悪魔、家出がバレる
祭り、眠くて限界が来そうです
第二十五話 バルディの意思
「ヘッジ様!ヘッジ様!大変です!!」
廊下からドタドタと騒がしい音が聞こえる。
早朝のクノリティアは静かで幻想的な風景が広がっていると有名だが、この音は正反対だ。
俺は疲れ切った体をベッドから起こし、目を擦った。
「なんだ、バルディ。朝からうるさいぞ。らしくないなぁ……」
「それどころじゃないんです!ムジナくんが……ムジナくんが消えました!」
「……は?」
……寝耳に水とは、まさにこの事を言うのだろう。
まだ満足に頭が回っていないが、それに追い打ちをかけるようにバルディは言葉を続ける。
「最近顔を見せないなと思い、部屋を探し回ったんです。そしたら、書斎が大変なことになってまして……」
「どうなってたんだ?」
「……たくさんの書類が紙飛行機になってました」
「……はぁ?」
____紙飛行機に?書類が?……まぁたまにやるけど……。
「それとこれが開いた状態で床に落ちてました。開いていたところに栞挟んでますよ」
バルディは小脇に抱えた本を差し出した。
「これは……召喚術の本か?ふむ……改造された痕があるな」
俺はそのページを開き、ざっと見た。
使用後だったのか、ページの文字が薄れている。こういう系は履歴のようなものがバレないように文字が消えかかるように設定されている。
「……転送先は……アメリカ……?」
「アメリカ……人間界ですね」
「人間界といえば……黒池が電話してきたのと何か関係があるのか……?」
「偶然じゃないですか?」
バルディは紅茶の準備をしながら首をかしげた。
「偶然、か……」
「とりあえずヤーマイロさんが捜索しておられます」
「サメラは?」
「外で雪遊びしておられますよ。やはり中身は変わらないのですね」
バルディは苦笑いしている。
バルディは人間たちと戦っていたとき、サメラに操られて俺たちに襲いかかってきた。
結果、見事に動きを封じ、魂を刈り取ったもののリメルアが復活させろとうるさかったので、マリフに頼んで復活させてもらったのだ。
……しかし。しかし、だ。
マリフの手違いで爆発が起こり、人の姿を保てずになぜか青い目で黒いマントを羽織った白猫の姿となって復活してしまったのだ。
「……ムジナ……」
俺は席を立ち、召喚術が書かれた本を片手にまだ淹れて数十秒の紅茶のカップを手に取った。当然、真横にいるバルディは「あっ」と小さい声を漏らした。
「……熱っ!薄っ!」
「そりゃそうですよ!まだ一分も経ってないんですから!」
「ぐ……ぐうの音も出ない正論……」
「もしかして、俺カッコイイでやりました?」
「やってねーよ!!」
(顔に出てる……さすが兄弟……)
俺は心の声が聞こえてきそうなほどニヤニヤしているバルディを部屋に残し、バン!と大きな音を立てて閉じた扉にもたれて座り込んだ。
そして本を開く。
チラ、と横を見ると、バルディの得意な魔術で動かしたであろうトレイが落ちる瞬間だった。
「……お見通し……か」
俺はトレイの上にカップを置き、消えたページの修復作業を始めた。
この作業は別に初めてではない。紙飛行機にした時にバレないようにしていたからである。
まずは消えかかったところに指を当てる。周りの魔力を指先に集中させ、鞭さながらに動かす。その後、本全体に死神特有の永遠の力を放った。
……しばらく経つと、ページの上に鍵が掛かった鎖のようなものが浮かび上がった。
「セキュリティ固いなぁ」
俺は鍵部分をガッシリと掴み、横に向かって引き千切った。しかし、ガシャン!と音を立てて引っ掛かった。
「むむっ。仕方ない……」
一旦手を離し、本に右の手のひらをかざしてこう言った。
「……死神王の権限だ。開けてもらおうか」
すかさず暗い声が聞こえてくる。
『____ならば、寿命を二年いただこう。それとも、お前が悪魔なら他人の魂でも使うのか?』
「いや、俺の弟を探すために他人に迷惑はかけられない」
『____変わってるな。良かろう。開けておいてやる』
直後、紙や写真が焼けるように、周りからジワジワと鎖が消えていく。解除されたのだ。
「よし」
完全に召喚術が見える状態になった。これで準備万端なのだが……。
「……でも行ってはいけない気がする。もし、今向こうが大変なことになっていたら……」
黒池の声色を思い出した。
彼の声に焦りが出ていた。
こちらはこちらで『デストロイヤー』の事件がある。それにカリビアも捕まって……。考えるだけで胃が痛くなる。
「ヘッジ様。終わりましたか?」
扉をドンドンと叩く音と振動が背中を伝う。そうだ、ここは部屋の外の扉の裏だったな……。
「あぁ。すまない。今立つよ」
立った後すぐに扉が開いた。覗き込むと、朝日に照らされたバルディがメガネをくい、と上げながらニッコリと笑っていた。
「紅茶、冷めちゃいましたか?」
「まぁ……少しね」
「ふふ、わかりました。……時にヘッジ様、首のマジックアイテムの整備はしておられますか?」
「いや……やったことはないけど……」
そのマジックアイテムというのは、カリビアの手作りで彼自身もつけているアイテムだ。
半吸血鬼の俺の吸血衝動を抑えるために、鉄のように冷たく鈍い光を放つ首輪をつけている。結構大きい。
「それはちょっとまずいですよ。いつもカリビアさんが来られる際、調整をなさってらしたのですが、彼は今囚われの身でしょう?ヘッジ様がもし人間界に行かれた際、その効果が切れると大変なことになりますよ」
「そ、そうだな……」
そういえばそうだった。確かに少し……ほんの少しだけ首の辺りが熱くて脈打っている。
「その時は……私の血をお渡しすることも視野に入れてますからね。だから心配しないでください」
「そんなこと言わないでくれ。バルディも大切な家族なんだから」
「……ヘッジ様……!」
バルディは目を丸くし、メガネを上げた後、ハンカチで拭った。
そこまでやる必要はないと思うんだが……。
「ですが……本当に困ったときは頼ってくださいね?」
「ふっ、それはこの間操られたときの贖罪かい?」
「まさか。すべて私の意思ですよ、ヘッジ様」
そう言って笑ったバルディの体は、怯えているのだろうか、震えていた。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




