脱出・魔王城
第十一話 ヘラとアイザー
「……あった!あったぞ!」
大きな大きな城を探しまくって数時間が経過した。
三番目に探し始めた会議室に探し求めていた鍵があったのだ。
「それです!」
スグリさんは両手を合わせて喜んだ。
ここまで来るのに倉庫、庭、会議室ときたのだ。
俺たちが牢屋に戻ろうとすると、ウィルがツンツンとつついてきた。
「……アイザーはどこ行った?」
「そういや倉庫で別れたっきり姿が見えないな……」
「彼はカリビアさんの牢屋の前にいると思いますよ」
スグリさんがにっこりと笑う。
……あの人たち、どんな関係なのだろうか。
本には軍の同僚みたいなことしか書いてなかったし……。
「とにかく百聞は一見にしかずだな!牢屋に戻ろう!」
「……もう戻ってきたのか」
「アイザー!やっぱりここにいたのか!」
牢屋に戻ると、そこではアイザーが椅子に座って腕を組んでいた。
「遅かったじゃないか。随分話し込んでしまったよ」
「……話して、助けが来ていることがバレたらどうするつもりなんだ」
「その時はその時だ。場合によっては魔王を殺す。ウチはもともとここの人じゃないんでね。魔王がどうなったって構わない。それはカリビアも同じだと思うんだけどね」
アイザーはカリビアさんがいる独房を見つめて言う。しかし返事が返ってくることはなかった。
「カリビアさんがそんなことするわけない」
「どうだかね。カリビアは魔王をも越える力を持っている。まぁ軍の人たちほぼ全員と言えるんだけど……みんな『法』が怖いから反逆していないだけで、本当はいつも首を狙っていたんだよ」
アイザーは目を細めた。
____カリビアさんがそんなことするわけない。
ずっと頭の中で響いてる言葉。だが、事実だとしたら。……考えたくもない。
「ヘラさん、まず開けましょう。話はそれからだと思います」
「そ、そうだな……」
フローラに促され、俺はポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んで回した。
ガチャリ、と重い音がした。
「開いた……カリビアさん!!」
埃が積もった暗い暗い部屋の真ん中に、椅子に座って項垂れる一人の男がいた。
目隠しをされ、いつも付けている青いリボンは外され、長い髪がボサボサになっている。
『生き地獄』……その言葉がぴったりだった。
「……この声は……ヘラくん?」
「カリビアさん!動かないでください、その目隠しを外します!」
「……待って」
俺が部屋に踏み込むと、カリビアさんは制止の声をかけた。
「この目隠しには呪術が組み込まれている。迂闊に触ると……どうなるかわからない」
「……っ」
「呪術には呪術なんだが……レインは?」
「……行方不明です。人間たちが帰ってから一度も顔を合わせていません」
「そうか。……ノートから宣戦布告があったのは知ってるか?」
「え?宣戦布告?」
思いもよらぬ言葉に皆が真剣な顔になった。
カリビアさんはそのただならぬ空気を感じ取ったのか、頷き、話を続けた。
「あぁ。つい数日前のことだった。オレはいつものようにここでのんびりと過ごしていた。そしたら直接脳内にノートと名乗る男からメッセージが届いたんだ」
カリビアさんは震える声で話し続ける。
「『悪魔を全て殺す。邪魔なものは全て排除する』……ってね」
身の毛がよだつ、とはまさにこの事だろう。宣戦布告……まさかあっちから仕掛けてくるなんて……。
俺たちは恐怖のせいか、誰も言葉を発することができなくなっていた。
そしてカリビアさんはこのあと口を開くことはなかった。
__________
あれからカリビアさんを連れ出そうとしたが、黙って首を振って手を振り払ったため、仕方なく置いていくことにした。
「結局廻貌を見せれなかったなー」
軽く落胆するヘラさんを横目に、私は小型の蜘蛛を数匹生み出し、放った。
レインさんかスクーレさんに伝言するためだ。……どこにいるかはわからないが。
「だから言っただろ。カリビアに見せるのはまだ早いんだ」
廻貌は勝ち誇ったかのようにクルクルと回りながら言った。危ない。
「でもさ、これで良かったかもしれないな。下手に動くとその……ヌタスさんとかに襲われるかもしれないし」
ウィルは目を逸らしながら言った。
確かにそうだ。ここではあまり言ってはいけない言葉だと思うけど……それが正解かもしれない。
「襲われる、か。昔はあんな奴じゃなかったんだけどなぁ」
アイザーさんは腕を頭の後ろに回した。
「……ってなんでアイザーがいるんだ!?」
ヘラさんが牙を露わにして叫ぶ。
「いいじゃんいいじゃん!スグリに聞いたよ?最近面白いことが起こり続けてるって?」
「面白くない!!!」
「またまたぁ~」
喧嘩するほど仲が良い、というのだろうか。この光景。
私は城の廊下を、皆より前に歩くウィルの隣へと駆けた。
「ウィル……どうしよう」
「知らないよ。当初の目的も忘れちゃぁおしまいさ」
ウィルは尻尾を立てて言った。
当初の目的、つまりカリビアさんを救い出すこと。それも忘れ、アイザーさんと喧嘩している……でもそんな彼は今までいろんな困難から抜け出してきた。これはそれの礎かもしれない。
「それでも私はヘラさんを信じることにするよ。ウィルが何と言おうともね」
「……強くなったな、フローラ」
「え?」
「すぐ自害自害言ってたフローラとは大違いだ。それを評価するって言ってんだよ」
ウィルは尻尾をユラユラさせながら言う。
ウィルも昔はこんなこと言う人じゃなかった。ウィルもウィルで成長してるんだな……。
「フローラ、ウィル、アイザー。この先は謁見の間だ。気づかれないように進もう」
後ろでヘラさんが指示を出す。
……本当だ。あの部屋からとんでもない力を感じる……。
「あそこに恐らくヌタスさんが……」
「できるだけ手合わせしたくない相手なんだよね」
アイザーさんまでもが身を震わせた。
確かに出会いたくない。
「……この抜け道なら行けるかもしれないぞ」
「ウィルの体は行けるかもしれないけど、私の蜘蛛の体じゃ行けないわ。でも、私たちは元からここにいたんだし、ただ帰るって言ったら行けるかもしれないよ」
「おぉ!名案だ!」
ウィルは尻尾をワサワサと音を立てながら振った。
「それなら俺たちがここを通ったら行けるな」
「いや、俺たちじゃない」
「へ?」
ヘラさんの言葉にアイザーさんは目を瞑って口を開けた。
「ウチはこの尻尾のせいで入れないからな」
「あぁ……その魚みたいな……」
「魚ゆーな」
抜け道と尻尾を見比べる。ギリギリ入れなさそうだ。
「そういやアイザーはどうやってここまで来たんだよ」
「壁登りだよ。漁業で鍛えられたウチの足腰ナメんなよ」
「ナメないよ……。とにかく俺はここを通るから。外で落ち合おう。……よっと」
ヘラさんは抜け道の入り口に足をかけ、中に入った。
「ウチと競争だ!」
「あ!飛び降りた!ズルいぞ!」
「……誰かいるのか?」
ギャアギャア騒いでいると、謁見の間の扉がギィと開きだした。
「やべっ……!じゃあまたあとでな!」
ヘラさんが狭い抜け道を四つん這いで勢いよく進んでいく。私は金網を元に戻し、ヌタスさんが顔を出す前に何事も無かったかのように背を伸ばした。
「ヌタスさん、どうされたんですか?」
「あぁ、君たちか……飛び降りたって聞こえたんだが、何かあったのか?」
ヌタスさんは緑の髪を耳にかけ、手をボキボキと鳴らしながら歩み寄ってきた。
「いえ、ハーピーが飛ぶ練習をするために窓から飛び降りた、ということです」
「ふぅん」
____間違ってはいない。大丈夫!
「ヌタスさん。私たちは帰ります」
「そっか。気を付けて」
ヌタスさんはニコッと笑った。
よかった、何とか切り抜けた……!
「あ、そうだ」
「ぴゃいっ?!」
____心臓飛びかけた!
「へべれけ君持って帰ってくれないか」
「……はい?」
ヌタスさんは再び部屋に戻り、そしてすぐに戻ってきた。その手に引かれてきたのは……ヘッジさんだった。
「ヘッジさん!?」
「うわ、お酒飲みすぎだよ」
ウィルはいかにも嫌そうな顔をしている。
ヘッジさんはおぼつかない足取りでこちらにやってきた。
「うぅーん……」
「わ、わかりました!私たちがクノリティアに連れて行きます!」
「頼んだよ」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




