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物語1

作者: プレアデス

私は志穂、生まれたときから可愛らしかったらしいから、この名前が付けられた。

両親から溺愛され、すくすくと17まで育った。

学校でも沢山の友人に囲まれ、何不自由無い生活を送っていた。

春の中盤、とある伝染病が蔓延した。

その病気は一度かかってしまうと治るまで時間がかかってしまい、最悪、死にいたるという。

私の友人もその伝染病にかかってしまい、学校を休んでいる。

しばらくは町中で騒がれ、外出する人が減ったという。

ある日、私は朝起きると、体が重く、気だるげになってしまった。

学校を休み、病院で診察を受けると、どうやらその伝染病にかかったらさしい。

元々、体がそこまで強くなかった私は、その病気にやられてしまい、死にそうになった。

両親が必死で私の病気を直そうとしているが、手遅れだと思う。

何せ私が諦めているほどだからだ。

その夜、私はとある夢を見た。

そこは暗く、まるで洞窟や地獄の底に来ているような感覚だった。

そこでは高価な着物を着た鬼と、貧相な服を着た鬼がいた。

『そろそろ死にそうになっている娘がいる、お前はその娘の魂を取ってこい』

『そんな……私はまだここに配属されたばかりで……心の準備が…… 』

『黙れ、お前に拒否権はない。明日にでも魂を取ってくるんだ、これは命令だ。』

『……了解しました』

『分かれば良い、因みに娘の名前は志穂という、分かったら行ってこい』

そのやり取りを聞いたあと、私の顔面は蒼白になった。

明日にでも私の魂は抜き取られて死んでしまうのかもしれない。

私は、眠りながら考えた。

どうすれば助かるのか、どうすれば生き残れるのか。

私はひとつの策を思い浮かび、実行に移した。

それはご飯を用意することだ。

もしかしたら、鬼はご飯を食べて満足して帰ってくれるのかもしれない。

次の日、私はスマホを取り出し、遺書と、感謝のメッセージを書いて、夜を迎えた。

不吉な夜、私は中々眠れないまま、深夜を迎えてしまった。

すると、ゆっくりと扉が開き180cm位の鬼が現れた。

鬼は少し困った顔をしながら、話しかけてきた。

『……あのご飯はお前が用意したのか?』

『ええ、そうよ。』

『……そうか、ありがたく貰ったよ。』

『私は今夜、死んでしまうのよね。』

『……そうだ。』

すると鬼は黙ってしまい、うつむいた。

『しかしお前はご飯をくれた、お前の魂はなるべくなら取りたくない。』

『……』

『しかし、あの男にも逆らうことができない。』

『私の魂じゃないとダメなの?』

すると、鬼は考え込んでしまった。

『いや……同じ名前を持つ、しほ、がいればなんとかなるのではないか?』

『それなら知っているわ、私の友達にいるの。』

『本当か!ならばその、しほ、の魂を取ろう』

と、言うと鬼は消えてしまった。

これで私は助かった、友達の、しほ、には残念だけど私の代わりに魂を取られてしまうしかない。

私は安堵し、ゆっくりと眠りについた。


鬼は空を飛び、しほ、の元にたどり着くと魂を抜き取ってしまった。

『よし……これで……』

鬼は急いで地獄へ戻って高貴な男に報告した。

『只今、志穂の魂をとって参りました。』

『……貴様、それは誰の魂だ?』

『えっ?だから志穂の……』

『この私の目を誤魔化す気か‼』

『っ!』

その鬼の圧力はとても強く、足がすくんでしまうほどだった。

『私が知らないとでも思ったか‼この阿呆が‼貴様は志穂の家に行き、飯をもらったあと、その女の慈悲に負け、しほ、の魂を取ってきたのだろうが‼』

どうやらこの鬼には全てお見通しだったらしい。

『今すぐ本物の志穂の魂を取ってこい‼』

威圧に負け、鬼は再び志穂の元へたどり着いた。

そして寝ているのを見計らい魂を取った。

それを届けると鬼は満足そうな顔で頷いた。

『まあ、良いだろう。しほ、お前もそろそろもとの体に帰るが良い』

しほ、は頷き、もとの体へ帰ろうとすると、時間のずれのせいか自分の体の火葬が行われていた。

しほ、は悲しみ、再び鬼の元へとやって来た。

『私には帰る場所がありません、私は、どうすれば……』

すると高貴な男は考え、閃いた。

『よし、ならばお前は志穂の体へ乗り移るが良い。』

『え……』

『志穂の体はまだ無事だ、火葬もまだ行われていないし、腐敗もしていない、第二の人生を歩むなら今のうちだ。』

そう鬼が言うと、しほ、は飛びだし、志穂の体を見つけ乗り移った。

息を吹き替えしたことに両親が気づくと、たいそう喜んだ。

『生き返った、良かった。』

『申し訳ありませんが、私は二人の知っている志穂ではありません。』

『何をいっているんだ、お前は志穂ではないか。』

と、ずっと張り合いをしてしまい、ついにしほ、は家を出ていき、自分の家に帰った。

『ただいま、父さん、母さん。しほ、だよ』

『そんな馬鹿な、しほはもう生き返ってこない、二度と帰ってくるものか。』

最初は心を痛めたがそれでも負けじと、事のいきさつを説明すると、両親は納得してしまった。

『しほ、が……しほが……生き返った……もう会えないと思っていたのに……』

両親がは涙を流し、肩を抱き合った

『しほ、お前は本物のしほですよ、』

『父さん……母さん……』

すると数日後、風の噂を聞いた志穂の両親がやって来た。

こちらの家族にも事のいきさつを説明すると、納得しれくれたようだ。

『なるほど……体は私たちの志穂でも、魂はしほ、なんですな……』

『だけどね、しほちゃん、たまには私たちのところへ遊びに来てくれると嬉しいんだけど……』

『もちろんです!』

その後生まれ変わったしほは二人の両親を持ちながら末長く暮らしたそうです。


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