その5: 余談2
5. 余談2
見入ってしまって、フラフラと近づいていっている自分にも気づかず、いすの角に足の小指をぶつけた。
正直、俺は女が得意ではない。
過去の事もあってか、どういう生き物なのか。どういう接し方をしたらいいのかまったくわからない。
何度か付き合った事もあったけど必ずと言っていいほど「気持ちがわからない。」と言われてしまう。
俺には3歳くらいから母親がいない。所謂、離婚だ。
親父1人でここまで育ててくれた。
だから、親父の前では母親の話は一切しない・・・。
ってのが普通なんだけど。
家は違う。
親父は他に男を作って出て行ってしまた母親の話をよくする。
憎まれ口ならわかる。最低の女だっ!!てのならわかるんだ。でも親父はいつも
「お前の母親はとってもいい母親だった。あんなにいい母親はめったにいないぞ。」
といつも褒めていたのだ。
仕舞いには男がほっとかないから。なんて、自分の元から去って行った母親は悪くない。みたいな言い方まで始める始末だった。
それだけ、惚れていたんだろう。
だから、女性はすばらしい。という事はわかる。
ただ、二人っきりになっても友達と接しているときとなんら変わりがないらしい。
それが、女性からすれば自分を特別扱いしてくれていない。
気持ちが無い。という結果になってしうらしい。
友達に相談してみたこもある。
結果は本当に好きじゃないからだ。といわれるのがいつもだ。
実際そうなのかもしれない。
だから初めてだった。
子供のようなうるさくて、かわいい雰囲気から大人の女性のような、まるで別人みたいなあの子を見た瞬間心臓がドクンッとなった。
遠くを見つめる瞳を見てると、捕まえて抱きしめたくなった。
手を伸ばしかけたそのとき、 足をぶつけてしまったんだ。
見られた。
でも心臓が落ち着いた。さっきまでの彼女に戻っていたから。
気のせいか。
あの胸の高鳴りは何だったのだろう。
この時、何かが俺の中で変わり始めていた。
まだ気づいていなかったけど。これがきっかけだったことは今ならわかる。
だって天使を見たんだから。