リスト、初エジプト
そろそろ眠くなってきましたね。寝る前に暖かくしすぎると体調崩しますよ〜
第十九話 砂漠のオアシス
「おはようございます、師匠」
全てはここから始まった。
そう、朝の挨拶、一日の始まり。
そう言うと聞こえが良い。だが、今置かれている状況を見たとたん、それはガブリエルのラッパ、地獄の始まりへと変わる。
「あぁ、今までいろんな所に行ったが……日中と日没の気温の差がここまで大きい所は初めてだ……って何回言っただろうなぁ……」
師匠は欠伸をしながら正装に着替えている。さすがにいつもの着物では暑いし、動きにくいし、まずここは日本ではないので着ないことにしたようだ。
「まぁまぁ。さっさと解決すれば、さっさと帰れますよ。それと甘いもの買っていきましょうね」
「……よし、やるか!」
甘いものが好きな師匠にはこの言葉が一番効く。
僕たちは必要なものをまとめ、ホテルのロビーに向かった。
エジプトの甘いもの、か……何があるかなぁ。
「オ待チシテオリマシタ、オ二人トモ」
「あれ?こんな朝早くからご苦労様です!」
ロビーには先日会ったエジプト人がいた。僕は腕時計を見てから言葉をかけ、ニコッと笑った彼のその手には紙袋があった。
「コレヲドウゾ」
「何ですか?これ」
「エジプトデ有名ナオ菓子デス。リストサンガ甘イモノガ好キト聞イタノデ」
「わぁ!いいのか?!」
師匠が嬉しそうに騒ぐ。
それを見た彼は袋から一つ取り出し、師匠に渡した。
チラと見ると、それは茶色く、砂糖がまぶしてあった。
「食ベテミテクダサイ」
「いただきまーす♪」
「もう、師匠ってば……」
「ん!?めちゃくちゃ甘い!!驚きの甘さなんだけど!?」
目を見開き、口を押さえる師匠。確かに甘い香りが広がっている。
「ぼ、僕もいいですか?」
「ドウゾ」
「んんー!甘い!もしかしてエジプトの人たちって、とんでもなく甘党?!」
「ドチラカトイウト、エネルギー源デスネ」
彼の言葉に、お菓子を飲み込んだ師匠が振り向いた。
「エネルギー源とな」
「暑イノデ」
「なるほど」
そして残りの箱を受け取った師匠は嬉しそうに懐にしまった。というかどうやって箱なんかを入れられるのだろうか。
「じゃあ、行ってきます!」
「サボテン持って帰っちゃダメか?」
「ダメです」
「えー」
頬を膨らませて僕の後ろを追いかける師匠。それを見て、エジプトの彼はクスクスと笑っていた……。
____十分が経った。
僕たちはジリジリと大地を焼く太陽のもと、異変があった場所に向かって歩き続けている。しかしその足取りは徐々にゆっくりになっていった。
「暑い!」
「そりゃ砂漠ですからね」
「なんでお前はそんな余裕な顔してるんだよ!」
師匠は不満爆発、という顔で叫ぶ。
僕はため息をつき、持ってきた鞄のチャックを開いた。
「現地で使われている衣服や、冷たくなるアウトドアグッズを使ってますから」
「あの時買いに行ってたのか……行動力の化身だな」
「師匠が動かないだけですって」
と言いつつも僕はアウトドアグッズのうちの一つを師匠に手渡した。叩くとひんやりと冷たくなるタイプのものだ。
「ふ、優しいな、お前は」
「師匠は大切な人ですから、見殺しになんてするわけないじゃないですか」
「んー、そこまで来るとちょっと怖いぞ」
「あはは、そうですか?」
「そうだそうだ。ムジナも言ってたぞ、怖いって」
「それ悲しすぎて結構ダメージ食らいますからね!?」
そんなこんなでのんびりと話しながら砂漠を歩いていく。
二時間ほど経った頃、かなり向こうに緑が見えた。
だが、この長い長い距離を歩いてきた二人である。こんなもの、と言わんばかりに乗り越えていった。
「わぁ、緑ですね」
「ぜぇ……はぁ……」
「大丈夫ですか!?」
僕は膝に手を当て、前屈みになって息を切らしている師匠を見て驚いた。さっきまで元気に歩いていたのに……。
「大丈夫なわけ!速いわ!げほっげほっ」
「あー、はいはい、飲み物あげますから」
「最近扱い酷くねぇか……?はぁ、はぁ……」
そう訴えかける師匠のため、魔法瓶の蓋を開けて師匠に渡した。師匠は嬉しそうに飲んでいる。
師匠を木陰に休ませ、僕は木々に手を触れながら考え事をしていた。
「……異常に生えた草木。でも、これでも、頑張って生きてるんだよね……?」
上を見上げた。日本の並木道と変わらないくらいたくさん生えた草木。こんな土地でもしっかりと太陽の熱を遮ってくれている。これも神の力だというのか……。
「……もし、これを切り倒したら僕たちは世間から何て言われるのかな……?」
僕は靴に入った砂を取り出している師匠を見て呟いた。
こんな事態なのに随分とのんびりしているなぁ、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「ふん……地球のためだと思ったら、周りの声も聞こえないだろう?」
木にもたれながら魔法瓶を差し出す師匠。だが、言っていることはまともだ。それに、その考えが今一番求められている答えだろう。しかし、僕にはこれを実行する勇気はない。
「でも、師匠……これを本当に神様が?」
「あぁ。大地の神と呼ばれる、願いを叶える神だ。今はなぜか魔界にいるそうだが……他の同業者がその神を見つけたらしく、何を思ったのか、砂漠をジャングルみたいにしちまったんだ」
「……」
僕は無言で魔法瓶を受け取り、鞄に入れた。その一連を見ながら師匠はどこからか取り出した扇子で扇ぎながら近づいてきた。
「今、『どうしてそんな要らんことを』と思っただろ?」
「え?」
「普通はそう思うよな。だが……どうしてジャングルを選んだのか、って考えたら?」
「師匠、さっきから何を……」
「鈍感だな。何かを隠したいからという考えになるだろ?」
師匠は鞄に入れていた鞭を取り出し、地面に叩きつけた。
サラサラでとんでもなく熱い砂が舞う。
砂が少し避けられた場所にはまだ生えきっていない木の苗があった。恐らく、前々から世界中から緑化を図ってきた人たちが埋めた苗だろう。
「苗……ですか。でもこれは隠す必要がないですよね?」
「問題はこの下だ。……だが、情報によればこれには呪術がかけられているらしくてな……解除するにはレインの力が必要になるんだ」
レイン。またこの名前を聞くことになるなんて。
だが、呪術となれば彼に頼るほかない。
しかし、どうやってここに連れて来ればいいのだろうか。
「下って……神殿とかですか?」
「アホか。そんなもんあったら、とっくの昔に国に見つかってるぞ」
「なら……何ですか?悪魔の力を借りてまでしないと開かないものって……」
僕の頭には、呪いといえばということで『ファラオの仮面』やら『UMA的な何かの一部』やらと浮かんでは消えた。
「だからアダプターみたいなやつさ。神とこの世のな」
そう言って虚空からスコップを取り出した。……って掘るの?人力で?!
「なんだ、その目は。お前も手伝うんだよ。もしかすると宗教的なやつの新発見があるかもしれないぞ。歴史的大発見だな!」
「えぇー?!……って僕のスコップも用意してたんですね……」
僕はさっきから黙々と掘っている師匠を見て、僕もということで、鉄が熱くならないようにと師匠の魔法で出された花びらに包まれたスコップを手に取った。
しばらく掘り続け、腰が痛くなったので伸ばすついでに、ふと思ったことを口に出した。
「そういえばこんなことして怒られないんですかねぇ?」
「怒られるな。うん」
……師匠は真顔で掘りながらボソッと呟いた。
「さっさと終わらせましょう!」
僕はさらにスコップを持つ手の力を強めた。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




