プロローグ 神楽坂茉莉花は王子になりたい。
可愛いが散りばめられたふわふわのドレス。宝石が散りばめられたキラキラのティアラ。そしてその隣には世界一カッコいい王子様。
女の子はそんなお姫様に憧れる――わけではない。
大人は皆勘違いをする。どんな女の子も、お姫様になりたいのだと。
「というわけで、四年二組の出し物はシンデレラに決まりました! シンデレラ役やりたい人―?」
「はいはーい! シンデレラ役は神楽茉莉花さんを推薦しまーす!」
「え……?」
「私もさんせーい! だって茉莉花ちゃん、本物のお姫様みたいにとっても可愛いんだもん!」
「うんうん! ドレスもきっと似合うよねー!」
神楽茉莉花はどこにでもいる平凡な女の子ではなかった。
自分の異常なまでの可愛さに気付いたのは幼稚園の頃。同級生も周りの大人も、皆が私に囁いた。
私はとっても可愛いのだと。私は特別なのだと。私はお姫様なのだと。
虫唾が走った。私はそんなものを望んではいない。
シンデレラのお話は好きだ。健気なシンデレラが王子様と結ばれ幸せになるお話。
羨ましい、いいなぁ。私だって、私だって――
「女の子にモテたい!」
神楽茉莉花はどこにでもいる平凡な女子ではなかった。
女の子にモテることを全ての行動原理とし、生涯の夢を神楽茉莉花ハーレム王国建設と掲げる、ちょーーーっとだけ変わった女の子なのです。