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怪奇討伐部Ⅳ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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みんなで塩作り

第三十七話 塩分控えめ、恐怖も控えめ




「着いたぞ」


 ヘラが振り返る。

 その先には、文字通り海が広がっていた。

 木だらけの魔界とは違い、緑より青が多い。

 魔界なのに本当に違う世界に来たみたいだ。

 奥の方に流木でできたであろう家がある。だが、潮風に晒されて今にも崩れそうだ。ずいぶん昔に建てられたのだろう。


「……ふん、人間界の海とは違う、禍々しさがある」


 キリルはしゃがみ、片手で砂を掬った。


「でも繋がってるんでしょ?あっちから見たらどうなるのかしら」


 スクーレが質問を投げる。多分あっちはあっちでそのままだと思うが……。


「あー……情報操作で空白なんだよ」

「情報操作?」

「そ。政府やら何やらが知られたくない情報を丸々消してしまうってやつ。切り取られたかのように消された真実。……ってどうかした?」

「政府って?」

「……あー、こっちにそういうの無いのか……」


 結論だけ言うと、無い。

 平和を維持しているのは魔王ライル一人だけ。もちろん彼女がいないとこの世界は成り立たない。

 ムジナはそんな魔王ライルの友人らしい。


「参謀はいるよ?」


 赤く大きい純粋な目を向けてくるムジナ。そうだよな、ムジナがそうだもんな。


「参謀、か。そんな人がいたら、どんな思想の持ち主か聞いてみたいよ」

「えへへー、思想思想ー♪」


 ムジナは両手を大きく振りながらズンズンと歩いていく。ムジナ……思想ってどんな意味か知ってる?


「ムジナ、思想ってのは社会などの考え方ってことだよ」

「へー!そうなんだー!ヘラはやっぱり物知りだねー!」


 ……ヘラとムジナのバランス、すごく良いよな。ヘラの変人性をムジナの能天気さで補う。これ以上無いバランスだ。


「レインさん、私たちは海水の回収をしよっか」

「お、おう」


 危うく周りのおふざけさに染まるところだった。オレたちはこんなことしに来たんじゃない。


「ヘラ!火の準備してくれ」

「ん?あぁ、わかった。焦げないように気をつけないとな。トロ火?中火?」

「そんなことできるのかよ!?」


 ____コンロか、お前は。


「ドラゴンソウルの地獄の業火コースもあるぞ」

「もはや意味無いよな、それ!」


 昔のヘラはどこへやら。昔の方がクールだったのに……。


「普通でいいよ、普通で。調整してくれ」

「はーい」


 オレは大地の神が持ってきた、小屋の近くにあったその辺の瓶で海水を汲み、それをヘラの手の上に置き、温めだした。


「重い」

「我慢して、我慢」

「ま、レインには助けてもらったからな。今度は俺が助ける番だ」

「はは、心強いよ」


 前まではあんなに冷たかったヘラは、今ではこんなに優しくなっている。正直何があったのかを問い質したいほどだ。


「……レイン、一つ聞きたいことがあるんだけど」

「ん?」


 ヘラは、ふ、と表情を暗くした。


「……俺って、強くなれるかな?」


 ボソッと口にした言葉。それはヘラが何より気にしていること。ヘラの生き甲斐でもあろうこと。


 ____もし、否定でもすれば……またあの暗くて、真っ赤で、空気がよどんだ部屋に閉じ籠ってしまうかもしれない。


 それは、とてもとても重い質問だった。


「うん。もちろん。正直さ、オレより強いんじゃないかって思うほどだよ。インキュバスなのによくやるよね。オレだったら諦めてるよ。だから……安心して、鍛えても大丈夫。保証する」

「レイン……」


 赤い目をさらに赤くし、潤ませるヘラ。

 マリフに言われて、旅までするなんて言い出したのは知っていた。

 ヘラだってまだまだ子供。先は長いんだ。

 だから大人の言うことなんて気にしなくてもいい。


 のびのびと育ってくれりゃ、それでいい。


 ……まぁムジナとかも同じことを思ったのだと思うけど。

 それでもとやかく言ってくる奴がいたら、オレが一発殴ってやる。


「オレも手伝えることがあったら手伝ってやるよ」

「ありがと。……ほら、塩できたよ」


 すこし自信がついてスッキリした彼の手には、最初の海水より結構少なくなった塩が入った瓶があった。

 これで試練達成だ!


「サンキュー!おい、大地の神!できたぞー!」


 オレはいつの間にかムジナと波で遊んでいた大地の神を呼び出した。


「できたの?」

「なに遊んでるんだよ……」

「暇だったから、つい。それに、海に行く機会なんてあんまりないからあの人、張り切っちゃって……」


 ムジナの方を見ると、次はキリルの手を引いていた。まるで御守りだ。間違っちゃぁいない。うん。


「ま、ヘッジさんが海に行くなって厳しく言ってたからな。俺はあまり泳ぐのが得意ではない方だから行こうとも思わなかったけど」


 ヘラはどこからか持ってきた赤い木の実を食べながら呟いた。


「いつの間に……。でもあいつ、それだけムジナのことが大切なんだな」

「たった一人の家族だからな。レイン、死神の決まり事を知らないのか?」

「へ?何だそれ」


 聞いたことのないものだ。死神に決まり事があったなんて。


「子供が大人になったとき、もしくは家族に複数の子供がいて、兄や姉が大人になった場合、親を殺さないといけないんだ。これから人間の魂を狩りに行きます、なので慣れさせてください、という意味でな」

「!?」

「ちなみに本気の殺し合いだ」


 そこまで聞いていないのだが……。とにかく、とんでもない情報を聞いてしまった。

 ということは……ヘッジが親を殺した?


「……気に入らない奴とは思っていたけど……もっと嫌いになりそうだぞ……」

「レインとヘッジさん、仲悪かったもんね。でも、決まり事としても、本当は苦しかったと思うよ。ヘッジさん、優しい人だもん」


 ……本当は気づいていた。あいつが優しい奴ってことは。


 一度も言わなかったが、オレが寝てる時、ちょくちょくマフラーを整えてくれていたこと。オレがマフラーをとても大切にしていることを知ってのことなのだろうか、汚れを落としたりしてくれていたことも。

 朝起きて汚れ取ろうとしたら無くなってたからさ。よく見たら、ヘッジの袖が汚れてたからピンときたんだ。


 ____こんなことになるんだったら、早く礼を言っときゃよかった。


 でも、ヘラにはまだオレがヘッジのことを嫌いという体で話しておかないといけない。


「……そ、そうだな」

「あ、ヘッジさんが毎日女の人を探しに出かけてたのは、ムジナのために新しいお母さんを探すためなんだって。それも、リメルアがいるおかげで解決したけどね」

「うぅ……こ、今度、謝ってくるよ……」

「うん。そのためにも、『デストロイヤー』を倒さないとね」

「あぁ!」

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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