犯罪者、出る!
ストーリーの前後的にpixiv版と少し変えています。が、番外編をズラしただけなので問題ありません。
第二十八話 変装男
「到着しましたよ」
交通機関を使い、現在十時前。オレたちは刑務所の前にいる。建物内に入ってすぐのところに上原が立っていた。
「待ってたよ」
「早速ですが、よろしいですか?」
「……一応黒池ちゃんは席を外してくれ。……リスト、話がある」
「ん?」
受付の人に黒池を託し、オレ、ムジナ、イリアは別室へと連れていかれた。銀色の机、そして回転椅子。こんな状況じゃなければ、うんざりしてしまうだろう。
上原は壁にもたれ、口を開いた。
「三人とも、あれは一体誰なんだい?」
「偽者だよ。バレバレのな」
「偽者?本当の黒池ちゃんは?」
「……知らん」
「?!」
この上原という男は、こんなにダメ男な雰囲気を出しているというのに、黒池がいる部署の人間……つまり能力者だ。内容は人の心を読むこと。質問をするときにすごく便利だ。なのでおかしいと見抜くのは簡単だったようだ。
「こんなところに連れてきたってことは何か読み取ったんだろ?」
「あぁ。彼はこう思ってたよ。『へぇ、この人が上原か。本物見てみると映像よりダメそうだな』ってな。どこの映像を見たのかはわからんが、恐らく犯罪の末手に入れた映像だろう。あとダメそうって言った、許さん」
「半分私怨のような気が……まぁいっか」
「で、そっちの子たちは?」
話題がムジナとイリアに移った。二人は珍しそうにキョロキョロしていたが、すぐに前を向いた。
「ムジナだよ」
「イリアっていいます」
「お、君たちが黒池ちゃんが言ってた子かい!聞いてるよ、イリアくん、大学頑張ってるんだって?」
上原は親戚のおじさんかのように接し始めた。二人は一度驚いたが、すぐに心を開いたようだ。
「はい!飛び級ですけどね」
「賢いなぁ。で、この子は?なんか『変な人間もいるもんだなぁ』って聞こえるんだけど」
____心を読むのは人でも悪魔でも見境なしか!
「……びっくりしない?」
「しないよ」
「あのね、死神なんだ」
「……え?!」
思わず後ずさる上原。
……びっくりしないんじゃなかったのか?
「あ、びっくりした!しないって言ったのにー」
「ごめんごめん。魂取ったりしない?」
「しない!」
ムジナは頬を膨らませて機嫌を損ねる。
隣のイリアはというと、その頬をプニプニと触りながら話から離脱した。
「……でも死神とは恐れ入ったな。黒池ちゃん、働かせすぎちゃったかな?」
「さぁ?それより、あれをどうしようか」
「……一つだけ、言えることがある」
「何だ?」
そう言って上原はスマートフォンを取り出した。そして資料をコピーしたものと考えられるものを見せてきた。
「ここ。マリフの部屋がある廊下の監視カメラだ。それがハッキングされた形跡が残っている」
「誰だよそんなことしたの」
「恐らく、予告状を書いた協力者がいるか、あの偽黒池ちゃんだろうね。全部彼がやったなら、捕まえたらおしまいなんだけど……」
上原はそんなに心配していなさそうに呟く。
黒池に聞いたのだが、昔、冤罪にされそうになって疑われていたとき、弁明もせずにノリノリで黒池に張り込んでいたとか。上司が何してんだ、という話である。
「……ま、話はそれだけだよ。戻ろっか。黒池ちゃんが邪推する前に、ね」
「お前、本当に油断も隙もねぇよな……」
「そうかい?いつも通りなんだけどなぁ」
「それが怖いんだっての」
オレは暇で走り回りかねない二人の手を引き、部屋を出た。……と、部屋の外が異様に静かだということに気づく。
「……あれれ、受付の人は?」
真っ先に気づいたのはムジナだ。
「黒池さんもいないよ」
ムジナの隣でイリアが不安な声を漏らす。
嫌な予感がオレと上原の頭をよぎった。
「上原!」
「わかっている!マリフの部屋に急ごう!」
受付の左を。突き当たりの右を。階段を三階分下り、すぐに右に。
よく道を知っている上原の後ろを懸命に追いかけた。下駄は途中で脱ぎ捨てた。あんなもの、履いている場合ではない。
マリフは……今は残された希望なんだ……!
「そこまでだ!」
マリフの部屋に着く直前、オレは声を張り上げた。
部屋のドアは開いていた。あくまで牢屋なのでドアは柵だ。その柵の間から部屋の中を見ると、そこにはゴーグルのレンズが割れ、体を痛そうにくの字に曲げて呻き、殴られ、蹴られたであろうマリフの姿があった。
「……あ、師匠。どうされたんですか?」
「どうしたもこうしたもない。この状況を説明してもらおうか」
「やだなぁ、何をそんなに怒ってるんですか。らしくないですよ」
そう言いながら彼はスパナを蹴った。
マリフはボクっ娘で、さらに変な人ではあるが、女性だ。女性にこんな酷いことをするのは黒池ではない。本物はスクーレを襲ったときにチャンスを与えたそうだ。なので確実に偽物だ。
「……上原に予告状を送ったのはお前だな?」
「僕じゃないって言ってるじゃないですか。師匠」
薄笑いを浮かべる偽黒池。
これでオレは堪忍袋の緒が切れた。
____こんなやつ……こんなやつに、とっておきの言葉をぶつけてやろうではないか……!
オレは、大きく息を吸って、人差し指を勢いよく偽黒池に向けた。
「だぁーれがお前の師匠だ!!お前みたいなやつは……破門だ!!」
「!?」
偽黒池はあんぐりと口を開ける。
マリフと後から到着した上原は憐れみの目を向けた。
「まず、お前は黒池じゃないだろう?」
「……いつわかったんですか」
「最初からだ」
彼は黒池の長いカツラを外した。
その下からはいくつもの犯罪を犯した人間の瞳が光る。
「そうですか……」
「それに、どうして『師匠』なんて言ったんだ。まず、なぜ黒池を狙った?」
「……師匠は俺の師匠なんすよ」
「は?」
こいつに会った覚えはない。なのになぜ?
「とある文献に変装の天才がいるって書いてたんすよ。それが獅子ヶ鬼剣一、あなただったんです」
「オレが変装の天才だ?確かにオレは変装はする。だが、文献に載るほどじゃないだろ」
「え?でも、俺が読んだ本には確かに……」
彼が下を向いたところで上原が前に出た。
「その本も押収させてもらおう。新たな発見もあるかもしれないからさ」
「……わかりました。最後に……師匠」
「何だ?」
名も知れぬ彼は、目を瞑り、息を吸い込み、そして土下座をした。
「俺は、あなたに認められたくて予告状を出し、黒池さんに変装しました。……反省しています。すいませんでした!」
「お前……!」
必死に謝る彼を見て、心のどこかにモヤがかかった気がした。そしてオレは自然と彼の元へ歩き出した。
「……師匠?」
「そうならそうと、言ってくれりゃよかったのに。……馬鹿な弟子だ」
「!!」
オレは彼の頭に手を乗せ、撫で回した。
昔のオレなら絶対許していなかっただろう。やはりこっちに来てからどこかおかしい。
「……名は何という?」
「葛城一成です」
「葛城一成……いい名前だ。オレのように名前を捨てぬよう、励め。……変装してる時点で捨ててるようなものか。まぁいい。葛城、出所したら来い。迎えてやる。黒池のことだ、すぐに許してくれるだろう」
「師匠……!」
彼は目を輝かせた。
「なんだ、そんな目もできるじゃないか」
「す、少し初心に返っただけです!」
葛城は顔を赤くして目を逸らした。
……これではさっき犯罪を犯した人間の目だと思ったなんて言えないじゃないか。
「う、うぅ……」
「マリフ!」
床に突っ伏したマリフは必死にどこかの方向へと指を差す。だが、その意味はわからなかった。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




