大地の神の秘策
第三十二話 キリルの心配事
重く、動かない足を投げ出し、故郷と何ら変わりもない地面に座る。そして見上げると、生い茂る木々がザワザワと風が強い事を知らせた。
「……つ、疲れた……」
隣の金髪の男の子はわざとらしく言う。
その隣のピンクの髪の女の子は、彼の言ったことを言うべきだというレベルに疲労していた。
「キリルは大丈夫なのか?」
「俺は大人だし、鍛えてるからな」
金髪の男の子……レインが心配そうに赤い目をこちらに向ける。悪魔である彼らを倒そうとしたオレを心配するなんて……。
「……無理するなよ」
そう言ってニッコリと笑う。裏も表もないその顔は何を考えているのだろうか。
「レインもな」
「心配されるほどじゃ……いたっ!」
彼の頭の上にオレンジ色の木の実が落ちてきた。
あぁ、彼はきっとフラグを立てるのが上手いんだな……いろんな意味で心配になってきた。
「な、なに憐れみの目で見てるんだよー!」
「ごめんごめん。レインも……一人の生き物なんだなって」
「おうおう、それは人間か悪魔か悩んだ末に出た言葉だな?結果的に人の形をしたものじゃないように聞こえて悲しいぞ」
……まぁ世間には人の形をしてない生き物もいるんだし、許してくれよ。
……例えば『化け物さん』とか……。
「人間じゃないといえば『デストロイヤー』の『化け物さん』たちよね?」
ピンクの髪の女の子、スクーレが口を挟む。
しかし、本当に『デストロイヤー』の言う通り、レインは彼女の兄なのか?ならどうしてここまで実力の差が出ている?
「そうだ、あれは一体何なんだ?」
俺とスクーレがレインに詰め寄る。だが、彼にわかるはずがなかった。
「し、知らねぇよ!まず、あいつがオレの妹だって確定した訳じゃないだろ」
「それはそれで可哀想でしょ。……でも、敵ならそう言わざるを得ないよね……」
スクーレが悲しそうに呟く。
このやり取りは何度目だろうか。
皆、上手い言葉が浮かばないのだ。なんせ、自分のことではないからだ。
しかし、この場に悪魔は一人だけ。
この状況だと、一番心が冷たいのは人間だということになる。
ちなみにヘラは少しだけここから離れている。
「とにかく、決戦は近いということですね?キリルさん?」
大地の神がこちらを向く。どうして俺なのかはわからないが、俺は肯定しておいた。
「あ、あぁ。できれば話し合いで解決したいけど……『化け物さん』は容赦しないって言ってたんだろ?」
「……あれは本気だ。もし、戦いに向けて力を増幅させているとしたら……手がつけられないかもしれない」
レインが下を向き、拳を握る。
レインだって自分が兄弟のうちで一番弱いと自覚しているだろう。だが、絶対にやらなければならないことがそこにある。
「……レインさん、一つだけ試してはいかがですか?」
大地の神が木ではない方の手でレインの肩を叩く。彼は怪訝な顔をして大地の神を見た。
「何を?」
「生命の塊。生命の母。……『海』に行って、海水からできる塩を持っておくんです」
その言葉に皆が絶句した。
『海』とだけ聞くと、『なんだ、海か』となるのだが(実際俺もなった)、こっちの世界の海はどうも危険らしい。
人間界のどこかの海と繋がっているらしいが、棲んでいるものは全く違う化け物揃いのようだ。
なので昔、『----(機密事項により削除されています。)』たちがわざわざ遠征に行くほど危険な場所だったようだ。
……そんな場所に連れていくだなんて、頭がおかしい。
「海……」
「レイン、さすがに危険よ!ハレティでも寄りつかないのに!」
「でも塩を……清める塩を持ってないと勝てないんだろう?」
「えぇ。勝ち目はありません」
大地の神は無情にも真実を口にする。
レインは自らの手を見て、息を飲み込んだ。
「……ならやるしかねぇだろ!海だろうが何だろうが、オレらの故郷、魔界に変わりはないからな!」
レインは前を向いて自信満々に叫ぶ。
その姿を見た大地の神が少し悲しそうな顔をしたのを、俺は見逃さなかった。
「どうしたんですか。そんな顔して」
「え?どうもしてないですよ。ちょっと目にごみが入っただけです」
「目を閉じてるのに?」
「……」
墓穴を掘った大地の神は言葉を失う。そこで俺は畳み掛けた。
「レインにはまだ秘密があるんじゃないんですか?」
「どうしてそう思うんですか?」
「……刑事の勘ってやつですよ」
俺は今までロシアの刑事として活躍してきた。勘はとても大切で、役に立つ。
どれだけ迷宮入りしそうな事件でも、考え方一つで解決に向かうことができる。
「勘、ですか。……でも、まだ教えることはできませんね。レインさんたちには自分で気づいてもらわないと」
「……あくまで教えないというわけですか」
俺は一旦大地の神から離れ、レインの方に歩み出した。
それに気づいた彼は、瞳に強い光を湛えて微笑んだ。
「どした?」
「え、あっ、いや……黒池に塩を持ってくるように頼まないのかなって……」
俺の言葉に大地の神は遠くの方から首を突っ込んだ。
「ダメですよ。座標が同じでも、人間界と魔界の塩は違うんですから。魔力があるかないかの差なんですけどね。それに、試練の意味がないじゃないですか」
「それもそうだな……」
当たり前のことを言われ、逃げ道がなくなってしまった。
ヘラと合流してしばらく歩き続けたので海には近づいているが、やはり気分は進まない。
「あれからずいぶん待たせたから、そろそろ戦いに行かないといけねーしな。それにしても……『デストロイヤー』は……」
「どうしたの、レイン」
「……何か思い出せそうだったんだけど……いいか」
「良くないわよね?!」
あっちはあっちで何をやっているのだか。
こんなに緊張しているのは俺だけなのか。話の中心のレインはこんなにリラックスしてるし……。
「とりあえず海に向かって歩こうぜ。そうしないと始まらないんだろ?」
「そ、そうだな」
「ん?キリル、休憩したばっかなのに、もう疲れたのか?」
「誰のせいだよ!」
と、つっこんだ直後だった。
遠くの方からキュルキュルキュル……と何かが動く音がした。
一斉に全員の動きが止まり、冷たい空気が流れた。
「何かが来る……」
スクーレが緊張した声を出した直後、『それ』は草むらから出てきた。
「……なーんだ!ラジコンカーじゃないか!」
俺はそれを見た途端にピンときた。これはどう見てもラジコンカーだ。
安心しきった俺は、それに手を出そうとした。
「待て!上に乗ってるのは爆弾かもしれないぞ!?」
レインが叫ぶ。
……だが、これは……。
「……なんでトランシーバー載ってんだよ」
俺はため息をつき、それを手に取った。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




