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1.神の誘惑

深く考えずに、雰囲気で読んで頂けたらと思います。

あたしは32歳の会社員の瑤子ようこ

その辺りにいるどこにでもいる平凡で、ありきたりのアラサーである。

今日も暑い中夢に魘される。

起床した時には溜息しか出ない。夢であって欲しいのに、その願いは叶わない。


本当にいい加減にして欲しい。なんであたしが・・・。

『そう言わずに、頼む!』

出たよ。見かけだけはイケメンの残念でぼんくらの自称神が。

『神にその不敬は、どうなんだ』


このやりとりも何度も繰り返していると、この暑さで頭がやられたのかと自分を心配してしまう。いや、きっとイカレテしまったのだ。だからこんな幻聴があたしを襲う。

これ以上色々やらかしてしまう前に、変凡な日常生活を送らなければならない。

ストレスが大敵というから、何もしないでのんびりと過ごすのがいい。


悪夢に魘されながらも起きたのだから、折角の平日の有給休暇を満喫せねばなるまい。

今からの自分だけの有意義な時間は、溜めていたアニメでも見ようかな。

ラノベの漫画も更新されていたし、そっちから読もうか。


眉間にシワを濃くした、残念イケメンを無視してPCを立ち上げる。

さて、続きはどうなったのか。

あの腹立つ皇帝に今回もイライラさせられるのかな。


やっぱり腹立つ、あいつ何様だ!前皇帝の唯一の息子だから、崩御した時になし崩しに皇帝になれただけの癖して。しかも本人が知らないとはいえ、本当は前皇帝の血なんて、一滴も入っていない癖して。あたしの可愛いクリスティーネを虐めるとか叩くとか、何様だ。

それだけだったらまだしも、仮に婚約者だというのにの関わらず、邪魔だからと言って勝手な罪を着せて断罪だあ?!

そこに直れ!あたしが成敗してやる!


ぶんすと残念神のことなんて忘れて憤慨していると、『だよなぁ』なんて溜息交じりに声が聞こえてくる。

あたしの余韻の邪魔するんじゃないよ。

思わずそこにあった雑誌で頭を叩いておいた。


『本当に容赦がないな、瑤子は・・・。まあだからこそ力があると言わざるを得ないが』

まあ、この残念神がいうことにゃ、実体のない神を叩くという行為が出来ること自体が可笑しいらしい。

そんなこと言っても、叩けたんだから仕方ないじゃんねー。


「で、なによ」

『・・・先ほどのクリスティーネの件だ。あれにちょっと我が関わっておる』

「はあああああああ!」

『耳が痛い』

まだ説教もしていないと言うのに、耳が痛いだと?!物理的な音量なんて、アラサー女にそんなのあるわけがないから、関係ないね。


「それよりもどういうことよ。あんたがクリスティーネを虐めている原因なわけ?」

『そうではないが、迂曲して受け取った神官のせいだ。勝手に自分たちのいいように解釈して婚約者を入れ替えたのだ。そのせいでこの国が乱世になったとしても、選んだのは人間だ。神として関与せん』

「だったら、なんで」

『そのクリスティーネは、昔愛した女の子孫でな。その女が死してもなお、自分との子孫が未来永劫幸せになるよう祝福を送っていたし、薄くはなっているが加護もあるはずなのだ。だが、そこに何故か手が加えられ改ざんされておった』


「どういうことよ」

『我はクリスティーネが好いておる皇帝に嫁げるように神託をした。それは間違いなく伝わっており、7歳で婚約者となった。だが、そこに描かれているように落ち人が現れた』

「ああ、なるほどね。珍しい物尽くしのあの女に惚れたんっけ。あほか」


『そうだ。その皇帝の意思を取り入れた神官は、神託を言い換えよった。神の意志を背いてな』

「うん?待ってよ。今あんたが言っていたことが、あたしが読んでいるクリスティーネの漫画がそのままの神託だったら、いいように言い直せれるよね?へっぽこ神のせいで、クリスティーネが窮地になってるんじゃない!あんたがそこに直れ!」


『すまぬ。だが神託も制限があって、全部言うことは世界に干渉することになり出来ぬ。だがまさか、あのようになるとは思いもよらなんだ。落ち人があの国に現れる予定など、どこにもなかったのだからな』

「じゃあ、なんで。あの女が元凶だと、同じ日本人でも腹立つのだけど」

『そこじゃ!誰ぞかに改ざんされたのだ。しかも我の世界に踏み込むことが出来るものは、一握りの者。そう瑤子のような使徒の存在だ』

「ちょっと待った!使徒ってなによ。そんなものになった覚えはない!しかもあんたの使徒ってどういうことよ!」

『使徒じゃないという言い訳は、もう出来ぬ』


なんですと!


『そなたもこのような物語を書くのであろう?だからわかるではないのか?改ざんした者が誰なのか』

「ま、まさか作者?」

『そうだ。自分が物語の主人公になりたいという欲望は誰しも持っている』

黙って頷く。


『だから、自分を投影したヒロインを生みだした。それはいい。ただその念が強すぎて、フィクションだったものが力を持ってしまった。似たような世界は無数にある。そのうちの一つにそれが反映されてしまったというわけだ』

「意味は分かるわ。だからといって、あたしが使徒というのはおかしいでしょ」

『本気で言っておるのか?まさか前回瑤子がやらかしたことを覚えておらぬのか?』


いやいやいや、あれは夢でしょ。活躍した夢を見ただけで・・・。(それこそ自分が主人公でやらかしている夢)

目覚めてからこの年でどれだけ痛い子なのよ、と乾いた笑いしか出なかった。

だけどそれが物語なら別。それを元に確かに小説を書いたけど・・・。

え、もしかして。似た世界があった?


『ご名答』

まじか。

『その世界は今とても活性化し、いい方向へと文明が動き出した。だから神々から感謝の意を込めて、称号が贈られた』

なんだそれ。


勝手に称号なんて贈らないでよね。贈ったから使徒とか、使徒だから働いてくれ、とか人をなんだと思ってるの?!

無視だ、無視。


『なに、ちょいとその世界に行ってその落ち人を説得して貰えたらいい。自分の世界に戻るように、と。その権限も持たせる。それに加えて全属性の魔法を使えて、アイテムボックスをつける。あ、勿論鑑定も、結界も出来る。物理、精神、魔法すべての攻撃反射もつける。万が一にも不備はない。これでどうだ?』




読んで頂き、ありがとうございました。

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