋭だぞ!?」


父親が雇ったらしい暗殺者たちが、木につるされていた。

そして、すでにクラウンの仲間たちの姿は消えている。


「お父様。これで、私の護衛を認めて頂けますか?」


「い、いや。ちょっと待て。これは、コレはどうなっているんだ!?」


父親は頭を抱える。

実は、今回選んだ暗殺者たちは、エリーの護衛たちをケガさせないような意味も込めて、公爵家で雇っている暗殺者の中でも1番の精鋭たちに依頼したのだ。


だが、結果は失敗。

数刻も経たずに、全員が無傷で捕縛されてしまったのだ。


「え、エリーよ。一体お前はどんなモノたちに依頼を頼んだのだ?」


手を震わせながら、父親は尋ねてくる。

エリーはなんと言うこともないように、


「実力には申し分ないモノたちですわ。ただ実績と名誉が無いから、私に雇って欲しいと言われまして」


エリーは適当に、それっぽいことを言っておく。

普段はそれがでまかせだと言うことに気づいただろうが現在の父親は全く落ち着けておらず、思考も上手く働かない。


そのため、


「そ、そうか。認めよう。素晴らしい護衛を雇ったのだな」


と、あっさり信じてしまった。

が、公爵としての経験から、


「エリー。是非とも私にもその護衛を紹介してくれないか?」


と、自分もその護衛たちとパイプを作ろうということは、思いついた。


「申し訳ありませんが難しいと思いますわ」


「む?そうなのか?」


「はい。あまり大勢とは関わりたくないということで接触する対象を私に限定したようですし」


エリーは父親からのつながりづくりの要求をいなしつつ、漁村へたどり着いた。

かなりうまく躱したものの。父親はまだあきらめていないようだった。


エリーはそんな父親と目を合わせないようにしつつ、工房に入る。


「あっ。エリー様」


工房のリーダーであるダリージャルが、エリーに気づいて話しかけてきた。

だが、エリーは反応しない。


「エリー様?」


ダリージャルがもう1度話しかけると、エリーの意識が戻ってきた。

そして、目を見開いてダリージャルに尋ねる。


「ど、どうなってますの!?発展しすぎておりませんこと!?」


エリーは、工房の発展具合に驚いたのだ。

なんと、ほとんど手作業で組み立てられていた船が、現在は機械によって組み立てられている。


「あぁ。これですか。これは、この間エリー様が持ってきてくださった本とかを参考にやってみたんですよ。そしたら、思っていた以上にすさまじい技術力の向上をいたしまして、現在では人が200人ほど乗れるくらいの船は作られるようになりました」


そう言って。ダリージャルは後ろを指さす。

そこには、エリーが前世で見ていた船を、一回りほど小さくした船があった。


「いやぁ。魔力理論や錬金術についての本は何に使うのかと思いましたが、風の魔法で進行方向を決めたり、木を金属に変えたり、かなり使うところがありましたね」


「そ、そう。私が持ってきたもので、ここまで発展致しましたのね」


エリーはそう言って、奥の船を見る。

 ーーあれだけでここまで作れるなんて、ここの作業員は意外と優秀なのかしら?


「エリー様。どうせなら、船にお乗りになりますか?」


ダリージャルが、船に乗らないかと提案してきた。

エリーも、乗ってみないと分からないという、現場主義者的視点を持ち合わせているので、ダリージャルの提案にうなずく。


エリーは、数人の作業員とともに、試験用で作られた船の上に乗った。

船が港から少しずつ動いて、


グラッ!

「うおっ!?」


船が揺れ、ダリージャルがふらつく。

そして、体勢を立て直そうと足に力を入れたところで、


グラッ!

「ぎゃっ!?」


ダリージャルの体が宙に浮く。

そして、頭から地面に……


「あれ?」


ぶつからなかった。

ダリージャルの頭を、何かが優しく支える。


「大丈夫ですの?」


そこには、全く動じた様子もなく優しいほほえみを浮かべたエリーが彼のことを支えて立っていた。


「ありがとう、ございます」


ダリージャルは困惑しつつも礼を言う。

それから、もう二度とこんな失態は犯さないと心に決めたのだが、


ガタガタガタガタッ!

激しく揺れる船。


「す、すごい揺れですわね」


「そ、そうですね」


エリーとダリージャルは、手すりに摑まって安定させる。

そして、ダリージャルは、


「うっ!エリー様。すみません」


ダリージャルは断って、エリーから離れた。

「おええええぇぇぇぇ!!!」という言葉が聞こえる。


どうやら、ダリージャルは三半規管が弱かったようだ。

と、思ったのだが、


「おえぇぇぇ!!!」

「ゲロォォォ!!!!」


他の作業員も吐いていた。

というか、エリー以外は全員吐いていた。


「え、エリー様はかなり揺れに強いようですね」

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