登場!大地の神
第十二話 サプライズ
「なぁー、いつまで歩くんだよー?飛んで行こーぜ」
レインが耐えきれないというように切り株に腰を下ろした。そしてネクタイを外し、上着まで脱いでしまった。
「神様に会いに行きたいって言ったのはレインでしょ?!しっかりしなさいよ!」
「えぇー」
「えぇーじゃない!……でも、レインだってだいぶ消耗してるんだよね……」
レインはどこから仕入れてきたのかもわからない赤い木の実を口に放り込んだ。
そんな彼を見て私はクス、と笑った。
「悪魔は消耗が激しいのか。これはまた研究者が喜びそうな情報だな……」
「キリルは疲れてないのか?」
私の横で腕を組むキリルに向かってレインは木の実を向ける。キリルはそれをスルーしながら答えた。
「鍛えたからね」
「鍛えたってだけでこんな長距離を歩き切るのかぁ?すごいな」
「レインは鍛え直さないといけないね。『デストロイヤー』との戦いも残ってるし」
「うっ……」
そうだ。あの子との戦いはまだ解決していない。それにあの『化け物さん』には借りがある。レインと協力し、倒さなければ。
「レイン。丘に着いたら……ううん。まだ開けないわ」
「開けない……って、まさかあの手紙のことか?まったく、いつになったら開けるのやら……」
レインが五つ目の木の実を食べる。その間にキリルが覗き込んできた。
「これは……招待状?」
「招待状?」
「あぁ。昔同じような物を貰ってさ。……サニーに」
「?!」
サニーに貰った?……そういえば黒池さんも同じようなことを言ってたような……。
とにかくサニーが持っていたということは、その兄であるレインも持っていてもおかしくない。
「でもおかしいな。どうしてオレらの時は開かなかったのに、それはすぐに開きそうなんだ?もう力は十分足りてるってことなのか?」
「うーん、サニーは何がしたかったんだ?」
二人して腕を組み、首をかしげている。
サニーのことはレインがよく知っていると思ったが、そうでもないようだ。
「ま、いっか。十分休憩したでしょ?行きましょ!」
「そ、そうだな」
私は手紙を仕舞い、レインの手を取って立たせてあげた。
「アメルまではもう少しかかるよ」
「大丈夫。ね?レイン」
「まぁな。ワクワクしてきたぞ!」
レインはニッコリと笑って拳を握りしめた。さっきの疲れ果てた顔とは大違いだ。
「じゃ、出ぱ____」
「きゃあああああああ!!!」
一歩歩こうと足を前に出した途端、悲鳴が辺りに響き渡った。
私たち三人は「え?えっ?!」と顔を見合わせた。
「ななな、何だぁ?!」
「何だも何も、そこの悪魔!足を上げなさい!」
姿が見えない女の声が響く。
そしてレインが渋々と足を上げた。そこには萎れた花があった。
「あ……」
「……わかりましたか?あなたは今花の命を散らしたのです」
そう言いながらその訳のわからない女は姿を現した。
深緑の長い髪を揺らし、大きな花を二つ髪に付けている。右腕は木に変化している。目は閉じており、そうしながらも彼女が怒っていることを見てとれた。
「す、すまない……気付かなかった……」
レインはしどろもどろになって言葉を絞り出している。
「……ってあれ?あなたはもしやレインさんでは?」
「え?!何でオレの名前を?!」
「うふふ、いつも丘に来てくれてありがとうね。おかげで寂しくないわ。だからさっきのこと、許してあげる」
彼女は心底嬉しそうに笑った。
丘?丘といえば……。それにこの姿。まさか……!
「怖がらなくていいのですよ。私は大地の神。ただ今散歩中です♪」
「大地の神だって?!今から会いに行こうと思ってたところなんだ!」
レインは目を輝かせて大地の神の手を取り、ブンブンと振りだした。
「あら、そうなの?そうだ、最近弟くんと来てくれてるでしょ?もっともっと連れてきてもいいのよ」
「で、でも大地の神様!アメルはもう崩壊してしまって、人が……」
私が踏み込むと、大地の神は一瞬困った顔をした。そしてふっと笑った。
「その事ですか。ついてきてください」
「え、あのっ」
「いいですから!あなたたちにサプライズです!」
私たちはご機嫌な大地の神に手を引かれ、キリルも諦めた様子でアメルへと向かった。
「これって……どういうこと……?」
何だかんだアメルに着いた私たち。
そこでは、なんといつもと変わらない平和なアメルの光景が広がっていた。
あの子に皆殺しにされたんじゃなかったの……?
「邪悪な気配を感じたので、咄嗟に皆さんに変わり身の術と言いますか、身代わりを用意させてもらったんです。なので誰一人、死んだ者はいません」
「……よ……よかった……」
私は膝から崩れ落ち、涙を堪えきれなくなってしまった。
一方レインは嬉しさのあまり大きな翼を広げて旋回し始めた。
「でも騒ぎを起こしたあの悪魔は見過ごせませんね。片目の少女……レインさんの妹ですって?」
「……確実にってわけじゃないけどな」
レインは地上に戻って真剣な顔で言った。
「それにしてもあのリボン、凶悪ですよね……どうやらアレ、彼女の力ではなく、呪いのような物のようですね」
「呪い……か」
キリルはじっとレインを見て呟いた。
レインはその視線に気付き、嫌そうな顔でキリルに近づいた。
「なんだよ、キリル。オレが呪術師だからって疑ってんのかよ?」
「一言もそんなことは言ってないよ。それにお前は妹にそんなことをするような奴じゃないだろ」
「当たり前だ!」
睨み合う二人。私は止めに入ろうとしたが、大地の神に止められた。
「どうして止めるんですか?!」
「レインさんの目を見てごらんなさい。本気で怒ってるように見える?」
私は大地の神が指差した方を見た。
「……見えない」
「そういうことですよ。だからあの丘の魔力にも囚われないんです。彼は正真正銘、まっすぐで優しい人なんですよ」
「レインが……」
「彼自身も気付いてないみたいですけどね」
大地の神は苦笑いした。
あの馬鹿で猪突猛進でトラブルメーカーのレインがまっすぐで優しいだなんて。
「ん?何の話?」
「ふふ、ナイショ!」
「えー、教えろよぉー、なぁ?」
レインは頬を膨らませ、キリルの肩に腕を回して同意を求めたが、キリルは素っ気なく腕を退けた。
「それで、何の用なのですか?アメルを見に来たわけじゃないんでしょ?」
「そうだった!なぁ、大地の神さんよ!どうすれば戦いを終わらせられる?」
「……終わらせられる?、ですか」
「?」
大地の神はレインの言葉を鼻で笑った。
その態度にレインは怪訝な表情を浮かべた。
「おかしな人ね。悪魔は皆『終わらせてくれ』だの何でも人任せなくせに。やっぱりレインさんはおかしな人。でもそれがあなたの良いところかもしれない」
「……おかしな人で悪かったな」
「ふふふ。でも、どうしたもこうしたもありません。もうすでに星は廻りだした。戦いを終わらせるには、敵を滅ぼすしかない」
大地の神は静かに言った。
当然そんなことを信じられるか、とレインは突っかかる。
「オレは誰も傷つけるつもりは無いんだ!どうしてそんなこと言うんだよ!?」
「……時に現実は残酷になるんです。いえ、常かもしれませんね。……レインさん。あなたが弟くんを取り戻したとき、どんな犠牲を払いましたか?」
サニーがやって来たとき。その時は人間たちが侵攻してきた時だった。
レインを戦闘不能にし、迷惑をかけないようにしていたらしいが……。
「……体の自由」
「そうですか。動けなくなった……それだけでも大きな犠牲です。今あなたは幸せですか?」
「な、何だよさっきから質問ばっかり……」
「どうなのですか?」
大地の神に迫られ、たじろぐレイン。だが、すぐに口を開いた。
「幸せさ。不安になるくらい、な」
レインは辺りを見渡し、自信満々に答えた。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




