「夢」
自分が主宰している劇団パラダイスバナナの処女作です。
三人の幼馴染が夢について熱く語り合う作品にしてみました。
せっかくなので台本をそのまま載せてみる事にしました。よろしくお願いします。
声劇「夢」
登場人物
・手塚 …才能の無い漫画家志望
・志村 …売れないお笑い芸人
・田中 …夢を持ってないフリーター
設定…全員20代後半 高校の時からの友人
ナレーション(田中)「ある暑い夏真っ盛りの昼間、僕は売れないお笑い芸人の志村と
漫画家志望の手塚の住むアパートへと遊びに行く事になった。
二人共、高校の時からの友達で僕の大事な親友だ。
2人は夢を追っていてすごく羨ましい。
なぜなら、僕は夢を持ってないからだ…。」
※セミの鳴き声
手塚「よーし、もうすぐ新人賞募集の締め切りだ
今日中には投稿する為の漫画仕上げるぞ
しかし、暑いな…。いかんいかん、集中モードに入らなければ
心頭滅却すれば火もまた涼し…」
※チャイム音
手塚「げっ そういやあいつら来るって言ってたな 仕方ないな
はーい、どうぞー」
※ドアが開く音
志村「お邪魔しまーす。おっす、生きてるかー」
田中「お邪魔します。今日も暑いね。」
手塚「いらっしゃい。まぁ適当に座ってくれ。
まぁ少し散らかってるが…」
志村「うおっ、相変わらず汚い部屋だな
漫画と失敗した原稿で床が見えねぇ」
田中「少しは掃除ぐらいしなよ。
整理整頓しないと大事な物も無くなっちゃうよ」
手塚「忙しくてな、なかなか掃除できないんだよ
ほら、そこなら空いてるだろ」
田中「それじゃあ失礼して。」
志村「座れたのはいいけどさ、この部屋暑くね」
手塚「わがままばっかりだな、お前ら…。
悪いが今月は金欠で電気代払えなくなるから節約してるんだよ
まあ新人賞の締め切りが近いんだ、静かにしててくれよ
俺は原稿の続きを書くから。」
田中「あっ、なにか手伝おうか」
志村「おいおいやめとけ、あいつは昔から何でも自分でやらないと気がすまないタイプだったろ」
田中「そうだったね それじゃあ漫画でも読むかな」
志村「おっ、さすが手塚ちゃん この漫画の新刊もう買ったのか
俺も漫画読んでるから、何かあったら呼んでくれたまえ」
手塚「その漫画買ったばかりだから汚すなよ。」
田中「金欠になる理由って漫画ばかり買ってるからじゃない」
手塚「資料だ、資料。さて、原稿書くから絶対に静かにな」
※原稿を書く音・セミの鳴き声
志村「ぶっ…あっはっはっは」
なぁ田中ちゃん、ここのギャグシーンやばくね」
田中「えっ…志村のお笑いのツボは相変わらずわからないな…」
志村「だってよ、ここ主人公が裸になって学校を駆けまわる所とかヤバイだろ
お笑い芸人の俺でも絶対こんな事できないぜ あっはっはっは」
田中「志村はこれぐらいしないと売れないんじゃないかい」
志村「なんだと田中ちゃん この野郎」
※ドタバタしている音から机を叩く音
手塚「あーもーうるさいな 静かにしろって言ったろ
締め切りが迫ってるんだ、デビューがかかってるんだよ」
※何回も机を叩く音
手塚「お前みたいにいつまでもつまらない事してるんじゃないんだよ
俺は新人賞を取って、連載を持って、漫画がヒットして、アニメ化して、映画化とかもしちゃって
グッズも馬鹿売れして、一生遊んで暮らせる分まで金を稼ぐんだよ
今のこの生活から抜け出す為に それをお前は邪魔しに来たのか」
※胸ぐらをつかむ音
志村「おいこら、つまらねぇだと お前の漫画だってつまらねぇじゃねぇかよ
大体お前が今まで書いてきた漫画なんて海賊王になるってやつか玉を7つ集めると夢が叶うやつのパクリじゃねぇか
それが今度はなんだ」
※原稿を机から拾い上げる音
志村「宇宙海賊バトルマンガって完全に人気作品を合わせただけじゃねぇか
そもそも宇宙海賊ってなんだよ、君のハートにレボリューションかよ ええ」
手塚「か、返せ お前のセンスじゃこの物語の良さがわからないんだ
そもそもセンスのカケラもないお前が良く事務所に入れたもんだよ
同じ名字のお笑い界の大御所に失礼だと思わないのかい」
志村「お前こそ手塚って名字のくせに漫画の神様に申し訳ないと思わないのかよ」
手塚「言ったな」
志村「お前こそ」
※原稿を取り合う音
田中「あ、あのふたりとも」
手塚「いいから原稿を離せ」
志村「あっ…」
※原稿が破れる音
手塚「ああああああ、何てことをしてくれたんだ…」
志村「うっ…」
田中「最低だよ志村」
志村「お、俺のせいかよ あっちから仕掛けて来たんだぜ」
田中「けどこれは明らかに志村が悪いよ
ほら早く破れた原稿拾って。」
※原稿を集める音
志村「あの、その、すまんかった
一緒にまた書いてやるから なっ許してくれよ
良く見てみれば、この漫画面白いと思うぞ ほら仲直りの握手だ」
※手を払う音
手塚「いや、もういい もういいんだ…
今回の持ち込みでダメだったら、俺漫画家になるのやめようと思ってたんだ
お前の言う通り才能がないって気づいていたし、俺ももう四捨五入すれば30だしさ
そろそろ現実を見ようと思っていたんだ
けど、最後にこれだって思いついた漫画を書いて運が良ければデビューできると信じていたんだよ
だが、その願いもこうして儚く散ってしまった
人の夢と書いて儚いという意味がわかったよ はぁ…」
田中「そ、そんな事ない まだ終わりじゃないよ
志村の言った通りこの漫画面白いと思うし、才能が無いって訳じゃないよ
諦めないでもう一回、原稿書こう ね、そう思うでしょ しむ…ら…?」
志村「うっうっ…手塚ちゃん…本当にごめん ごめんな
俺さ高校卒業してお笑いの養成所行って、事務所所属になった所までは人生って楽だって思ってた
けどその後じゃ、仕事はもらえないしバイトばっかしてネタは全然受けないし現実を思い知ったんだ
だけど俺はそんな夢を追いかけてる俺かっこいいとか思っちゃってて結局何もないままここまで来てしまった
薄々気づいてたんだ、そろそろ潮時だって 親も早く就職して安定しなさいって言うしさ」
田中「志村まで…そんなことないって
前に見せてくれた1発ギャグだって僕と手塚は大爆笑だったじゃないか
二人共、らしくないよ いつもみたいに前向きに行こうよ ね?」
志村「…夢ってのは頑張っても叶わないんだよな。」
手塚「そうだな、きっと叶った人は本当に運が良いんだと思う
俺たちなんて努力したって報われないんだ」
※セミの鳴き声から大きな音
田中「2人はさ、本当にそれでいいの」
志村「田中…ちゃん…?」
田中「僕達さ、高校1年の時からクラス一緒になって 性格も趣味も夢もバラバラなのにさ すぐに仲良くなったじゃん
そこからずっと10年近く仲良くやってきて、バカな話や恋話、今みたいにケンカも何回もした
けど夢の話しはもっとしてきたじゃん その時の2人はすごく輝いて見えたよ
僕が夢が無いって話しをしたら、2人とも焦らずにゆっくり探そう いつかお前らしい夢が見つかるって言ってくれたじゃんかよ
それなのに、それなのに…諦めるってなんだよ なんなんだよ」
手塚「お、落ち着け田中」
田中「これが落ち着いていられるかよ
2人はさ 僕の夢なんだよ 僕は学生の時から2人の夢を聞いてきた
手塚はみんなの心に残る様な漫画を書く漫画家に、志村は悲しい顔を笑顔に変えるお笑い芸人に
目指している夢は違うけど、二人共夢を叶えるって目標は一緒だろ 諦めんなよ」
手塚「(泣)」
田中「(泣)」
田中「頼むよ 手塚、志村…親友としてお願いだ…。
2人が納得行くまで、本当にダメだって時まで夢を諦めないでくれ(泣)」
手塚「田中、弱音吐いて悪かった(泣)」
志村「俺達、なんか夢を見失ってた(泣)」
手塚「俺、漫画で食っていく事しか考えて無かった
昔はみんなの心に残る様な漫画を書くなんて言って焦って欲だらけになってた(泣)」
志村「お、俺も売れたいって事だけ考えてた
こんな欲まみれのやつがお客さん笑顔にできるはずないよな(泣)」
田中「そんな事ない、二人共僕の親友で優しくて夢を追っててかっこいいよ うわあああああん(大泣)」
手塚「田中ああああああ(大泣)」
志村「ごめんなああああ(大泣)」
ナレーション(田中)「そして僕達3人は30分くらい肩を組みながら泣き続けた
本当に夢を追っている人ってすごくかっこいいと思う
そして2人は本当に昔から僕の大事な親友なんだと実感した。
そして僕の中で、ある思いを決意する時が来た…。」
※ひぐらしの鳴き声
志村「いやぁーいい歳して久々に大泣きしたわ…」
手塚「今考えてみると後で隣の部屋から苦情来そうだな…恥ずかしい…。」
田中「ははっけど何か吹っ切れたよ」
手塚「うん、そうだな」
田中「…よし、決めた。」
志村「ん?何が決まったんだ?」
田中「…僕がこれからやってみたい夢の事。
もちろん2人を応援する夢は変わらないけど 今の2人を見てたら決心がついた」
志村「あの田中が遂に」
手塚「ほぅ…それでお前の夢は何なんだ」
田中「僕、料理人になりたいと思ってるんだ
バイト先の飲食店で料理してたら面白くなってきちゃってさ
僕が作った料理を食べて美味しいって言ってくれる人がいる事が嬉しかったんだ
その時、僕も人を笑顔して楽しませる事ができるんだ!って…
まぁ2人の夢には程遠いけどね」
手塚「そんなことはない 田中も志村も俺も何も程遠くなんてないさ
夢を追う事に距離は無い、ゴールなんて物は無いんだからな ずっと走り続けるんだ」
志村「おい、手塚ちゃん…今言った事漫画のセリフに入れろよ 俺どきどきしちゃったぜ
やっぱりお前才能あるんじゃねーの」
手塚「な…何言ってるんだ 最初から才能あるから漫画書いてるんだよ
…お前の、その…前に見せてもらった1発ギャグも最高に面白かったぞ…」
田中「うん、2人とも絶対に夢叶えられるよ」
志村「なーに言ってんだよ田中ちゃん お前も叶えるんだよ
さてさて俺たち3人、まだまだスタート地点…いや、まだ立ってすらいないかもしれない
けど3人全員で必ず叶えような まぁ同時にってのは絶対無いだろうけど、叶えるのはバラバラになるだろうけど」
手塚「ああ、何か三国志の桃園の誓いみたいでかっこいいな」
田中「うん、それじゃあもう1回肩組もう」
志村「おうよ!
それじゃあ…絶対夢叶えるぞー!」
田中「おおー!頑張るぞー!」
手塚「おおー!やってやるぞー!」
志村「よっしゃ燃えてきた、いても立ってもいられなくなってきたぜ
事務所に行ってどんな小さいイベントでもいいから仕事させてくれって頭下げてくる お邪魔しました」
※ドアを閉める音
手塚「まったく、昔のあいつらしくなったな 俺らも負けてられないぞ
それとえーっと…なぁ、田中」
田中「ん、どうしたの?」
手塚「俺の原稿手伝ってくれないか…?
まずお前ら2人の心に残る漫画を書きたいんだ」
田中「うん、喜んで それじゃ夕飯は僕が作るよ
そうだ志村にもまたその時に手塚んち来いって連絡しておくよ」
手塚「ありがとう 田中の手料理か、楽しみだな
志村にも漫画手伝わせよう 2人がいれば最高傑作ができそうだ
さて漫画を書き直す前に食材の買い出しに行きましょうか、田中シェフ…なんてな」
田中「ああ、それじゃあスーパーへ行こうか手塚先生
志村師匠を驚かせる料理と漫画を披露しようではないか あはは」
※ドアを開ける音
ナレーション(田中)「こうして僕達の運命の転機となった激動の熱い1日が終わった。
ちなみに僕達が夢を叶えたかは皆さんの想像にお任せする事にします。
けど、これだけは言える…最高の親友と最高の夢を持てた事、そして最高の人生だと…。」
※ゆっくりとドアを閉める音
終わり
https://youtu.be/wQANmKj-8FI
1年前に声劇としてYouTubeへ投稿しております。
素人軍団ですので何もかも下手くそですが是非見て頂けると励みになります。
ありがとうございました。