戯言
いつもと変わらない日常がそこにはあった。
私達を除いて。
「夢の中だよ」
私は隣にいた君に話しかけた
「そうだよ。ここは夢の中さ。世界が終わった後の人類の夢の中。認められないやつが造り上げた創造の世界さ。」
そうここは世界が終わった世界。
私達の体は冷たく音もない。
つまりは死んでいるのだ。
そりゃそうだ。
世界が終わった。世界。
人類の夢の中。
認められないやつが造り上げた創造の世界。
私は、ここをずっと前から知ってる。
なぜかは分からない。
ずっと、ここに居たようにこの世界を知っている。
呼吸が止まったままの世界。
ビルは朽ち果て、雑草が蔓延り、海に沈んだ。
その残骸の上に私達は立っている。
「やっぱり不思議だね、君はなんでこの世界に怯えないのか」
君は私に問いかけた。
「知ってるのよ。ずっと前から」
「そっか、先住民。地底人?それとも時の狭間で死にきれない哀れな幽霊さんかな?」
「さぁ。ずっとこうして話す相手を待ってることしか覚えてないわ。」
「そうかぁ。僕はいつからここに来たんだろうな」
「確か、2日前よ。太陽を2回見たもの。」
「太陽?」
「貴方、地底から来たの?」
「そうだよ」
「地底は水に浸って息ができないでしょうに」
「僕らは水の中でも息出来るよ」
「地底の事はなぁにも知らないわ、地底には日付とかないの?」
「日付?あぁ、何月とか?…昔はあったらしいけどもうないよ。朝?とか夜?とかもないよ。好きな時に寝たり起きたり遊ぶんだ、でも、時間ってのはあるよ。」
「へぇそうなの」
「そうさ」
意味をなさない会話に私は楽しさを覚える。
でも、これはただの幻想妄想夢想理想。
現実からの逃走。
きっと君も私の脳が作り出した幻想。
はたまた過去の記憶か。
救いようがない逃走。
「僕、泳げるかな」
「泳げるわ、きっと。地底に帰るといいよ。こんな所に居ても何も始まらないし、つまらないでしょう。」
「じゃあ帰るよ、帰れるか分かんないけど」
「さよなら」
彼はそう言って海に沈んでった。
私もこの海に沈んだら楽になれるかな。