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悪役令嬢、居場所と船

夜になって。


「セカンド。今、良いか?」


仮面をつけて、低い声で話すエリーは、セカンドに話しかける。

セカンドは、問題ないと頷く。


すると、エリーは、セカンドに座るよう促す。

セカンドは大人しく指示に従った。


「コレを見ろ」


「ん?………これは!?」


エリーは座ったセカンドに、とある紙を渡す。

その紙は、先日、火傷蜥蜴の館から奪ってきた資料で、


「セ、セラニナ!?」


セカンドの妹である、セラニナの名前が書いてあった。

セカンドは今にも飛びだしそうな様子である。


が、エリーが腕を掴んで止めた。

セカンドはエリーを睨み付け、


「行かせてくれ!頼む!」


「落ち着け。まずはこの場所を見るのだ」


エリーは、セラニナの名が書いてある資料を指さす。

指さした場所は、セラニナがいる場所。


「……これは、どういうことだ?」


セカンドは首をかしげる。

他の被験者たちがいる場所が書かれている中で、セラニナだけが場所を書かれていない。


セカンドが落ち着いたのを見て、エリーはその指を横にスライドさせた。

そこに書いてあるのは、


「……適合!?」


他のモノたちが失敗と書かれている中で、1人だけ適合と書かれていたのだ。

適合とは、恐らく魔力狂いにならなかったと言うことだと考えられる。


そして、


「セラニナは、加護持ちだったのか!?」


そう。

適合できると言うことは、加護持ちだと言うことになる。


そして、そんな適合者がどうなるのかと言えば、


「どうなるんだろうな?」


エリーたちには、分からなかった。


そこから進んでいくために、


「さて、それでは会議を始める」


セカンドとセラニナの居場所について話した次の日。

エリーたちは会議を行うことにした。


理由は簡単。

エリーとしては、


「早速本題に入ろう。我としては、本格的に行動を起こしたいと思っている」


ざわっ!

エリーの言葉に、クラウンのメンバーが焦ったように騒ぐ。


「静まりなさい!」


老婆のファーストが一喝すると、一瞬で部下たちは静かになる。

そこから、おずおずと1人が手を上げた。


「すみませぇん。質問があるのですが。火傷蜥蜴と戦うのは、もう少し力をつけてからで良いのでは?」


その言葉に、部下たちは同意するように頷いた。

そこで、エリーは首を横に振る。


「違う。火傷蜥蜴と戦うのではない。火傷蜥蜴を、内部分裂させるのだ」


部下たちが一斉に目を見開いた。

そして、真剣な表情になる。


 ーー敵が強ければ、こちらが強くなりつつ、敵を弱体化させてしまえば良い。


そう考えてからすぐに時は経ち、次の日。

エリーたちは、この辺りの火傷蜥蜴で、1番偉い存在がいる場所まで来ていた。


「それでは、作戦を開始致します!」


部下はそう言って、エリーの前から姿を消した。

エリーは冷めた目で敵のアジトを見つめる。


 ーーこの作戦が上手くいけば、時間も稼げるし、一石二鳥ね。

エリーはそう思いながら、作戦の実行を待つ。


少しして、ドォォンッ!と言う爆音と共に、敵のアジトから煙が上がった。

エリーは作戦の開始を察知する。


「はぁぁぁ!!!!」


雄叫びを上げながら、部下が敵に襲いかかる。

怒号に押され、敵は次々と傷を負っていく。


そんな中、


「やってくれるじゃねぇかぁ!!!」


大きな丸太を振り回して、部下を吹き飛ばす男が1人。

その男こそ、この辺りの火傷蜥蜴で1番の権力を持つ人物。


さらにその周りには、

 ーーセラニナ、やはりここに居たのね。


セカンドの妹、セラニナを含め、数人の子供たちが居た。


「やれ!闇の加護を持ちし、我が下僕ども!」


男が叫ぶ。

すると、周りの子供たちが一斉に動き出した。


カキンッ!キンッ!


「うわぁ!??」

「ぐぅっ!!」


クラウンの部下たちは、子供たちに押されている。

適合者たちの方が格上なので、押されるのは当然。


だが、数では上回っているので、どうにか保っている。

部下たちはそこで、陽動を行うことにした。


「甘い!」

「遅いぞ!ザコが!!」


部下たちは煽る。

そして、少しずつ男から引き剥がしていく。


少しずつ外していって、


「死ねぇぇぇ!!!!」


1人の部下が男に襲いかかる。


「ぬおおぉぉぉぉ!!!!」


男は部下の攻撃を剣で防ぐ。

防がれた部下は目を見開いた。


「おい!お前ら!!来い!!」


男が子供たちを呼び、すぐに護衛が戻る。

さらに、


「おい!大丈夫か!?」


援軍もやってきてしまった。

クラウンたちは目を合わせ、


「退却だ!!」


一斉に逃げ出す。

エリーはきちんと全員が退避するのを確認してから………


「か、勝ったのか?」

「あ、あいつら、最近仲間を殺しまわってるクラウンだよな」

「……ま、マジかよ!俺たち!クラウンに勝った!!!」

「しかも、ボスはクラウンのやつの攻撃防いだよな!」


「「「ボス!一生ついて行きます!!」」」


火傷蜥蜴たちは勝利に酔いしれる。

そして、クラウンの攻撃を防いだ拠点のボスを褒め称えた。





それから少し時間が経って日が昇り、


「あっ!エリー様だ!」

「ん!本当だ!こんにちは。エリー様!」


エリーに次々と挨拶をしてくる村のモノたち。

エリーは、家族と一緒に漁村へ来ていた。


「こんにちは。少し顔色が良くなりましたわね」


コレで2回目の訪問だが、前回と比べてもかなり顔色が良い気がする。

村人は笑顔をより一層深めて、


「エリー様のおかげです!あのクソ村長を追い払ってくれたおかげで!生活が安定しました!!」


元気いっぱいに言う。

特にエリーが改善策を打ち出したわけではないが、それでもかなりの改善が見られる。


それだけ、前村長の横領がひどかったと言うことだ。

エリーは村人たちと話をしつつ、前回できなかった、工場などの視察をしていく。


工場と言っても、そこまで大きくはない。

工房という方が近いかも知れない程度だ。


「ここで、漁業用の船を作って居るんです!」


村人が元気いっぱいに説明してきた。

エリーは説明を聞き、


「この船、もう少し大きく作ることはできませんこと?」


「船を、大きくですか?」


工房で働いている職人が、エリーの言葉に首をかしげる。

そんなことをして何の意味があるのか、と言う顔だ。


「そう!大きい船を作って、沢山人が乗れるようにして、他の町と船で移動できるようにしたいですわ!」


エリーがそう言うと、職人は腕を組んで悩む。

この世界での造船技術では、かなり難しいところなのだ。


この世界、エリーが前世でいた世界とそこまで技術に差があるわけではない。

科学技術も、エリーが前世で居た世界より、きちんと存在する。


魔法もあるので、科学技術と魔法の組み合わせは、かなり凄いモノだった。

だが、ここで、この世界の大きな欠点が発展の邪魔をする。


その欠点が、王政だ。

強い力を持つ王や貴族が国を支配し、平民は基本的に(しいた)げられる。


そして、平民たちは毎日忙しくて、余裕がない。

そのため、生活を改善しようという思いさえ湧かないのだ。


だからこそ、こういった船などの技術は発展しないが、金のある人間だけが使える転移の魔方陣なんてモノは発展する。

この世界では、身分によって技術に大きな格差があると言うことが、最大の短所にして最大の長所だった。


とりあえずそんな中でも技術力の弱い村人たちでもどうにかできるようにするため、


「そういえば、この村は失業者とか居るのでしょうか?」


エリーは案内役の村人に尋ねる。

村人は少し考え、


「少なくはないですね。厳しい税の取り立てもあり、住居も仕事も失ってしまったモノたちが沢山」


そういう村人の顔には、少なからず怒りが見えた。

エリーは前村長の無事を祈りつつ、話を進める。


「じゃあ、その人たちに仕事を与えますわ。内容は紙に書いて渡すから、ちょっと待ってて貰えますかしら」


エリーは紙にさらさらと仕事についての内容を書き、案内役の村人に渡す。

そして、その後は明日の王族との面会に備えて、お土産を買って置いた。


「あっ!そういえば、ロメルからお茶を頼まれていたんでしたわ。この辺りにお茶はありますかしら?」


エリーは、第1王子であるロメルから、お土産としてお茶を要求されていた。

エリーが尋ねると、村人から1つの小さなパックが手渡される。


「こ、これは!?」


エリーは目を見開く。

そして、


 ーーこれで、王族方のテストをしましょう。

黒い笑みを浮かべた。

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