鍵を探そう!
第十話 アイザー現る
風避けにしていたマントを取り外し、潮風にさらされていたぴょこんと左右に飛び出たヒゲを綺麗に直す。
木製の舟なので安全用に履いていた長靴を放り出し、人魚の足のような尻尾を拭った。
いつものことだ。
オイラはいつもここで魚を釣っている。
しかし今日は何か変だ。
風の感覚が違う。不安を煽らせる感じだ。
「そうだ、あそこに行こう」
オイラ……いや、ウチは側に置いておいた三又槍を手に取り、『海』を背に歩き出した。
ウチが大っ嫌いなあの城に向かうために。
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前方に見えるは巨大な城。
そんな城の周りの草むらに隠れるのは……。
「……どうしてこんなとこに隠れるんだよ」
俺は隣にいる魔物たちに問うた。
ウィルはモフモフの尻尾を撫でながら、その鋭い目をこちらに向けた。
「こういうものだろ。救助活動は」
「いやいや、別に怪しい人じゃないし、知り合いだし」
「いいから。ほら、まず初めの試練は……あの門番!」
ウィルが指差す先を見ると、めんどくさそうにチョコを食べているアルファくんと、自信満々に門番をしているベータさんが立っていた。
……いつもの光景だ。
「試練ってほどじゃないし」
「いいから!ほら!」
そう言って俺の背中を押す。
すると草むらから出てしまい、ガサガサと音を立ててしまった。
その音にアルファくんが気づいたが、めんどくさがりなので見て見ぬふりをした。
「あっぶなー!」
隣でウィルが胸を撫で下ろすが、こうなることは目に見えていた。アルファくんはいつもこうだからだ。
「いつもの光景だからな?!これ!」
「いや、違うんです」
ウィルの隣にいたフローラがこちらを見た。
「違うって?」
「カリビアさんを捕まえたのは現魔王様ではなく、前魔王様のご子息様だと聞きました。彼は過激派だそうで……なので、非常事態と同じくらい警戒しているらしいのです。私たちは秘密の出口から出ましたが、普通に出ようとしていたら今頃……」
フローラは身をこわばらせた。
非常事態……昔、ハレティが攻めてきたときと同じようなものか。
それならいつもとは違うだろう。
あの時は誰もがところ構わずって感じだったからなぁ……。
「わかった。慎重に行こう。お前たちを信じてるよ」
俺はしゃがんだまま、秘密の出入口に向かった。見つからないように、そーっと、そーっと……。
「こんにちは」
「!!!?!」
突然何者かに話しかけられ、俺はビクンッ!!と体を震わせた。
____し、心臓出るかと思った……。
ぎこちなく後ろを見ると、そこには魔王の側近であるスグリさんが立っていた。
「待ってましたよ」
「え?ま、待ってた?」
「スグリさん!」
俺は腰が抜けたように座り込んだ。
その隣でフローラが元気よく声を上げる。
「どうして?」
「実はカリビアさんを助けてほしいとお願いしたのはスグリさんなんです」
「は?!」
俺が整理のつかない頭をフル回転させていると、スグリさんが腕を掴んだ。痛い。切実に痛い。
「とりあえず中に入ってください。詳しい話はそれからです」
「えっ、腕折れません?」
「ヘラさん、心配するとこそこですか……?」
フローラは呆れた表情を浮かべる。
そして俺は何も言わずにスグリさん、ウィル、フローラと共に城へと歩いていった……。
「ここです」
スグリさんが顔パスで部屋に入ると、辺り一帯に重苦しい雰囲気が漂っていた。
どうやら今まで牢屋として使っていた場所をカリビアさん用に少し変えたようだ。
それにしても……。
「……暗いな」
「ライル様は元副隊長用に改造するように命令されました。カリビア……に光を与えないためだそうです」
スグリさんは悲しそうに説明した。
「光を?」
「目を完全に機能停止するためです。詳しいことは彼から聞いてください」
「……あなたたちが何をやりたいのかはわからないですけど、カリビアさんはそれで救われるんですか?危害は何も加えてないんですか?」
「……っ」
スグリさんは一瞬言葉に詰まらせた。
……つまりそういうことか。
「くそっ……!」
「とりあえず鍵を探しましょう」
スグリさんは人差し指を立てる。
……って、今、なんて?
「えっ、鍵無いの?!」
「裏切り者が出ないように、鍵をかけたら自動的にテレポートするように設定しているんです」
「要らねぇ!その機能要らねぇ!!」
「とにかく探す以外に突破口は見つからないようです……」
フローラは扉に手をつけて呟いた。
「あぁ、もう!こうなったらヤケクソだ!探してやる!!」
そして俺は拳を突き上げて叫んだ。
……本当は嫌だけど。
「その意気です!では、まずは……」
スグリさんが笑顔で指を鳴らす。
すると俺たちはテレポートしていた。
……ここってまさか。
「わぁ、物がいっぱい」
フローラが驚いた声をあげる。
認めたくない現実を前に俺はため息をついた。
「あのー、スグリさん?ここってまさか倉庫とかいうところですよねぇ?!」
「物といえば倉庫だと思いまして」
「いやいやいや!ハードル高くないですか?!」
ここまで叫んで俺はハッと気づいた。
スグリさんはリーバトラーという種族。
頭脳が働くべき仕事を筋力がほぼ掻っ攫ったとんでもない種族だ。
いわゆる脳筋。
その言葉がぴったりだ。
「どうしたんですか?」
「えっ、な、なんでもない!探そう!いえ、誠心誠意真心込めて探させてもらいます!!」
俺が駆け足で倉庫の奥に行こうとした、その時だった。
「別に行かなくてもいいよ」
「!!」
突然背後から声が聞こえた。
バッと振り向くと、そこには獣の耳を持ちつつ、魚の尾を持った男が立っていた。
「行かなくてもいいってどういうことだ!?」
「そのままの意味さ。ウチがカリビアを助ける」
「おまっ……カリビアさんのことを知って……?!」
「ウチのこと何だと思ってるんだ。ウチはアイザー。カリビアと同じ軍の者だ!」
「アイザー?!」
アイザーだって?!生きていたのか……というか今さらなぜここに戻ってきたんだ?
「アイザーって……前に言ってた戦士のことか」
「廻貌!勝手に出てくるなってあれほど____」
俺が廻貌に手を伸ばした瞬間、ビリリッと電撃が走った。
思わず手を引っ込める。
「ウチに刃向かおうとしたな?」
「え?!俺はただ廻貌を仕舞おうと……」
「廻貌?廻貌だと?地底の豪剣がなぜここに?」
アイザーが睨む。その鋭い目付きに背筋が凍った。
「俺だって知りたいよ!急に家に墜ちてくるんだもん!オマケに俺の剣まで壊してくれちゃってよぉ……!」
俺は目蓋に焼き付いたあの光景を思い出しながら言った。
「む?おかしいな……地底のものなのに空から降ってきたのか?」
「しょうがないじゃないか。事実は事実だ」
俺はアイザーを睨む。
すると、後ろでフローラがポツリと呟いた。
「……天狗……」
「え?天狗?それって……」
「妖怪、天狗かい。確かにアレの風力なら廻貌でも耐えられんだろうなぁ」
アイザーは廻貌を見る。廻貌はやはり不満そうに刃先をアイザーに向けた。
「うるさい。まず妖怪が地底にいるなんて聞いたことない」
「そうだね。でも天狗ほど強力な妖怪なら可能かもしれないぞ?」
「……アイザー、お前は何様なんだよ……」
廻貌は刃先を少しも動かさない。その気になればアイザーに楯突くことができるということだろう。
アイザーはその赤黒く輝く切っ先を見つめながら鼻で笑った。
「ウチはただカリビアの側にいたいだけだ。さっきも言っただろ?」
「……もうやめろ、廻貌。早く鍵を探そう」
俺は廻貌を引っ張り、無理矢理異次元に突っ込んだ。
一方アイザーは後ろを向く。そして彼は肩を震わせた。
「……アイザーさん?」
フローラとウィルが心配そうに彼を覗き込んだ。
「……スグリ、といったな?場を乱してすまなかったな」
アイザーがスグリに魚を押し付けながら呟いた。
スグリは何が起こっているのかがわからず、目を白黒させる。
そしてそのまま倉庫から出ていった。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




