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始まる異世界生活②

 

 首をかしげる俺を見て、青年は説明してくれた。


「どこのギルドでも、そこのギルドに所属している証明がなければ仕事を受けることができません。だから会員証が必要になるんです」


「なるほど。じゃあ新規登録で頼む」


「い、いえ。その~。――あっ。ギルドに登録するとですね、他のギルドで仕事をできなくなるんです。原則、冒険者が所属できるギルドは一つだけですから。慎重に選ばないと——」


 急に焦り始めた青年。

 俺が不思議に思っていると、お姉さんが痺れを切らしたようにカウンターを蹴った。


「「ひっ⁉」」


 俺と青年とでおかしな声を上げてしまう。

 このお姉さんさっきから怖いんですけど。


「あーだるい。私が代わりに言ってやるよ腰抜け」


 お姉さんは青年にそう言うと、俺をキッと睨んで。


「ギルドってのはな、所属する冒険者の質で位が決まるんだよガキ。ここはフレンシア王国でも有数の名ギルド、『ガーディアン・レーザ』だ。おめえみたいな弱そうなの抱え込んでも、こっちは仕事が増えるだけで得がねえんだよ。貴族だろうが、ここじゃ権力なんて通じねぇ。お前たちはここが嫌いなもんだと思ってたよ。それが……冒険者になる? 笑わせてくれるね」


 ど、どうしよう。おしっこ漏れそう。


「……すみません、失礼しました」


 俺が背を向けてギルドを出ようとすると、例の青年が果敢にもお姉さんに反論した。


「ライラさん! なんでそんなヒドイこと言うんですか⁉ 仮にも相手は貴族、思ってても言わないのが礼儀でしょうし、ギルド内の立場はともかく、冒険者にはギルドを選ぶ権利があります!」


 青年よ、お前も俺のこと弱そうって思ってたんだな……貴族である前に人に対する礼儀があると思うよ…… だがでかした青年。あのお姉さん、ライラさんっていうのか。また会う機会があったら呼んでみよう。


「チッ。めんどくせえなお前。そこんとこあるだろ……暗黙の了解とかなんとか。どう見てもあいつは弱いだろ!」


「誰だって最初はそうです! それに、彼はここのギルドに入りたいと言いました。会員登録ぐらい別にいいでしょう⁈」


 いえいえ。別にそこまでここに入りたくて来たわけじゃ。

 俺が丁度出入口の扉に手をかけたとき、ライラが不本意そうに止めてきた。


「めんどくせぇ。あ~めんどくせ。ほらこっち来い。会員登録はあっちだウスノロ」


 さっきから人のことグズだのウスノロだの。……あれ、何だろうこの気持ち。次の罵声を待っている自分がいるっ。

 新しい自分を見つけた感慨を胸に、ライラさんの後を追ってギルドの奥へと入った。


 奥の部屋はさっきまでいた広場とは違い、質素な作りでテーブルと二脚の椅子しかない。


「さっさと書類書きな」


 ライラさんは棚から二枚の紙を放り出す。少し茶色みがかった分厚い紙だ。

 俺が席に着くとライラさんは向かいの席にドカッと座る。


 ……ペンが無いんですが。


「さっさとしろっつてんだろーが」


「すっすみません! う……あの、ペンはどこでしょうか?」


「は?」


「ペ、ペンを……」


 明らかにライラさんが機嫌を悪くしている。

 俺何か悪いこと言ったか?


「お前、こんなことも知らねーのか。常識知らずにも限度があるだろうが。これだから貴族は……やっぱお前帰れ」


「そ、そんな――」


 せっかく美人(ライラ)のいるギルドに入れると思ったのに。

 すると、突然後ろの扉が開かれた。入ってきたのはあの青年だ。


「ライラさん。気になって来てみればまたそんなこと言って。なんで優しくできないんですか!」


「な、なんだよハット。こいつ絶対使えねーって」


「関係ないです。さ、この魔法紙の使い方を教えてあげてください」


「う、わかったよ……」


 ハットとやら。さっきからライラさんの手綱を握っているような…… なんかうらやましいぞ。弱そうな顔してるくせに。

 自分のことは棚に上げてそんなことを思っていると、


「おいガキ、一回しか言わないぞ。よく聞け」


 青年――ハットに丸め込まれたライラさんが紙を手にして説明を始めた。

 この紙は魔法紙とやらで、魔力を込めながら頭で思ったことを書き綴るものだそうだ。魔力を込めるというのが分からないと言うと、呆れながらもライラさんが付け加えて説明してくれる。


「えーとだな、こう、手先に魔力を送ってバーンってしてシュピーンってやるんだ」


 ライフさん、説明へたくそだ。かわいい。


「やってみろ。バーンからのシュピーンだ」


「はあ……ライラさん。それじゃわかんないです……」


 ハットのため息にライラさんが顔を赤くして怒り出す。


「んっだとゴラ。年下のくせに生意気言ってんじゃねーよ! だったらお前が説明してみろよ!」


 ライラは肩を上下させて、部屋を出て行ってしまった。

 残された俺とハット。俺はすかさず。


「お前ライラさんと仲良くね? 付き合ってんの?」


「なっなんでそうなるんですか⁈」


 ハットは顔を赤くしてかぶりを振った。



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