(仮)誕生日にネイルを
こんにちは。葵枝燕です。
この作品を投稿した十月二十七日は、私の誕生日でした。なので、毎年恒例の“誕生日モノ”、です! 今年も誕生日ギリギリの投稿になってしまいましたが、そもそもギリギリ二十七日生まれですから、ちょうどいいんじゃないでしょうか、ね(毎回言い訳すみません)。
ビミョーにBL(ボーイズラヴ)になってしまった感がいなめないので、苦手な方は自己責任で回避をお願いいたします。
今回も無理矢理誕生日モノにした気がする感じになってしまいましたが、読んでいただけたら嬉しいです。
部屋に入ってきた橙紫を見て、永和は開口一番に、
「どうしたよ、その爪」
と、問うた。その問いを受けた橙紫は、永和にあらためて見せるようにその手を向けて、
「いいだろ、これ」
と、笑った。
橙紫の爪は、形よく整えられている上に、オレンジと紫の縦ライン状のグラデーションが施されていた。薬指だけが、細かなきらめきを宿しているのを見るに、おそらくそこにだけラメが散りばめられているのだろう。
「俺、今日誕生日だし、自分にプレゼント的なね。それにほら、もうすぐハロウィンだし」
「まぁ、似合ってるけど」
永和はそう口にしたが、思わず目を逸らしていた。似合っている——そう言葉にしながら、内心は違っていたからだ。よく日に焼けた橙紫の手に、オレンジと紫はあまり似合っているとは、永和には思えなかった。とはいえ、それはあくまで色の話で、元々形のよい橙紫の爪は、飾るに値するモノだとは感じていた。本当に、普段手入れをしていないのが信じられないほど、橙紫の爪はいつも美しかった。もっとも、どちらも口にするのは憚られたが。
「永和」
橙紫の声が、ほんの少しの尖りを帯びる。おそるおそる顔を上げた永和が見たのは、苦笑する橙紫だった。
「お前はほんと、嘘つくの下手すぎ」
似合ってないと思うなら、正直に言えよ——そう言って、橙紫は笑った。そこには、傷付いたなどかけらも感じていないような表情があった。
「まぁでも、一応祝いの言葉はちゃんと欲しいな?」
笑みを浮かべたまま、橙紫はどこか挑戦的にそうねだる。そんな橙紫に、今度は永和が苦笑する番だった。
「自分の年齢考えたら?」
「そこははっきり言うのか」
お互いに、呆れたように笑いながら、永和は橙紫へ言葉を贈る。
「橙紫、誕生日おめでとう」
その言葉に、橙紫が嬉しそうに笑う。そんな橙紫を見て、この先もこうして祝える関係にあればいいなと、永和はひそやかに願ったのだった。
『(仮)誕生日にネイルを』、ご高覧、ありがとうございました! タイトルは変えるかもしれないので、「(仮)」がついてますがあしからず。
以下、設定など列記します。長くなると思うので、面倒な方はスルーしてくださいませ。
まず、永和さんから。同居人の橙紫さんが、その誕生日にネイルをしているのを見て、褒め言葉を言いつつも複雑な気持ちを抱いている——そんな方ですね。パッと浮かんだ響きで名前を付けたのですが、同じ漢字で〝とわ〟と読ませようか悩んだような気がします。
そして、誕生日という意味では今回の主役である橙紫さん。永和さんの同居人であり、この日お誕生日を迎えた——そんな方ですね。名前の由来は、実は安直なんですが、私がこの日爪に塗ってもらった色をそのまま付けました。正確には、オレンジというよりは山吹色、紫というよりは薄紫色なのですが、そのへんは大目に見ようと自分に言い聞かせました。
登場人物お二方とも、正確に年齢設定決めているわけではありませんが、橙紫さんの方が永和さんより少し歳上かなと思ってはいます。だからこその、永和さんから感じられる歳下特有の余裕があったりなかったり……。特に、永和さんが「自分の年齢考えたら?」と橙紫さんに言うシーンなんて、その気持ちの表れですね。ちなみに、この言葉は、私もいよいよアラサーに近付いてしまった……と、私自身が思っているところから出た言葉です。自分では若いつもりでいても、もう若くないんですよねかなしいことに。ええ、実にかなしいことに。
作中でははっきりと書いておりませんが、思いがけず、永和さんも橙紫さんも男性にしたので、なんだかBL風味が……になってしまいました。でも、後悔はありません。ちなみに私は、BLもGLも苦手です。
それから、今回のお話は、私自身が誕生日記念にネイルサロンに行ったことが、下敷きとなっております。右手中指と左手人差指には、満月に腰かけた黒猫の絵を。右手薬指と左手薬指には、パールや三日月型のストーンを置き、細かなラメを散りばめて。左右小指は薄紫一色ですが、そこ以外は山吹色と薄紫色の縦ライン状のグラデーションです。せっかく、自分で自信もてるくらいにはきれいな爪です、飾らにゃ損だと思うんですよね。ちなみに、文章がややこしくなりそうだったので、この中の一部のみ使用して、橙紫さんの爪を彩ってもらいました。
というわけで。以上、設定などでした。
二十七歳になりましたが、精神年齢が中学生で止まっていそうな感じなので、もう少し年相応になりたいものです。まぁ、お子様の自分がすきといえなくもないので、困ったものですけどね。
あらためまして。ご高覧、ありがとうございました!
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改稿情報
二〇二二年十一月十三日、前書きと後書きを追加しました。お待たせしました。