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怪奇討伐部Ⅳ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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存在しないはずの壊れたラジオ

第二十九話 霊界ラジオ




「……もしかして、マリフはそのラジオを指差してるんじゃないかな」


 上原が呟く。するとマリフは震えながら指を差した方の手でグッドサインをした。痛すぎて声が出ないのだろう。魔物なので何とかなるが、瞬間的な痛みは人間と同じだ。


「そうみたいだな。葛城、何かしたとか覚えはないか?」

「えーっと……蹴ったときノイズが流れたとかくらいかな……」


 そう言った瞬間、マリフは床をベシベシと叩き始めた。なるほど、そこに問題があるのか。


「お前のせいじゃねぇか!……てか、このボロさは蹴ったからか?」

「これは元からですけど」


 オレはラジオに近づき、グルグルと回しながらいろいろ見ていった。


「ふぅん……ってこれ、電波受信するアンテナが無いじゃないか。折れたとかは?」

「それも元からですけど」

「ありえない!なら、どうしてノイズが____」


 ……と言いかけたその時だった。


 ____ザザ……ザザザザ……


「この、音だ!またノイズだ!」


 悲鳴に似た声が上がる。だが、オレはそのラジオに耳を近づけた。


 ____あア……見つけタ……


「うわぁ!?」


 突然、地の底から漏れだしたような声に思わずラジオを放り投げそうになった。そしてまだ声は続く。オレは床にラジオを置き、後ずさった。


 ____繋げたのハ……誰?どうしテ……見つけタ……?


「し、知らねぇよ!」


 ____どうして……ドウシテドウシテドウシテドウシテ____


 まるで壊れたラジオのように、というかそのものなのだが、それは同じことを繰り返す。


 上原はあからさまに嫌そうな顔をし、葛城は耳をふさいで片隅で震えている。マリフはそのまま突っ伏している。


 そして、急にそれは止まった。


「……止まったか……」


 オレは再びラジオに近づく。指とラジオの差があと五センチほどの時だった。ボタンが押されたような、カチッという音が鳴った。


 _____見たな。


 それはハッキリと、片言ではなくしっかりとしていた。部屋の中は阿鼻叫喚。なぜかというと、他の部屋にまで声が響いているからだ。


 瞬く間に建物内は大混乱。どうやらラジオの得体の知れない住人はスピーカーをもジャックしたらしい。葛城が送った予告状や人間ではないマリフの存在を含め、この建物にいる人間たちの精神はボロボロになっているだろう。


「リスト!刑事のおじさん!」


 謎の声に掻き消されながらも、遠くでムジナの声が聞こえた。


「まだ逃げてなかったのか!」

「……って、それは霊界ラジオ?!何でこんなとこに?!」


 ムジナは驚き、すぐに納得した。


「あぁ……あの時の……いたた……」

「マリフが作ったの?」


 先程よりマシになっただろうマリフが絞り出すような声を上げる。それを信じられないという顔をしながらムジナは近づいた。


「そう、さ……どの警察、官か……忘れた……けど……ラジオを貰って……作り替えたの、さ……」

「マリフ、無理しないで。とにかくこれは危険だよ。刑事のおじさん、変装のお兄さん、早くこれをお寺に持ってって!」


 ムジナが身ぶり手振り説明する。

 変装のお兄さんと言われた途端、葛城の表情が少し変わったが、すぐに笑って誤魔化した。

 一方、上原は暗い表情を浮かべている。そしてゆっくりと口を開いた。


「……いや、できない。寺はガチでヤバいのは引き取ってくれないところがほとんどだ」

「そんな……!……やっぱり、人間は大したものじゃない……」


 ムジナは下を向いて赤い目を光らせた。

 ……とんでもなく嫌な予感がよぎった。


「……ムジナ?」


 後から来たイリアがムジナの肩を叩く。

 ハッとして振り返ったムジナは反射的にその手を払った。


「……あ……」


 もう遅い、誰もがそう思っただろう。

 みるみるうちにイリアの表情が沈んでいく。目が潤んでいく。

 ムジナが口を開いたときにはもうイリアは走り出していた。


「イリア……」

「……ムジナ、今は目の前の問題を解決しよう。お前まで人間を嫌いになったらイリアも黒池も悲しむぞ。……お前だけは、オレみたいになってほしくない」


 オレは座り込んだムジナの頭を撫でた。


 ……本当は嫌だ。大嫌いな死神を元気付けるなんて馬鹿げている。……だが。ムジナは放っておけない。この子にはまだ未来がある。オレのような、人間であることを諦めた愚か者のように育ってほしくない。


 ほら、見てみろよ。この真っ直ぐな眼差しを……。


「……うん。わかった。マリフ、装置は?」

「……あるよ。そいつに……壊されてなけりゃ、ね……」

「壊してないっすよ」


 葛城が不機嫌そうに呻く。

 マリフがまた指を差した方向を見ると、銀色の大きな装置が置いてあった。

 メーターがいくつもあり、何かを置く場所が一つだけある。

 恐らくこれがこの問題を打破する最終兵器……。もう完成していたとは。


「リスト……キミ、早いと……思ったかい?」

「え!?」

「似たようなのは……すでに作ったことがあるからねぇ……」


 彼女はよいしょ、と座り直した。随分と体力は回復してきているようだ。


「これを動かすには……ムジナ、キミの力が必要だよ」

「オレの?」

「そう。死神の『時空に穴を開ける能力』を全面に出して……発明したからね。……ふぅ」


 マリフは話し疲れたのか、一息ついた。


「でもマリフ、まずはオレの薬を持ってこないと」

「知ってる。キミのまだ弱い力をこの装置で増幅させ、キミのお兄さんと同じくらいの力に引き上げる。それから取っておいで」

「……やってみる!」

「その意気だ」


 マリフはニヤ、と笑う。試運転と本番を兼ねることができる、ということだろうか。


 この作戦は、まずムジナの薬を取って、砂漠で取ってきた彫刻を魔界に飛ばしてレインにどうにかしてもらうということだった。

 だが、このラジオというものも増えた。レイン、大丈夫だろうか……サニーに手伝ってもらうのだろうか?


「まずは薬だったね?あちらは干渉できないし、見えないから問題なく実行できるよ」

「うん。それなら家出バレないね」

「キミ、また家出したのか……」


 呆れるマリフ。お互い初見ではないみたいだ。


「わ、悪い?」

「面白いなーって思ってさ。あ、皆によろしく言っといてよ。キミが戻る気があるならね」

「……考えとく。で、このビンみたいな装置に魔法をぶつけたらいいんだね?」

「そそ。気をつけてね。無理やり繋げるからさ」


 ムジナは装置の前に立ち、手をかざした。


「あ、闇じゃなくて水蒸気でよろしく。魔力が吸われてるかどうか見やすいようにね」

「注文が多い……わかったよ」


 ムジナはもう一度装置の方向を向いた。そして辺りに水蒸気を撒き散らす。その水蒸気はビンの中に吸い込まれていった。


「よし、あとは装置が動くかどうかだね」

「……あ!メーターが動いたぞ!」


 葛城が声を上げる。確かにメーターが右に動いた。だが、半分よりまだ左だ。これでは魔界に繋がるどころか、霊界にすら繋がらないだろう。


「……っく……まだ?」


 ムジナの手が震える。始めて三分ほどなのだが、ビンの中は水蒸気で結構白くなっていた。


「四分の一ってところかなぁ。ボクも手伝ってあげたいけど、カスほど無いよ」

「どうしよう……オレがもっと強ければ……」

「……手を貸せ」


 気がつくとオレはムジナの手を握っていた。そして有無を言わさず、もう片方の手に力を込める。オレの魔力が装置に流れていっていることが手に取るようにわかった。


「リスト?!そんなことしたら、リストの魔力が……」

「ふん、残念なことに、オレは人間でいろって言われてるようだな。やはり人間は悪魔になれない」


 ……やはり、夏は嫌いだ。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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