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始まる異世界生活⑧

今日まででブクマ3件いただきました。

ブクマをポチっとしてくださった方々に感謝です。

初投稿作品ですのでとても嬉しいです!

続編投稿のモチベーションになります。

 

 ガサガサ――ガサガサガサ――


 見ると、そこには愛らしいトカゲたちが1、2、3、4、5……10匹近くの群れで現れた。

 1匹目のトカゲは、あんまりかわいい目で見つめてくるもんだから殺すのにかなり躊躇(ちゅうちょ)したが。時給計算を終えた俺からすれば――


「金だあああああ! 金がいるぞおおおおお!」


 ハルが少し引き気味だったが、2人で追い回して8匹のトカゲを討伐することに成功。

 俺は剣の有効的な使用方法を見つけ、8匹中5匹を仕留めた。最初の1匹を合わせれば6匹だ。

 俺は愛着がわいてきた剣の柄を撫でる。その剣の鞘からは血がボタボタと滴り…… それを見てハルが青い顔をして言ってきた。


「その、なんでそんなに剣の外側が血で汚れているんです?」


「ああ。これか? これはな――」


 俺は新たに発見した剣の使い方をハルに説明した。

 この剣の重さは、俺以外の対象には数倍になることに気づいた。俺はそれを利用し、トカゲの真上からただ剣を落としたのだ。俺の手を離れた剣はトカゲめがけて急降下し……その重さをもってトカゲをグッチャリと圧死させる。

 つまり、剣を落とすだけなのだが。


「なるほど……街に帰ったら手入れしないと()びちゃいますからね?」


「おう。アドバイスセンキューな」


「はいっ。その、後でキョウヤさんの国について詳しく聞かせてもらう約束、忘れてないですよね?」


 ハルは無邪気に歯をのぞかせて言った。

 この子。無意識にやっているのだろうか。男心くすぐりすぎ!


 俺たちはそれぞれトカゲを背負って、森に入る前に設置した光弾を頼りに森を出た。

 街へ向かう帰り道。

 俺は今回の報酬のことだけを考えていた。

 今回倒したトカゲは全部で9匹だから、報酬は4860ソフィア。手数料を引いたうえでの俺の取り分は1314ソフィア。昼の予想から468ソフィアも増えた。


「へへっ」


「ん? どうしたんですか?」


 俺は自然に笑みをこぼしてしまったようだ。俺が突然笑ったからハルに引かれると思ったが、何やらハルもニヤニヤしている。彼女も同じ考えらしい。


「働くってなんかいいな」


「急に何言ってるんですか。まあ分かりますけど」


 二人で笑いあいながら街まで歩く。

 めっちゃ疲れたが、こんな生活も悪くない。







 俺とハルはギルドの受付でハットにクエスト完了報告をした。

 ハットは少し驚いたように、討伐したトカゲを数える。


「すごいです。あの大森林でこれだけの量に出くわすなんてそうそうないことですよ。あ、お肉は隣の換金所で買い取ってくれるので、後でもっていってくださいね」


 ハットは言い残してカウンター奥の金庫からこの国の通貨、ソフィアの入った袋を持ってきた。大小二つで、小さいほうが俺のだろう。


「今回の報酬です。キョウヤさんの報酬には会員証も入れときましたから。また明日も頑張ってくださいね!」


「「おお~」」


 俺とハルは声を合わせて歓声を上げる。そんな俺たちを見てハットがひらめいたように提案してきた。


「お二人とも、パーティを組まれてみてはどうでしょう?」


「パーティっていうと、あの冒険者仲間みたいなやつか?」


 俺とハルは互いを見合う。

 俺としては断る理由がない。むしろハルとこれからも仕事ができるなら願ったり叶ったりだ。

 ハット、お前はいつもナイスな働きをする。この前の飯を奢らせる話は無しにしてやろう。

 さらにハットは追い打ちをかけるように。


「パーティを組むとお得なことがあるんですよ? 例えば手数料の減額や食堂の割引とか。あと年末の感謝祭にも参加できるようになります」


「まじか!」


 俺は目からうろこだ。

 俺はハルにありったけの勇気を込めて、一世一代の告白のように申し込む。


「ハル。俺とパーティを組まないか!」


 ハルは何かをためらうように、ぼそぼそと呟く。


「……? なんだって?」


「……報酬……7対3……」


 つまり、俺がハルとパーティを組む、といかなる報酬も3割しかもらえないと?

 安い! 安すぎる‼


「よろしくおねがいしまっす!」


 俺はよろしくと手を差し出す。

 ハルはおずおずと俺の手を握り返して、よろしくおねがいしますと言ってきた。

 ああ、なんて柔らかい手だ。本日4回目。嬉しすぎる。

 俺はハルの御身に感謝しつつ、ハットから報酬を受け取る。


 俺が報酬が入った袋から硬貨を一枚取り出して眺めていると、ハルはトカゲ肉を換金してくると隣の換金所に出かけて行った。


 俺は袋から報酬を全部取り出し総額を確かめる。


 1000ソフィア金貨1枚と、100ソフィア銀貨1枚。1ソフィア銅貨4枚。――あれ、総額1104ソフィア。俺の計算から210ソフィアも足りないんですけど。


 俺はハットの元へ行って問いただした。


「おいハット。俺の報酬が足りないぞ。どういうことだ」


「あれ。朝お教えしませんでしたっけ。手数料の300ソフィア分が引かれていますから」


「なんでそうなるんだよ。それを考えても報酬は1314ソフィアだろ」


 俺がそこまで言うと、ハットははたと気づいたように言う。


「今回のクエスト責任者はあなた……受注したのキョウヤさんだったので、手数料はあなただけから引かれるんです。でも安心してください! パーティを組むと、手数料はそれぞれから均等に頂くようになりますから」


「ま、マジかよ……」


 俺はカウンターの前で崩れる。

 ギルドの営業終了時刻である午後7時が近いせいか、冒険者の数は少なくギルドには迷惑はかからないが、ハットは慌ててカウンターから出てきて俺を傍のテーブルに座らせた。


「安心してください。ほら、ハルさんが帰ってきましたよ。今の季節はトカゲ肉に脂がのっていて高値で売れるんです」


「……へ?」


 ハットの慰めに俺が素っ頓狂な声を上げていると、俺の目の前に報酬が入った袋が置かれた。

 なんだこれ。と袋をジロジロ見ていると、ハルが嬉しそうに言った。


「今はトカゲ肉の相場が上がっているみたいで、100グラム250ソフィアで売れましたよ!なんと9匹売って16万4250ソフィアでしたっ」


 ハットがよかったですねと言わんばかりに、背中をポンポン叩いてきた。この柔らかな刺激が温かすぎる。目の前のハルの笑顔もまた……

 俺は目頭が熱くなり、勝手に涙を流していた。

 ハルとハットが慌てて何かを口にするが、まったく聞こえない。


 それからのことはよく覚えていない。

 俺は結局泣き止むことができず、トカゲ肉の報酬の3割と、クエスト報酬の3割を握りしめてギルドを後にした。


 二人とも俺を心配していた。心配をかけさせたのは申し訳ないが……

 それでも俺はこの涙の衝動を抑えられなかった。

 働くことを、俺は舐めていた。

 今は袋を開けるたびに目に入るソフィア硬貨に涙と鼻水が止められない。

 はたから見れば一発で不審者確定だろうが、この感動を誰が止められようか。

 俺は泣きながら、昨日一夜を明かした丘へ向かった。

 あまりの幸福に飢えも忘れて。


 こうして俺の異世界生活は幕を開けた。

 この時の俺は、ハルとの出会いと労働の幸福で魔王討伐のことをすっかり忘れていた。

 神による定めなのか、これから先には珍奇な出会いや不可思議な事件が待っている。その最奥にいるのは魔王。

 俺には平穏な異世界生活なんて、用意されちゃいなかった。あのくそじじぃ(かみ)め。




神に殺され異世界転生。第一章、始まる異世界生活完結になります。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

これからもちょこちょこと続編を投稿しようと思います。

弱いのか強いのかわからない主人公、天ヶ瀬京也をよろしくお願いします。

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