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悪役令嬢 お客様たち

「エリー。お客様が来たわよ」


そう言って、エリーの母は、彼女を抱き上げる。

エリーは気合いを入れた。


赤子に会いに来るのは、エリーの家と仲の良いモノたちなのである。

つまり、重要な繋がりであると言うこと。


 ーー気合いを入れて顔と名前を覚えましょう。

名前と顔、相手が貴族の場合は、爵位も覚えることができれば完璧である。


「初めまして。エリー様。私、ザック・アントル・ヘバールでございます。以後お見知りおきを」


赤子のエリーに深々とお辞儀をする、口元にひげを生やした中年男性。

ザックという名の彼は、エリーの家と仲の良い男爵である。


「フフフッ。ザック。一応姪なのよ。そんなにかしこまらなくても良いのではないかしら?」


おかしそうにエリーの母親が笑う。

彼女が言うとおり、彼にとってエリーは姪なのだ。


ザックはエリーの母の弟である。

姉弟仲も良く、お互いの家で共同して事業を行ったりするのだ。


ついでに、エリーの家の爵位を伝えておこう。

ハアピ家。公爵家である。貴族においてこれ以上の地位の家は存在しない。


そして、公爵家の娘であるエリーは、

公爵令嬢である。


では、逆らう者はいないぜ私が1番だ!

ということなのかと言えばそんなことはなく。



「エリー。これからあなたが会うのは、とても偉い人なの。できれば、ご迷惑をおかけしないようにね」


エリーの母親はこう言って頭を撫でた。

そして、その言葉でエリーは今から会う相手を感じとる。


 ーー公爵家から見て偉いって、絶対に王族関係者じゃん!!

そう思ったエリーは気合いを入れた。


もちろん、その気合いは顔と名前を覚えるための気合いではあるのだが、今回はそれだけではない。


「アルディーナよ。久しぶりだな」


豪華な服で全身をまとった男が、エリーの前に現れる。

母親を呼び捨てにすることと、その頭にある王冠と、前世で見たことのある顔から判断して、


 ーー国王来たぁぁ!!!

今回会うのは国王であった。


国王という偉大な存在に、緊張やらなんやらを感じたが、子供だから、ある程度の無礼は許されるだろうと開き直った。

それとともに、エリーは前世で得た国王の情報を思い出す。


 ーー国王。あまり出てこなかったけど、確か、あのときに………………そうだ!


エリーは重要なゲーム内でのイベントを思い出した。

そして、それを利用する方法を思いつく。


 ーーコレをするなら今しかない!


「フハハッ!母親ににて美しい目をしておるな」


そう言って、国王がエリーを抱えたところで、エリーは行動を開始する。

この行動が許されるのは、彼女が赤子でいる間のみ。


ガシッ!

幼い赤子の、弱々しい手が、シッカリとあるモノを掴む。


「ちょっ!?エリー!?やめなさい!それを離しなさい!」


母親の焦った声が聞こえる。

だが、エリーは、その手に握っている()()を離さなかった。


エリーは母親や、他のモノたちに取り上げられる前に素早く作業を行う。

手順は完璧だった。

シナリオの進行上、必要なことだったため覚えている。


カランカランッ!

と部品が地に落ちる音。


エリーが王冠をいじると、王冠は簡単に分解された。

そして、


《称号『力の器』を獲得しました》

《加護『光の加護』を獲得しました》


エリーの頭に機械音が響く。

なんとこの世界、ファンタジーな世界にありがちな、スキルや称号、加護なんていうモノがあるのだ。


さて、この王冠だが、実はシナリオ上でエリーが分解する。

その手段は主人公たちが発見するのだが、それを見ていた密偵に先を越され、エリーが力を手に入れるのだ。


だが、その時に獲得するのは称号の『力の器』のみ。

主人公たちに邪魔をされ、加護の方を獲得することができない。


さて、まずは加護について説明しよう。

この世界で加護とは、神から受ける才能のようなモノである。


もちろん加護を持つモノはごく少数で、加護を得るにはかなりの努力や、複雑な手順が必要とされる。

そして通常、加護は1人に1個しか持てない。


だが、その1人1個という制約を壊すことができるのが、称号の『力の器』だ。

この称号は、国王の冠を分解したモノのみ、得ることができる。

つまり今のエリーはすでに、原作のエリーを超えていると言えなくもない。


さて、そして今回手に入れた『光の加護』なのだが、こちらは王冠を分解することで得られるわけではない。

王冠の中に入っていた、小さな紙に触れることで獲得できるのだ。


エリーの幼い手には、シッカリと四角い紙が握られている。

だが、今回光の加護を得たのはエリーだけではない。


「寄るな!」


国王が声を張り上げ、エリーの母親や、エリーを引き剥がそうと動いた兵士たちを止める。


彼も気がついたのだ。

この王冠の関係で、自分が光の加護を得たことを。


もちろん、国王としては加護を得る方法は秘匿しておきたい。

奪われたら大変だから当然である。


「エリーよ。よくやった」


そう言って、国王はエリーを撫でた。

そして、エリーを母親に預け、人払いをさせ、国の重鎮たちを集めた。

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