2.リューウール創造神の使徒
ああ、そんな戯言に惑わされてはいけないのに、面白い小説が書けるかもしれないとか。思うだけでもヤバくない?あたし。
前回は夢落ちだとおもってしまうぐらい、あっさりと解決できたかもしれない。
いや、今でも夢だと思っている。
それを鵜呑みにしてしまうなんて、気が狂ってたとしか思えない。
更年期かな?
いや、それは流石にアラサーでは嫌だな。
『なあ、瑤子。そろそろいいか?』
どうやらこの男の言葉に、心躍るようなチート能力に舞い上がっていたらしい。
行ってみてもいいかな?なんて思ったほどには。
『解決できたなら自動的に今のこの時間に戻ってこれるから、行方不明者になる心配もない。戻ってきた時には、前回同様長い夢を見ていた。そんな感じだ。成功した暁にはそれに相応しい褒美も用意する』
「変な称号とか要らない」
『あ、いや、我の加護とか』
「また、働かせられるの嫌」
『我の加護あがれば、男運も、金銭運が上がるぞ』
『向こうに行けばイケメンが眺め放題だし、使徒として大事にされるぞー。瑤子の好きな乙女ゲームみたいに』
自称神よ。訂正しておく。
あたしが好きなのは乙女ゲームじゃない。それを題材にしたアニメやアニソンが好きなんだ。
鑑賞するのが好きなのは、本当だけどね。
「まあ、いいわ。行ってあげる。その代わり、ビデオやカメラ、スマホは持ち込みOKにしてよね。充電も簡単に出来るようにして。それから、インターネットも使えるようにしてね。折角のネタつかんでも保存が出来ないとか、小説書けないとか、無理だし。あ、あと住むところとお金ちょうだい」
『良かろう。我が介入できない以上、助けを請うのだ。便宜を図る』
「最後に、緊急の時はスマホで連絡が付くようにしておいて。それ以外は教会へ行ったときに話すでもいいけど」
『了解した。では、グットラック』
「え、ちょっと、聞きたいことはまだあるというのに!」
瑤子が送り出されると同時に、その国の情報が頭に流れてくる。
ルガランド帝国 自称神・・・創造神リューウールを信仰している国。その神の神託を受け取り伝えていくのが教皇といわれる存在。
神託「光あるところに闇がある。光と闇は一体表裏。この国に安寧をもたらす女性を王妃に」
この言葉を正しく理解したのが、教皇。
この国の歴代の王は血統魔法で「光魔法」を継承していることが条件となっている。
その為王を支えるために、「闇魔法」を所持している女性を婚約者とするようにと神託を出した。
その選定の結果、クリスティーネが婚約者になることが決定した。
が、落ち人が現れたことでその神託を読み間違えたと、教皇が留守の間に皇子と結託した枢機卿が落ち人である優梨愛さんを聖女として認定した。
これがあたしが出向く原因になった発端である。
情報が頭に入ってくる中で思ったこと。
あんたが天罰を与えれば早い話じゃん!
一番勢力を誇っている派閥を断罪しに行くあたしが大事にされるとは思えないんですけど―――!!
そして、何で落下?
あたし落ちてるよ!
どういうこと!
神殿に現れるんじゃないの?!
ぎゃあああああああ
あ?
「大丈夫ですか?神の使徒様」
ぞわぞわぞわ・・・と耳から捉えられた音が大脳辺縁系に行き、偏桃体で受理された。
この声、ヤバイ。
声優が好きな友人が、あるアニメのキャラクターの声が好きで、耳が妊娠するとよく言っていた。
その時は正直全くわからなかったが、なるほど・・・これかっ!納得した。
あ、いや、納得している場合じゃない。
今どういう状況よ。
落ちる反動で瞑っていた目を開けると、そこにいたのは厳かながらも煌びやかな服装をした、目麗しい男性があたしをお姫様抱っこで抱えていた。
「え、あの、大丈夫です。それにしても、どうして」
「そのお話はもう少し落ち着いてから致しましょう。流石にここでは人目が多く、最適な場所ではありません」
そう言われて辺りを見渡すと、それはもう、修羅場としか言えない殺伐とした中に、戸惑いが入った混沌とした空気が流れていた。
ん?この状況どこかで見たことがある気がする。
謁見の間らしき場所、王座にはあのムカつく皇帝らしき男、そして落ち人と思われる黒髪で中肉中背の平凡な顔つき、日本ではクラスで何番目かに可愛いといわれる、アイドル向けの女の子がいた。
そしてあたしの目の前には、可愛い可愛いあたしのクリスティーネちゃん!
生クリスティーネだ!
周りの状況など読むことなく、クリスティーネに抱きつく。
「ああ、やっぱり可愛いわ。クリスティーネ。あなたのことをリューウールがとても心配してたのよ。大丈夫?」
「え、あの、あなたは・・・」
戸惑う様子は気高くも、可愛い。
「あ、名乗り遅れました。創造神リューウールより、遣わされた使徒の瑤子と申します。あなたの嘆きを受け、神はとても心を痛められています。どうか、その嘆きの原因を取り除きますので、心穏やかにお待ちください」
「創造神リューウール様の使徒様?!ご無礼をお許しください」
そのまま腰を折ろうとするので、手を取ってそれを止めた。
あたしが腹を立てているのは、踏ん反り返っている皇帝だ。
周りの貴族たちが騒めく。
すぐに糾弾して否定したいところだが、突然謁見の間に現れた教皇が神の使徒だと肯定をしている。それを否定することは、神をも否定する行為。
それ故に、ただ見守っていた。
「どうして創造神様がわたくしを目にとめていただいておりますの?」
読んで頂き、ありがとうございました。