プロローグ
なろう初心者の作品です。
この小説で勉強しつつ、面白おかしい作品をつくれたらなと思います。
俺は今、神聖な空気に満ちた神殿のような場所にいる。
そびえ立つエンタシスの柱や、降り注ぐ光が美しい。本当にヨーロッパの方の神殿にいるのでは、と思うほどだ。それほどまでに目の前の光景には現実味がある。だが今はそんなことはどうでもいい。
「あの、さっきホームで俺にぶつかったのあなたですよね?」
俺は目の前の男――神を自称する男に問い詰めていた。
確かにこの男は、白と金を基調とした豪華なローブを着ているし、地に着くほどの白髭を蓄えていていかにも神様らしい見た目をしているが……俺はこいつに殺された。朝、高校へ行くために駅のホームで電車を待っていた時だ。
「…………」
神は俺の質問に答えず、石造りの巨大な椅子からこちらを眺めている。
「あの、さっきホームで俺にぶつかったのあなたですよね?」
さっきから同じ質問を淡々と繰り返している俺に、ついに神が折れた。
「大変っ申し訳ございませんでしたあああぁぁ」
神は流れるように、大変素晴らしい土下座を実行する。
こいつ認めやがった。
「仮にも、神様だとかほざいてたのにこんなことしていいんですかねぇ」
「……返す言葉も、ございません……」
「どうしてくれるんすかっ。俺、昨日女の子に告られたんですけどちょっとおおお!」
土下座する神の肩を掴み、俺は怒りにまかせてゆっさゆっさと揺らす。
だって許せないじゃん。俺、今日からリア充になる予定だったのに。
「それだけじゃない! 今日届くはずの高かったパソコンとか! 楽しみにしてた今日配信開始のオンラインゲームとか! 今すぐ生き返らせろボケ‼」
「で、できません……ううっ……うっ…………」
俺の怒りにあてられ、なんと神が泣き出した!
「え、神のくせにそんなこともできないの?」
素で問い返す俺に、神は土下座のままどんどん小さくなる。威厳も何もあったもんじゃない。
そんな神を見下ろしつつ、俺はつい先ほどの出来事を思い出す。
なんてことはないいつもの日常。俺は駅のホームで、告白してきた子に何と声をかけようか考えてソワソワしていた時だ。視界の端に電車のライトを感じたまさにその時、何者かにぶつかられて――俺は線路に落ちた。
思考が真っ白になる中、俺は確かに見たのだ。
……スマホ片手に、蒼褪めた顔で俺を見る神を。
……………「かみ」と書かれた腹の立つティーシャツを着た神を。
そうして目を覚ましたらここにいたわけだ。
思い出したらイラっと来たので、土下座する神を引っ叩いてやった。うわあああああああぁと、鬱陶しくも泣き喚きだした神(笑)。見た目だけは威厳のある神なので、余計に見てられない。
神があんまりに泣き喚くものだから、俺はいったん落ち着くことにした。
「で? 俺はどうなるんです?」
「…………はい。ご説明します」
万引きで捕まった中学生のように、石の椅子に座りなおした神は静かに語りだした。
神曰く、とある世界で魔王が戦争を始め、たくさんの人が死んでいる? と。
神曰く、ほんとは私が戦わなきゃいけないんだけど、めんどくさいじゃん? と。
神曰く、『リア充爆発しろ』、と。
神曰く、今からそっちで転生して魔王と戦ってくれ、と。
神曰く、神パワーでサポートするからお願い! と。
神曰く、ちなみに、その世界は俺が楽しみにしてたゲームと似ている、と。
なぜに疑問形? とか、今ふざけたことを言った? とか気になる点があったが、なんだか楽しそうだ。
俺は神に質問した。
「その世界って、レベルとかステータスとか、あと魔法とかあったり?」
神は髭を撫でながら、厳かに頷く。
「いかにも……そして、おなごは皆めんこいぞ」
「マジですか」
「マジじゃ。わしがそなたをサポートしてやる。ハーレムでもなんでも作るがよい(お前には無理じゃろうがな。まったく、世の中こんな暴漢を好きになるものがいるんじゃのう)」
ごめん。俺に好きだと言ってくれたあの子。そういえば名前も覚えてなかった。俺は異世界でハーレム目指して頑張るので、君も新しい人を探して幸せになってね。
――あれ。俺ってけっこうクズじゃね? まいっか。
お父さん、お母さん。俺は向こうで幸せになるから。心配しないで弟を立派に育ててください。あ、机の二番目の引き出しは解放厳禁だよ。
俺は、心の中で元居た世界に感謝と別れを告げ終わる。それを察してか、神がこちらに目線を向けてきた。俺はそれに目で答える。
「いいじゃろう。そなたには、わしの力の一部を授ける。まずは冒険者となり、仲間を集めるのじゃ」
「おお、ほんとにゲームのチュートリアルみたいだ」
まだ見ぬ異世界にワクワクが止まらない。さっきは神に怒ったりもしたが、思えばそんなに未練もない。
「たぶん魔王を撃破してくれ。期待しておるぞ」
「ひょっとしなくてもバカですよね。そんな言い方聞いたことないんだけど」
神は俺の言葉を無視して椅子から立ち、右手を突き出した。俺が何をするのか注目していると、神の右手が輝き始める。
虹色に輝く光の粒が凝縮し、やがて剣の形になった。光が薄まると、素人目でもわかる見事な一振りが顕現する。
神は右手におさめた剣を、受け取れと差し出してきた。
柄から鞘まで重厚な黒色で、青く発光する紋章が刻まれた片手直剣。
俺はそっとそれを受け取ると……
「重っ⁉」
俺は剣の重さに驚愕した。神はそんな俺をよそに、何かブツブツと唱えている。
「あ、あの……これ重くて振れないんすけどっ」
「では旅立つがよい。そなたが勇者になることを心から望んでいる」
俺が剣に文句をつけている間に、いつの間にか足元に魔法陣が広がっていた。
あれ、このまま送り出される感じ?
「ちょっと! 待って! この剣俺には使えな、ちょ、あああぁ~~」
足元の魔法陣が輝きを増し、視界を覆うほどまぶしくなる。薄れる視界の先で、神は俺にヒラヒラと手を振っていた。
話聞けよじじぃ。
次の瞬間、目を開けると、そこには神殿とは全く違う世界が広がっていた。
青、赤、白、黄色。俺のように黒髪黒目のような人はなく、道行く人は皆カラフルな髪や瞳をしている。
重そうな袋をたくましい腕で運ぶ、二足歩行する牛――獣人かな?
黒いマントにとんがり帽子の女性――あれ絶対魔法使いだ。
全身毛むくじゃらで大槌を担ぐ小柄な男――ドワーフってやつか!
「ほ……」
俺は変な声を漏らしてしまった。
本当にゲームの世界に入り込んだようで、感動半分、興奮半分。鳥肌が立って、頬が熱く上気する。
石造りの二階建ての建物が軒を連ね、屋根は赤い天然スレートで統一されている。両開きの小窓には小さなベランダが据え付けられ、色とりどりの花が顔をのぞかせている。遠方にはいくつもの尖塔からなる教会らしきものが見えた。
次第に鼓動を強める心臓付近は熱く滾るのに、手先足先はどこか夢見心地な感覚。日本で学生をしていては……地球で生を全うしていては見ることのなかった世界。
俺は、この時ばかりは神に感謝した。
天ヶ瀬京也、一七歳。身長体重も平均的で目立った特徴は無いけれど、強いて言えばイケメンだ(自称)。
特技は人間観察と五〇メートル走。
この新しい世界で頑張ります。
読んでくださった方の感想、アドバイスをお待ちしています。
改めて、初心者ですがよろしくお願いします。