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怪奇討伐部Ⅳ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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悪魔、ホームステイする

ムジナくんはかわいい!


↑ぐらにゅーさんが壊れるのはここまでです

第十五話 ホームステイ




「短い間だったけど、ありがとね」

「えぇ。あなたに神のご加護があらんことを」


 翌日、オレはイリアの家にホームステイすることになった。修道服を返そうとしたが、シスターは記念だと言ってプレゼントしてもらった。


「行こっか、ムジナさん。ここには毎週日曜日に行くから別れを惜しむことはないよ」

「そ、そうなのか?」

「はい。イリアくんと来てくださいね」


 シスターの笑顔を最後に、オレは教会を離れた。



 しばらく歩いていると、まさに資料で見たような住宅街が広がっていた。

 庭があり、車道の脇には白い線が書かれている。そして月曜日だというのに遊び呆ける人たち……。


「ねぇ、イリア。学校は?」

「飛び級だから大学なんだ。今日は昼からなんだよ」

「ふーん。……学校、楽しい?」

「うん、楽しいよ。好きなことを学べるしね」

「……そう」


 オレはイリアの目を見て察してしまった。

 彼には同じ年代の友達がいない。だから研究や発明に没頭してるのではないか、と。


「ほら、着いたよ」


 イリアが指を指した家には、たくさんの発電機が置いてあった。

 さすが天才発明家……と思えるほどだった。


「お姉ちゃん、連れてきたよ」


 イリアが叫ぶ。すると家の扉が自動で開いた。……オートロックレベルじゃないよ、これ……。


「おかえり、イリア。……それと本当にこっちに来てたのね、ムジナ」


 中から出てきたベアリムさんは困ったような驚いたような顔をした。なんかすごく申し訳ない。


「……どうも……」

「とりあえず上がって。もう戦いは終わったのだし、お客様だからね」

「お、お邪魔します」


 オレは綺麗に靴を揃えて脱ごうとしたが、靴を置くところが見当たらず、周りをキョロキョロと見渡した。そしてそれに気付いたイリアがこっちにやって来た。


「アメリカでは靴を脱がないんだよ。……って、魔界の常識は知らないんだけどね」

「じゃあ、濡れ雑巾だけでも……」

「いいんだよ、そのまま上がって。ムジナさんはもう家族同然なんだから」


 にこっと笑ったイリアは、リビングに走っていってしまった。それをオレはできるだけ汚さないようにと追いかけていった。


「イリア、死神王と連絡取れる黒池さんにメッセージを送ろうとしたんだけど……」


 先にソファーに座っていたベアリムさんがスマートフォンの画面をこちらに向ける。そこには通信不可を示す通知が表示されていた。


「どうしたの?」

「GPSによると、今、黒池さんってば仕事でエジプトにいるんだって」

「エジプト?!」


 エジプト……砂漠で有名な国と本に書いていた。どうしてそんなところに?


「二人とも、これを見て」


 差し出されたスマートフォンを見てみると、そこにはニュース記事が表示されていた。……しかし英文なのでさっぱりわからなかった。


「『エジプトの緑化が異常な進歩。これは天変地異の前触れか?!』……って良いのか悪いのかわかんないんだけど……」

「……天変地異……」

「何かわかる?」


 二人に注目され、オレは軽いパニックになった。

 天変地異……ノートぐらいしか思いつかないんだけど……。だが、どうやらノートは関係してないようだ。もっと、もっと別の力だと思うんだけど……。


「……ごめん、わからない」

「そっか……でも黒池さんが調べに行ってくれてるんでしょ?」

「えぇ。それに、ネットに載ってたんだけど、今回はリストさんもいるそうよ」

「リスト?!」


 リストが人間界に行ったとは聞いたが、まさか警察の協力をしていたなんて。


「そう。ほら、写真を見て」


 別のページを開くと、砂漠で撮ったであろう写真が表示された。……うーん、この二人、思いっきり見覚えがある……。


「こんなに情報が出てて大丈夫なの?環境省とかに止められたりしなかったのかな?」

「そこはわかんないけど、もしかするとリストさんが真実を知ってるかも……」


 確かにリストならどこから仕入れたのかわからない情報を大量に持っている。それにもしかすると、もうすでに魔界ではその問題に立ち向かっているかもしれない……。いや、一日二日ではそんなことないだろう。


「とにかくイリアは学校に行く準備をしなさい。ムジナは手伝いをしてくれる?」

「うん!ホームステイするからにはたくさん手伝いしないとね!」


 ベアリムさんの言葉に、オレは満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう。やる気に満ちてるわね。それはいいことよ」

「……ってやばい、十一時だ!早く準備しないと!」


 ドタバタと自室に向かっていったイリアを見届け、オレとベアリムさんは苦笑いした。



 昼十二時を回った。

 イリアは今授業をしてるのかと考えていたとき、ベアリムさんから声がかかった。


「ムジナ、これを着てみて」

「これは?」


 どう見ても女性用の服だ。

 しかも何着もある……。


「魔界に入る前、一度黒池さんに着せたのよ。そしたら顔を赤くして照れまくっててねー。楽しくなっちゃって。イリアなんか絶対嫌だ!なんて言うからさぁ」

「え、えっ」

「だから、はい!」


 矢継ぎ早に数え切れないほどの紙袋を渡され、逃げ場を失ったオレは渋々それを着ることにした……。


「まずはこれね」


 大きく『ゴスロリ』と書かれた紙袋をオレに渡し、ベアリムさんは当然かのように「どうぞ」と言ってきた。

 いや、どうぞって。


「ムジナ、目が赤いから似合うと思うよ」

「いや、そこ?!」

「ほらほら、着てくれないとおねーさん泣いちゃうよ?」

「うぅ……」


 まずは黒いリボンが付いたスカートだ。ベルトもしっかり付け、終わったと思ったら次はカツラにメイク。いつ終わるんだろうか。


「そうそう、不敵な笑みを浮かべて……魔方陣系の魔法は使える?」

「追尾式の闇魔法なら、魔方陣は出るけど……」

「あの子が言ってたやつね。撃たなくていいから、魔方陣だけ出してくれる?撮るから」

「わ、わかったよ……」


 オレは呪文を唱え、赤い魔方陣を出した。その姿をパシャパシャと撮影していくベアリムさん……。

 意外な趣味をお持ちで。


「じゃあ次はふわふわ系で……」

「まだやるんかーい?!」


 ……数時間後、家に戻ったイリアは思わず「片付けろ!」と叫んだ。



 その後、ベアリムさんはパソコンに移行したデータを見て満足し、オレはカーペットの上に大の字になって寝転んでいた。


「……いやぁ、いっぱい撮ったわね」

「つ、疲れた……着替えがこんなにハードなものだったなんて……」

「でも楽しかったでしょ?」

「……ま、まぁ……綺麗でかわいい服がいっぱいだった。ヘラは喜んで参考にしたかもな」


 脳裏に「すげぇ!これでいろんな服が作れるぞ!」とはしゃぐヘラの姿が浮かんだ。


「あら、ヘラはこういうのが好きなの?」

「作るのが好きなんだ。資料で見たと思うけど、あの赤いコートとか緑のズボンとか、全部ヘラの手作りだからな。それに、オレとお兄ちゃんの服も『センス悪い!』とか言って作ってくれたし。いつもの服だってヘラが作ったんだよ」

「そうだったのね……鍵っ子なのかしら」


 ベアリムさんはパソコンを片付けながら言った。

 しばらくヘラについて話していると、イリアがスマートフォンを片手に部屋から出てきた。


「何してるの?」

「ヘラについて話してたんだ」

「へぇ。あの人、かっこいいよね。赤って強そうに見えるし」

「実際強いよ」

「でもやっぱり、リストさんが一番かっこいいよ!助けてくれたし……ジャパニーズ着物だし」

「そこなんだ……」


 オレはリストの服を頭に思い浮かべた。

 そういえばあの人、トレジャーハンターだけど、暑いところと寒いところ、どうやって乗り越えているのだろうか。


「そういや刑事さんのブログに黒池さんとリストさんの事書いてたよ。あのブログの人、黒池さんの先輩なんだね」

「そうなの?!ブログにまで載ってるんだ、あの二人……」

「待ってよ……あった。『常識から逸脱した二人の刑事の日常に迫る!』っての。面白そうだなって思って調べたらまさかあの二人の事だったなんて……」


 イリアがとんでもなく速いタップでサイトを開く。確かに写ってる。ブレまくっているが、隠密行動しながら撮ったと考えれば……おかしくもない。というかどうした肖像権。


「でも黒池は優しいから許してくれるよ、きっと」

「うーん、ムジナさんがそう思ってるだけかもしれないよ?」

「えぇ……過小評価しすぎじゃない?」

「……かなぁ?」


 そう言って彼はまた部屋に戻っていった。

 それを見たベアリムさんはオレにすり寄ってきた。


「……ねぇ、ムジナ。最近イリアがおかしいのよ……」

「え?いつもと変わらないように見えるけど……」

「あのイリアがネットニュースを見てないなんておかしいわ。きっと何かあったのよ……」


 ベアリムさんは下を向いて悲しそうにした。



 ____ポロン。と、軽快な音が響いた。


 先日、イリアと一緒に携帯ショップに行って契約してきたスマートフォンが音を鳴らしたのである。


 オレは「こんな深夜に何だよ……」と呟きながらロックを解除した。


『部屋に来てほしい』


 イリアからのメッセージだ。

 というかこんな深夜まで何してんだと突っ込みながらも、オレは毛布を手に、隣のイリアの部屋までノソノソと歩いていった。


「入るぞー」


 コンコン、と扉を叩き、ドアノブを回した。ここでは一般的な内開きの扉を開こうとしたが何かに当たり、ゴン!と大きな音を立てた。


「は、入れん……」

「ちょっと待って、退けるから」


 扉の隙間からイリアが物を退けている姿が見える。そしてしばらくして、扉を開けることができた。


「うわっ、物だらけ」

「全部必要なんだ」

「出たよ、整理できない人の典型的な考え方」

「うるさいなぁ。とにかく座ってよ。ベッドでいいから」


 イリアに促され、オレは足場がほとんどない部屋を渡ることになった。


「これ飛んだ方が早くね」

「いや、こっちには魔力がミジンコほど無いから、飛び続けたらいつか動けなくなるよ」

「うへぇ、しょうがねぇな」


 オレは仕方なく散らばる物を踏まないように避けていった。

 よく見ると、オレとイリアが戦ったときの爆弾の設計図だった。


「で、話ってなんだ?」

「……あのさ、ムジナさんって呪いとかできる?」


 イリアは回転椅子でこちらを向いた。


「呪い?レインの方がよくできるけど……できないわけじゃないよ。でも何するの?」

「……」


 オレの問いにイリアは黙った。

 ……嫌な予感がする。これがベアリムさんが考えていたこと?


「言わないとわからないじゃないか」

「……実はさ、ネット上でいじめられてて……飛び級で大学に入ったことをよく思ってない人たちがいじめてくるんだ。一、二年ならまだしも、十年くらいだよ?だから……迂闊にネットも見れなくなって……」


 イリアはどんどん言葉尻を窄めて言った。


「だからオレにそいつらを呪ってほしい、って?……それは違うと思うよ」

「どうして?!」

「オレなら、自分のすごさを思い知らせてやるかな。そして、大人を味方につける。まだ子供のイリアならきっと話を聞いてくれるさ」

「ムジナさん……」


 あっちとこっちとは常識が違うのは承知の上だ。だからこそ、穏便に済む方法を取る。


「ねぇ、この事はお姉ちゃんには内緒にしてくれる?バレたら剣を持って学校に乗り込むかもしれないから……」

「こ、怖いな。わかった、内緒にするよ」


 ____オレも内緒にしないとな……ベアリムさんが察してる事。


「深夜に起こしてごめんね。おやすみ、ムジナさん」

「おやすみ、イリア」

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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