リスト、初アメリカ
第二十三話 いざ、アメリカへ
翌日。エジプト、カイロの空港で僕は師匠を待っていた。
本来は席を予約しなければならないのだが、地球的にヤバい問題が起こってるので国が「いいよ、乗って乗って!」と言ってくれた。
まず、本当は日本に戻らなければならないのだが……。
「黒池!待たせたな!」
師匠は大量の袋を両手に下げ、いつもの着物にマントという姿で下駄をカランコロンと忙しなく鳴らしながら走ってきた。
「遅いですよ!荷物、入りますか?どうせアメリカでもお菓子いっぱい買っていくんでしょう?」
「まぁな!アメリカンサイズってやつだよな?楽しみだな!」
師匠はさらに楽しそうに僕を追い越した。
……しばらく経ち、僕たちが乗る飛行機の招集が始まった。
出発は三十分くらい後だろうか。
僕はスマートフォンを開き、イリアくんに「今から行くからね」と送信した。
____ポーン!……まもなく、当機はニューヨークに向けて____
「むむぅ……またあの重力を……」
今回は水分がなくなりそうなお菓子を食べている。しかし、とても甘い香りを漂わせているので気持ちが落ち着いたのか、何も言わなかった。
「……黒池」
「何ですか?師しょ____むぐっ?!」
師匠に呼ばれ、彼の方へと向くと口の中にお菓子を突っ込まれた。カップから取り出したような形をしており、シロップなどで固めてるのか、硬くて口の中が痛いが甘いし美味しい。……のだけど!
「どうだ?美味しいだろ?」
「ごくんっ……ビックリさせないでください!」
「……あはは、すまんな……」
師匠はどこか元気がなさそうに笑った。
「……どうしたんですか?師匠らしくないですよ」
「それだよ。こっちに戻ってきてから、以前のオレを思い出せなくなってきたんだ。……オレは随分丸くなったなって……」
「良いことじゃないですか。優しい師匠でも」
「ふぅむ……」
……それから、僕たちは一言も話さずにアメリカへと到着した。僕は雑誌を読んだり、映画を観たり、仕事の整理をしたりしていた。一方、師匠は長いことどこかに行ったり、眠っていることが多かった。
……まぁホラー映画を観てるとき、ビクッ!ってなって師匠の腕を掴んでしまったときはヒヤヒヤしたけどね。
「あ!イリアくん!」
「黒池さん!リストさん!」
ニューヨーク空港のとある店の前。
そこではイリアくんが一人で待っていた。
僕たちの姿を捉えると同時に彼はこちらに走り寄ってきた。それと同時に師匠も走っていた。
「イリア!元気にしてたか?!」
「うん!リストさんにまた会えて嬉しい!」
再会を喜ぶ女子高生のようにピョンピョン跳ねまくる二人。……師匠って本当に何歳なのだろうか。
「そういや用事って何ですか?」
「そうだ!えーっと、病院、ついてきてくれる?」
僕の質問にイリアくんが答える。その手はまだ師匠の手を握ったままだ。
「病院だと?誰か入院してるのか?」
「……うん。来て」
空港を出、バスに乗ること数時間。目の前にはそこそこ大きな病院があった。
イリアくんは受付で面会許可を得て部屋へと案内してくれた。
____コンコンコン。
「入るよ」
返事も待たずに勝手に部屋に入ったイリアくん。ベッドの上へと視線を動かすと、そこには見覚えのある黒髪の少年が横たわっていた。
「「ムジナ?!」」
僕と師匠は思わず病院だというのに大きな声を出してしまった。
「しーっ!……ムジナ、わかる?黒池さんとリストさん。連れてきたよ」
ムジナはイリアの方を見たあと、僕らの方も見た。……だが、彼の顔は寝起きかのようにトロンとしている。
「……誰?」
「やっぱりダメか……」
ため息をつきながら曲げた腰を伸ばすイリアくん。僕はイリアくんに理由を聞いた。
「ダメって?」
「ムジナ、お薬忘れてきちゃったみたいで……記憶が混乱してるんだって」
「……レインと同じ症状か……」
師匠は腕を組んだ。
どうやら数年前スクーレさんたちがあの吸血鬼と戦ったとき、レインとヘッジさんは一度仮死状態に陥ったようだ。
ヘッジさんはカリビアさんのマジックアイテムで補っているが、当時霊界に閉じ込められたムジナは完全に体から魂が抜けたらしく、不安定な状態らしい。
それはレインも同じらしく、魔界に唯一いたナニルという医者に薬を処方してもらっていたようだ。
しかしナニルが行方不明になった後、人間界で有名な医者に処方してもらっている、とヘッジさんに聞いた。
「お薬さえあればなんとかなるんだけど、ムジナのお兄ちゃんに送ってもらえないかな?」
「いえ……別件でヘッジさんに連絡を入れたのですが、断られてしまって……」
「ムジナが困ってるんだよ!?それでも断るなんてお兄ちゃん失格だ!」
イリアくんは病院というのも無視して叫ぶ。僕には兄も弟もいないからわからないが、確かに先生や師匠にそんなことされると悲しい。
「……だ、め……お兄ちゃんだけは……やめて……」
「ムジナ?!」
しんみりとした雰囲気になったその時、ムジナが消え入りそうな声で話した。
すぐに僕たちはムジナの方を見るが、彼はもううつらうつらとしていた。
「家出……した……だから……お兄ちゃんには……言わな……」
「ムジナ、記憶が……?!」
僕はムジナの手を取るが、その手を師匠が払い除けた。
「いや、さっきも言ってただろ。混乱してるんだって」
「……そうでした。でも家出したって……どうして?」
「知るか。でもまぁ、イリアがここまで連れてきてくれたんだ。これが解決したらムジナにレインを連れてきてもらおう」
「で、薬は?」
「黒池、お前ちゃんと考えたか?」
「えぇ、まぁ。でも薬は誰も作れないんですよね?」
僕は一瞬、認知症の処置を考えたが、まず認知症では無いだろうし、さらに悪魔なので意味がないだろうと思った。
「作るんじゃない、持ってきてもらうんだよ。黒池、イリア。今すぐムジナを連れて日本に戻るぞ」
師匠は帽子のつばをくい、と上げ、ニヤリと笑った。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




