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4.アッポー枢機卿の所業

明らかに狼狽したアッポー枢機卿。

先ほど太っていてかいていた汗とは全く違う種の汗が流れだしている。

気持ちわる。


「えーと何でしたっけ」

あ、素が出た。

「神の神託は必ずしもクリスティーネを指すものでは、ありませんでした。時が経つことで神託が変わることはおかしくありません」


「でしたか?そして、こうとも言っておりましたね」

「それに帝国の一臣下として、正しい神託をお伝えすることは、帝国を良きほうへと導くことになるでしょう。聖女ユリアと共に帝国に栄光あれ」


「何か、申し開きがありますか?」

地べたに座り込んでいるアッポー枢機卿に、立ったまま上から威圧を掛ける。

そう、神の使徒って凄いよね。睨むだけで威圧が出来るんだよ。

その凄さといえば、先ほどまで断罪をしていた皇帝を黙らせることが出来ている。といえば、おわかり?

本当ならその王座から引き摺り出して、膝を折らせたいぐらいだけどね。

先に神託の間違いを徹底して正さなければ、あたしのざまぁは始まらない。


何かを言おうとしているらしいが、鯉が餌を求めて口をパクパクしているようにしか見えない。

ならば、結論は早い。


「無いようですね。自分の罪を認めるのはいいことです。ですが、隣国と通じてこの国を陥れようとするのは、また別問題です。アレクサルト教皇、アッポー枢機卿のお腹の布をほどけばその証拠が出てきます。確認をお願いします」

「それは由々しきことです!神殿の衛兵、使徒殿のお目汚しにならぬよう、急いで証拠を出させなさい」


すぐにアッポー枢機卿が見えないように幕が囲んだ。

何ともすごい便利な魔法。あれ、あとで教えてもらえるかな?


尊敬の念でアレクサルト教皇を見ていると、口角が僅かに上がった。

えーとそれはどういう意味でしょう?


そのことを考える間のなく、衛兵の声が響く。

「ありました!アレクサルト教皇様、神の使徒様」


幕は消えることなくアッポー枢機卿を隠したまま、アレクサルト教皇に紙の束が渡された。

それらをパラパラと捲るたびに、麗しの顔に線が入っていく。

見ているだけでその怒りの皺を刻む音が聞こえてきそうだ。

イケメンが怒るとと更に迫力が増す。

ほんの一瞬、目があった気がした。


『あなたも叱られたいですか?』

そんな副音声が聞こえてきた。

慌てて、顔を横に振る。


『出来れば、甘やかしてほしいです』

なんて、心の声を愛想笑いで伝えてみた。神じゃないんだから、心の声が駄々洩れってわけないし、まあ願望を言ってみた。叶うことがないから思えること。

まあ、そんなことはいい。

早くサッサと、この茶番を終わらせよう。

クリスティーネがどうしたいのかを、まだ聞けてないのだ。


アレクサルト教皇から受け取った書類には、まあ出てくる出てくる、罪状の束。


クリスティーネが断罪されていた理由がここに凝縮されている。

断罪の理由その①

 この国で禁止されている薬の輸入。クリスティーネが指示したとされていた。

  →実際は優梨愛の指示。


これは優梨愛がクリスティーネを貶めようとしたわけではない。この国の将来のためだ。だけどすぐに法の改正が出来るわけもなく、秘密裏に動いていたのだが、欲に塗れた貴族がそれを横取りしたことで発覚。クリスティーネの指示に従ったまでと、偽証した。


断罪の理由その②

 隣国との密通。

これは薬を手に入れるために、アッポー枢機卿を頼ってしまった為に起こったこと。

アレクサルト教皇を教皇の座から蹴落とすために、隣国との渡りが欲しかったアッポー枢機卿にすれば、渡りに船だった。

 →優梨愛がきっかけ


断罪の理由その③

 婚約者以外の男性との密通。

 相手は誰だかわかっていないが、婚約者がありながら他の男と密にしていた事実がある。

 →優梨愛と皇帝自ら婚約者(クリスティーネ)を蔑ろにしている。自分を顧みろ!  


どれも腹が立つことに自分の同じ日本人(優梨愛)が巻き起こしていることだ。

薬もこの後に流行る病気のために必要だと知っているし、その経緯はわからないでもない。

その為に隣国との渡りが必要なのも解る。


だけどね、あたしが憤慨しているのは優梨愛がクリスティーネを庇わなかったことだ。

どれも自分が発端で起こったことを始めからそのつもりだったと言わんばかりに、涼しい顔で皇帝の隣に立っている。

この世界がただの物語だと思い込んでたりしないよね?


いい加減、自分が描いた物語と相違が出てきたことに疑問を持ちなさいよ!

人一人が、あんたの起こした行動で命を失うというのに、そこに当たり前のように居られるのかわからない。


さあ、あなたの真意を暴かせてもらうわ。



あ、その前に。

「クリスティーネ。あなたはこれからどうしたい?こんな阿保の皇帝に嫁ぐなんて、国・お家のためと言えども嫌でしょ?」


あたしがここに来た最大の理由。

クリスティーネの幸せ。

ついで、あたしの目と耳の保養。

だから、あなたが望みを聞きたい。



読んで頂き、ありがとうございました。


書けたら随時更新。

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