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ショッピングモールにはなんでもあるんだよ!?

「さてお兄ちゃん……申し開きはありますか?」


 今の状況を説明すると……妹に土下座している、全力で。


「まったくお兄ちゃんは! 世界一大事な妹との買い物を忘れるなんて酷すぎます! 非人道的です! ジュネーブ条約違反級ですよ!」


「すまん! 本当に申し訳ない!」


 そう、俺は妹と春物の服を買いに行く約束をしていたのだが……

 ソシャゲに夜を費やした結果寝坊するという失態を犯してしまった。


「お兄ちゃんはかわいい妹との、で・デートとそのレイドなんとかのどっちが大事なんですか!」


「デートでじゃないんじゃ……」


「何か言いましたか……」

「ナンデモナイデス」

 紫の背後から黒いオーラが漂って見える、怖い……


 そんなわけでそろそろ昼になる頃、俺たちは市のショッピングモールに来ていた。

 え? 服を買いに行ったんだろって? やだなあショッピングモールは何でもそろうじゃないか、レストランから映画館までそろってる、ゾンビが発生したら真っ先に避難所候補になるくらい何でもあるんだよ?


「それにしてもここは何でもありますね、まあお兄ちゃんが大好きなワ○ク○ンに妹を連れてこなかったのは高評価ですよ」


 なんでや!あそこの服暖かいだろ! とは思ったが口には出さない。

 服なんて丈夫で暖かければ文句ないんだがなあ……


「さあお兄ちゃん! まずはどこに行きますか!? 食事ですか映画ですか?」


「待て待て、服を買いに来たんじゃないのか?」


 何やら話が大きくなっている気がするんですが?


「むう……服なんて建前に決まってるじゃないですか、適当な理由でお兄ちゃんとデートしたかったんです! そう! 兄妹愛ってやつです!」


 デデーンと言い放つ紫、いや、人の目もあるからね……


 じゃあとりあえず映画でも見るか?


「そうですね! 何を見ましょうか?」


「ああ、俺が読んでるら延べの劇場……いえこっちのかわいい系にします……」


 何やら発言の途中から不穏な気配がしたので安パイに切り替えることにした。

 ちょうど俺の青春時代にやってたゲームが映画化してたしこれでいいだろう。

 一応国民的名作だし文句も出ないだろ。


「むう……」


 と、思ったのだが紫は何やら不機嫌だ。


「ええっと……見たいのがあったか?」


「いえ、何やらお兄ちゃんが私を怒らせないようにしようとしてるのがなんか気に食わないだけです」


 なにその理由! 理不尽だろ!


「いや、やっぱりこっちの恋愛映画にするか! 雰囲気って大事だよな!」


「そうですね! 私としてはもっと兄妹モノが見たい気分なのですがまあいいでしょう」


 いや、兄妹モノは普通の映画館にはないと思いますよ……


 そんなわけで兄妹で恋愛映画を見る流れになっているがこういうのが好きなんだろうか? わっかんないなあ……


 映画自体は普通だった、いや恋愛経験のない俺に普通の基準はわかんないけど特別な名作というわけでもなかったが駄作の雰囲気もなかった、ザ・無難と言った作品だった。


「ふっふう! 良いですねえ兄妹は、お兄ちゃんもああいう男の人を目指すべきです!」


 何やら力説しているが映画の主人公の男は彼女をほっといて家族を選ぶ男だったぞ、倫理的にはともかくアレがいいのか?


「じゃあ服を買いに……」


「お兄ちゃん! 季節限定のメニューですよ! 是非食べていきましょう! できればあーんもしてください!」


「やらんぞ」


 そこに貼ってあるポスターには期間限定の文字と胸焼けしそうな量のハートマークが貼ってあった。


「これはカップル向けじゃ……」

「まさに私たち向けじゃないですか! 素晴らしいですよ!」


 聞いちゃいねえ……


「ええっと……」

「このビッグサイズスイートパフェお願いします!」


「は、はい」


 コイツ躊躇なく頼みやがった、このメニューを兄妹で食べるのは正直恥ずかしいのだが……


 ゴトッ……


 低い音とともに俺たちの間に「一つの」でかいパフェが置かれた。


「よく食うんだな、まあ成長期ってやつか」


 目の前には健康に気を遣ってる人なら摂取しないであろう糖分の塊がおいてある、痩せてるからたまには羽目を外したいんだろうか?


「はい、お兄ちゃん!」


 紫は当然のように俺にひとすくいを向けてくる、コレは所謂……


「あの……恥ずかしいんだけど?」


「私はまったく恥ずかしくないので大丈夫です!」


 くっ! こいつ鋼のメンタルしてやがる!


 ヤケクソになってスプーンを口に入れる、グラニュー糖の甘さが広がる。


「良いですねえ、兄妹愛って感じで……」


 紫さん……兄妹感大分ゆがんでませんか?


「うーんでもおいしいですねコレ」


 そう言いながらスプーンを口に含む紫、何故かスプーンをしゃぶっている気がするのは気のせいだろう、気のせいのはずだ!


「はいお兄ちゃん」


「え?」


「え? じゃないですよ、この量は二人で食べるの前提じゃないですか、はい、あーん」


 俺は兄として大事なものを失った気がするぞ……


「ふぅ……兄妹デートはいいですねぇ……じゃ、帰りましょうか」


 なんとかパフェを完食した俺たちは帰途についた。あれ?

「なあ……服買うんじゃなかったっけ?」


「てへっ! 忘れちゃった! コレはもう一度行く必要がありますね、是非もう一度行きましょう!」


「お前な……」


「あっれー? 何で私たちはこんな遅い電車に乗ってるんでしたっけ? 私のパーフェクトなプランならお兄ちゃんがもっと早く起きて早めに着くはずだったんですけど?」


 それを持ち出されるとぐうの音も出ない……しゃあない、もっぺんつきあうか……


「ふふふ、ソシャゲも悪いことばかりじゃないですね!」


 そう言う紫はとても嬉しそうでまぶしい笑顔をしていた。

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