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少年の思い出の日

作者: 川瀬まりお

注意:作者は社会人ではありません。ですので現実と世界観が若干異なる場合があります。

-起-


「はい。それでは失礼しました」


そう言って俺は相手の家を出た。


……またダメか。


俺はいわゆる営業マンだ。勤め先は地方の中堅の保険会社。俺は個人向け生命保険の担当で、もう3年目になる。


業績も実生活も、あまり良いとは言えない


今日もこうして一つ断られ、駐車場に向かおうとしている。



-承-


「あ、」


ふと目に入ったのは駄菓子屋だ。


今はこうして働けているが、俺は中学校を上がるまで病気がちだった。なので外を一人で歩くこともできず駄菓子屋に集まる同級生を車の中からうらやましそうに眺めていたものだ。


……ちょっとぐらい寄ってもバレないよな。



-転-


駄菓子屋の看板は塗装が剥げていて、正午の太陽の光をまばゆく反射している。


学生はまだ授業中なのだから当然だが、中には誰もいなかった。


「ごめんくださーい」


「はーい」


店の奥から出てきたのはいかにもソレらしいお婆ちゃんだった。


「あらま、大人の方が来るとは珍しいね。どうしたんだい?」


「その……急に駄菓子が食べたくなりまして」


俺は少し気恥ずかしそうに言った。


「そうかいそうかい。どうぞ買ってってね」


こうして、俺は初めて駄菓子屋に入ったのである。



-結-


ひとくちに駄菓子と言ってもかなりの種類がある。予算を200円までと決めた俺は、多すぎるぐらいの品揃えに苦闘していた。


俺は初めて駄菓子屋に来たのだが、なんだか懐かしい気持ちになっていた。


「じゃあこれでお願いします!」


「あいよ。216円ね」


「ありがとうございました」


お婆ちゃんに礼を言い、俺は駄菓子屋を出ようとした。


「お兄さん。まだまだ大変だろうけどようやりや。若さと健康はすぐ落ちていくからね。したいことは我慢せずにするんだよ」


「……はい!」


そう返すと俺は足早に駄菓子屋を出た。


10分に満たない少年時代は俺に足りなかった何かを埋めてくれたと思う。


-終-

いかがでしたか?疲れたときって無性に駄菓子が食べたくなるので、駄菓子屋の場所は覚えておいて損はありません。

以下はちょっとした余話です。



-余-


夜遅く家に帰った俺は、夕食の後に机に駄菓子を広げた。


コーラ味のグミ。色とりどりの金平糖。緑のパッケージのスナック菓子にチョコレート系もいくつか。他にもかなりの量を買ってきた。


パクッモグモグ


「……ああ。こんな味だったのか」


どれも体に悪くてガキが好みそうな味だ。

病院食に作られた俺の舌には少しきつい。


「お、当たった」


ラッキーなことに、くじ付きのグミが一つ当たった。明日は少し良いことがあるかもしれない。


-了-

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