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悪役令嬢 鑑定されまして

《加護『毒の加護』を獲得しました》


エリーのもうろうとした思考の中に、平坦な声が響く。

すると、


「うっ。ゴホゴホッ!あ、あれ?」


エリーは起き上がる。

今まであった痛みが、全て消え去っていた。


だが、失った血までは戻っていないようで、体がフラつく。


「おおっ!大丈夫か、エリー!」


国王がフラついたエリーを支えた。

そして、宮廷医師長の方を向き、


「よくやった。して、何をやったのだ?」


どう治療したのか尋ねた。

宮廷医師長はうなずき、行ったことを解説する。


「残りのHPが1の状態の時にだけ使える力を使って、エリー様に『毒の加護』を与えました」


毒の加護。

光の加護と同じく加護の1つだが、効果は光の加護と大きく異なる。


毒の加護の効果は、獲得時に体内の毒を全て消し去ること、毒によって受けた傷を全て回復すること。

そして、獲得時以降の効果は2つ。


まず、毒を飲めば飲むほど、毒に強くなっていく。

だが、毒を無効化できるわけではないので、耐性の強化をしないと、ゲーム内のエリーのように、毒を飲んだら死亡する。


もう1つは、毒を作り出すことができるという効果。

ただし、この毒を飲んでも自分を強化することはできない。


「毒の加護だと?……エリーよ。毒の加護を獲得したか?」


「え?は、はい。獲得しました」


「……ふむ」


エリーは別のことを考えていたため、少し慌ててしまった。

何を考えていたかと言えば、


 ーー計画通り過ぎて、面白みがないわね。

これであった。


今までの全ては、エリーの計画通りだったのである。

まず、毒の加護を獲得するのは、ゲーム内のエリーが過去に行ったことをなぞるだけ。


まあ、ゲーム内のエリーは国王に断りを入れずにクッキーを食べるわけだが。


「それでは、色々あったが鑑定式を始めようか。医師たちよ、外の兵士に貴族たちを入れるように言ってくれ」


国王がそう指示すると、医師たちが部屋から出ようとしたが、


「少しお待ちくだされ。1つ質問したいことが」


宮廷医師長が待ったを掛けた。

エリーはここに来て危機感を感じた。


 ーーあまりにも手口がきれいすぎて、毒を私が仕込んだんじゃないか疑われてるのかしら?

宮廷医師長がエリーを見ながら質問があると言ったので、そんな思いが加速した。


「エリー様。その全身の傷は、一体どうされたのですかな?」


質問の内容は恐れていたモノではなかった。

が、国王がこれに食いついた。


「どういうことだ?全身に傷だと?エリーよ。誰につけられたのだ」


国王が鼻息を荒くして問いかけてくる。

 --ここでキシィを失うと、私の勉強が中断されちゃうからなぁ。


「ふふ。これは教育だそうなので、気になさらないで下さい。私()、解決しますから」


その言葉で国王は何か察したのか、それ以上追求することはなかった。






「皆のモノ!医師たちの働きにより、エリーは無事回復した。医師に、そして、お前たちの命を救ったエリーに拍手を」


パチパチパチパチッ!

会場全体で拍手が起こる。


色々と国王の演説があったが、鑑定式が始まった。

まずは、どこかの子爵の子供。


【ステータス】

名前:アンディアル・エイリア・ソノーシア

種族:人

LV:2

職業:次期子爵

HP:1100 MP:110

攻撃力:20 防御力:20 機動力:10 運:10

スキル:『剣術LV1』

称号:なし


これが子爵の子供のステータス。

といっても比べる対象がなくて分からないだろうから、通常の子供のステータスを。


【ステータス】

名前:

種族:人

LV:1

職業:

HP:1000 MP:100

攻撃力:10 防御力:10 機動力:10 運:10

スキル:なし

称号:なし


レベルが上がることでステータスが上昇するので、子爵の子供は少しだけステータスが高い。

レベルは生き物を殺せば上がるので、虫などを殺したと考えられる。


因みに、エリーのステータスは、


【ステータス】

名前:エリー・ガノル・ハアピ

種族:人

LV:92

職業:公爵令嬢

HP:15200 MP:1520

攻撃力:760 防御力:730 機動力:740 運:800

スキル:『魔力感知LVMAX』『魔力操作LVMAX』

称号:『力の器』『魔力と共存するモノ』『魔力を扱うモノ』

加護:『光の加護』『毒の加護』


レベルアップの効果だけでなく、光の加護によるステータス上昇も効果を出している。

隠す必要があるのは、誰にでも分かるだろう。


「「なっ!?」」

「嘘でしょ!?」


エリーの鑑定結果を見た貴族たちが、次々と驚きの声を口にする。

何に驚いたのか。


それはもちろん、優秀な攻撃力などにも驚いたのだが、


「「「加護が2つ!?」」」


1番の驚きはそれだった。

この世界では、通常加護は1つ。


というより、持っていなくて当たり前なのだ。

それなのに。なぜかエリーが加護を2つ持っている。


「落ち着け皆のモノ。毒の加護については宮廷医師長から説明がある」


国王がそう言うと、貴族たちが静まる。

静まったところで、宮廷医師長が毒の加護を付与したことを説明した。


「そ、そんな秘術があるのですか!?」

「なぜそのような秘術を黙っておられたのです!」


非難の声が貴族たちから上がるが、


「強力な毒を作って国王を害する方が出るかも知れないので、歴代の宮廷医師長しか付与の仕方は知らないようになっています」


の一言で、全て一蹴された。


「さて、毒の加護については納得したようだから、2つ加護を持っている理由を説明しよう」


宮廷医師長によって全ての非難が一蹴されたところで、国王がそう言った。

貴族たちも興味があるようで、真剣な顔つきになる。


「エリーが加護を2つ得られた理由は、称号だ」


エリーの持つ称号。

それは、力の器。


他にも2つ称号は持っているが隠しているので、貴族たちにはそれしか分からない。


「力の器には、加護をいくつでも手に入れることができるという効果があるようだ。因みにこの称号は、エリーが光の加護を()()()()()ときにともに獲得した称号である」


その言葉で、重役の貴族たちは納得した。

重役達は光の加護の件を知っているので、そこで特殊な力を手に入れたと言われても不思議には思わなかったのだ。


あまり重要でない貴族たちは納得できなかったが、重役たちが納得しているので大人しくしている。

これで、エリーの鑑定式は終わった。


鑑定式は終わったのだが、


「さて、それではエリーに、褒美を与えようと思う」


今度は褒美の授与式が始まってしまった。


「此度の件で。エリーは沢山の貴族たちの命を救った。そのことは貴様らも分かるな?」


国王は貴族たちの方に目を向けて問う。

貴族たちは首を縦に振った。


「ではエリーに、相応しい褒美を与えなければいけない。なのだが、それに見合うだけのモノ金を渡せば、国庫がつきてしまう。ということで、」


そこで国王は目を閉じる。

そして、目をくわっ!と開いて、


「エリーを、我が息子、アロークスと婚約させたいと思う!」


「「「おおっ!」」」


国王の言葉に、貴族たちが驚きの声を上げる。

ほとんどに、それを祝う心がこもっていた。


が、その中に少ない非難の心がこもっていることを、エリーは感じ取った。

そのため、


「申し訳ありません。陛下。お断りさせていただきます」


辺りがザワつく。

まさか、まだ幼児であるエリーが王の褒美を断るとは思っていなかったのである。


「……ほう。我の褒美を拒否するか」


そういう国王の言葉には、少なからず怒りが感じられた。


「エ、エリー。ここは、はい。お受けします。って言う所よ」


母親が急いでエリーに注意する。

が、それでもエリーは首を縦に振らなかった。


「王よ。王子の婚姻は、他国と我が国の繋がりを作る大切なモノ。アロークス殿下には他国の貴族と婚姻をし、関係を安定させる役割があるはずです。私が婚約したばかりに、他国との関係が悪化したとなっては困ります」


エリーの言葉に、貴族がまたもざわめく。

この言葉が、子供から出てくるとは誰も予想できないし、驚くのも当然だろう。


怒りを示していた王も、面食らったような顔をしている。

そして、しばらくして正気に戻ると、


「ふ、ふははは!素晴らしいな。そこまで幼い身で考えるのか。優秀。優秀すぎるぞ。ははははっ!!」


どうやら怒りは収まり、エリーは許されたようである。

だが、エリーは安心できなかった。


 ーー怖っ!?公爵の目線怖っ!

父親である公爵の目が笑っていなかったのである。


エリーと王子の婚約は、公爵家にとってとてつもない利益となる。

そのため、公爵という立場からはエリーを許せない。


そんな父親の心のうちを察してエリーは、後で怒られないような手を打つことにした。

父親に説教をされたことはないが、怒れば怖いのはなんとなく理解できる。


保身第一。


「エリーよ。ただ、褒美を何も与えないわけには行かない。何か欲しいものはないのか?」



 ーー国王!グッドなタイミングよ。

国王の問いかけに、エリーは食いつく。


「それでは、言わせていただきます。王よ。私は、王族方の友人という立場が欲しいです。王子や姫様たちとお話する機会を、1週間に1度で良いので作っていただけないでしょうか」


「ほぅ。友人という立場、か」


国王の顔が真剣な物になった。

だが、父親の視線の厳しさが和らいだ気がしたため、エリーにとっては良い傾向である。


「お願いできないでしょうか?」


それ以上は何も言わず、エリーは視線を下に向ける。

周りの貴族達は何も言わなくなっていた。


格の違いを思い知ったのである。

自分たちの子供との格の違いを。


そして、エリーの家との教育レベルの違いを。


「いいだろう。ただ、名ばかりの友人になるつもりなら、優遇はしないぞ」


「ふふふっ。構いませんわ。日程などの調整はお父様とお願い致します」


「それでは、エリーへの褒美の授与式を終わる。本日はこれで解散だ」


国王がそう言って、会を終わらせる。

普段であれば、ここで貴族たちは帰って行くのだが、


「エリー。我が家の息子と婚約を!」

「いや!我が家と!」

「我が家と婚約を!!」


エリーに貴族たちが群がった。

何としてもエリーとつながりを作りたかったのである。


「皆様、落ち着いてください。婚約に関しては、お父様を通して縁談をお願いします」


そう言うと、周りは少し落ち着いた。

そのすきに父親がエリーを抱き上げ、群衆を素早く抜ける。


「エリー。お手柄だったな」


エリーを抱いたまま、父親は頭をなでる。

エリーはその言葉を聞き、口角を上げた。


 ー-よかった。怒られはしないのね。


「じゃあ、お父様。私、ご褒美が欲しいわ」


エリーは安心するだけで終わらず、ほめられたことを自分の計画に利用することにした。

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― 新着の感想 ―
『そんな褒美は願い下げ』の話で王子と両思いになった時に結婚出来る権利を褒美にした筈なのに今回の話で強制的に婚約させようとするのは褒美になっていないから断る理由に追加出来るのではないかと思いました。 (…
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