エジプトでも電波は繋がるんですよ?ホントホント
らしいですよ。
第二十話 神の遺物
……さらに数十分掘り続け、ついに何か硬いものが僕のスコップに当たった。
師匠に合図を送り、触らないようにそっとスコップで持ち上げようとした。
「彫刻、ですかね?」
「ふむ……鳥……不死鳥?」
重さは十キロくらいだろうか。そのまま持ち上げることができなかったので、テコの原理を使い、無理矢理スコップを彫刻の下に潜らせ、持つ部分を思いっきり踏んで掘り出した。
「ちょ、ちょっと、もう少し丁寧に扱えよ?!呪いがかかってても宝なんだからな?!」
「よく飛びますねぇ」
「おい!」
重いのですぐに落ち、ズドン!という音を出して落ちてきた……いや、墜落したという表現が適切か。とにかく、それは周囲の砂を巻き上げ、僕たちは盛大に咳き込んだ。
「げほっ!げほっ!……うぅ、砂まみれです……」
「だから言ったのに!……でもまぁ、とりあえず取り出せたな。礼は言っておこう。ありがとう」
師匠は彫刻に手をかざして桜を生み出し、包んだまま異界へとぶち込んだ。……異界に呪いが拡がっていないことを祈っておこう。
「師匠、どうやってレインを呼び出すんですか?まさか召喚術とかやっちゃう系なんですか?」
「やらない系だな。黒池、お前ヘッジの電話番号持ってるだろ?あの人経由でレインを呼び出すんだ」
魔界と人間界を繋ぐ穴を唯一自由に使えるのがヘッジさんだ。彼に頼み、穴を開けてもらってレインを送ってもらう、ということだろう。
「ヘッジさんに、ですか?わかりました……ってここ、電波無い気が……ん?!ある!」
「まぁ観光客が多いからな。ほら、さっさと繋げろ」
師匠に急かされ、ヘッジさんの電話に繋げる。……が、何度やっても出ることはなかった。
「おかしいな……いないのかな?それとも使い方忘れちゃった?」
「いや、使い方はヘラが叩き込んでた。ということは忙しいのか、それとも行方不明になっているのか……?」
「それはさすがに思考が飛びすぎかと。とりあえず、お昼過ぎですし帰りましょう!砂漠の夜はとても寒いんですよ」
「そうだな。まずは砂を埋め直そう」
……砂を埋め直すのは、掘るよりかは簡単だった。師匠が生み出した大量の桜が押し込んでくれたからだ。あとは平らになるように二人で踏み潰した。
その後、僕は一息ついたあと、後ろを向いた。
「うーん、帰りもこの道歩くんですね……」
「いや、ちょっとこの秘宝の試運転しようと思ってだな」
そう言って鞄から野球ボールほどの緑色の珠を取り出し、掲げた。
目を開けていられないほどの光が珠に灯る。しばらくして目を開けると、目の前には大型車があった。
「突然のことで脳が追い付きませんが……」
「そうだろう、すごいだろう!この秘宝は、いつか大移動しないといけない時が来るだろうと思って取ってきた秘宝なんだ」
「なるほど……って、そんなことで納得できませんよ!?なんで魔界に車?!おかしいですよ!」
「じゃあ歩くか?」
「いえ、乗らせていただきます!」
「素直でよろしい!」
車と言っても、車型のマジックアイテムらしい。椅子はあるが、ハンドルが無かった。魔力がある者が車に魔力を込め、目的地を伝えるという仕組みだ。
僕と師匠は前の座席に座り、師匠が魔力を込め始めた。
「ちゃんとシートベルトあるんですね」
「車だからな。無かったら困る」
師匠は魔力を込めているため、前を向きながら答えた。
しばらくするとギュゴゴゴゴッという妙な音を鳴らし、車が動き出した。
「しっかり掴まっとけよ」
「は、はい……!!」
珍しく真剣で冷たい声で言った師匠。ちら、と一度こちらを見、そして真顔のまま前を向いてしまった。
……どうやら、師匠の目には『保護すべき一市民』としか見えていないようだ。今までも、これからも……だろう。僕はすっかり師匠をパートナーとしてしか見ていなかった。だが、師匠はもっと別の捉え方をしていたようだ。こんな自分が恥ずかしい。
そう考えながら窓の外を見た。
砂埃を上げて砂漠を走る車。決して速いとは言えないが、この際、贅沢は言っていられない。あとで師匠に礼を言わないといけない。
「やっと着いた……」
二時間くらい砂漠を走り続け、やっとホテルに到着した。
現地の人たちは見たことがない謎の車を見て驚いている。
僕たちは車から降り、師匠は車を再び珠に戻した。
「ふぅ……魔力を使いすぎたな……ま、秘宝の魔力なんだけどな」
「お疲れ様です、師匠。ありがとうございます」
「いいんだ。とりあえず……ゆっくり風呂に入って、ヘッジに連絡入れようか!」
……そうやってにっこりと笑った師匠は、僕が尊敬すべきいつもの優しい師匠だった。
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一方その頃ヘッジは……。
「本っっっ当にすまん!!」
両手を顔の前で合わせ、体を前に四十五度に曲げていた。
城から脱出して二日ほど経った。
二日酔いも覚め、体調を整えたヘッジさんは今、目の前で猛反省をしている。
「どうしてカリビアさんを捕まえたんですか! 」
フローラとウィルが詰め寄る。俺はというと、二人をなだめる側だ。
「まぁまぁ、申し訳なさそうにしてることだし、許そう?な?」
「ヘラさんは甘いんです!たとえムジナさんのお兄さんだからって甘えさせたらダメなんです!!」
「お、おぅ」
フローラは意外と正義感が強いのか、こういうことになると周りが見えなくなるのだろう。ウィルが隣で諦めたような表情をしている。
すると突然、ヘッジさんの携帯電話が鳴った。
「鳴ってますよ」
「いや、まずは君たちの信用を取り戻すことが先決だ。だから出るのはそのあとだ」
「別に俺は怒ってないですけど……」
そんな会話をしている間、繰り返し電話が鳴り続けた。しかし一度も出ることはなかった。
「とにかくフローラ、蜘蛛の糸解いてあげなよ。歩けないだろ?」
「ダメです!!逃げる可能性がありますから!」
「あ、う、うん」
フローラの勢いに圧され、思わず肯定してしまった。まぁ間違いではないが……。
「……で、悪いのがあのレタスなんですよね!」
「ヌタスな」
さらに詰め寄るフローラの間違いを真顔で訂正するウィル。
ま、そんなあだ名を付けられる条件は揃ってるんだけど。レタスみたいな髪色してるからなぁ……。
「……あぁ。ヌタスさんは凶悪と言えるほど強い。拳ひとつで岩をも割る破壊力を持ってるからな」
ヘッジさんは下を向いて静かに答えた。拳ひとつでそんなこともできるなんて……。昔、城から退去したと聞き、会うこともないだろうと調べなかった俺の落ち度だ。少しでも彼の事を調べていたならばこんなことにならなかったのに……。対策も練れていたのに……。
「格闘技使ってくるなら遠距離攻撃は?」
「いや、あの人は風の魔法を使ってくる。遠くでも無理だ」
ウィルの提案に、ヘッジさんは顔色を変えずに答えた。
「そうですか……弱点とかはないんですかね?」
「弱点?弱点は無いが……弱点みたいなのはあるよ」
「本当ですか?!」
俺の勢いにヘッジさんは少しだけびくっ!と驚き、返事のつもりなのか、ニヤ、と笑った。
「あぁ。それは……彼の妹であり、現魔王のライルだ」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




