その4: 余談1
ここでトモの話を少しいれてみました。
突然なんで、わかりにくかったらごめんなさい。
4. 余談
日向 友。(ひゅうが とも)
身長は187センチ。かなりの巨体だけどひとなつっこい性格のせいか「怖い」とか言われた事はない。
今日は入社当時からお世話になっている先輩の結婚式。
二次会のため会場へ同僚たちと向かっていると前方でフラフラ、キョロキョロ動いてるものが目に留まった。
青いドレスに身を包んで、挙動不審な様子は見るからに迷子そのもの。
背丈から言って、小学生か?と思った。きれいなドレスを着ているのならきっと家族と記念写真でも撮りに来て迷ったか、何かの発表会でもあったのか・・・。
近づいて声をかける。「どうしたの?」って。
彼女は面白いくらいに素っ頓狂な声を出して飛びのいた。
こっちまで面食らってしまったが、軽く子供に話しかけるようにかがんで謝った。
よく見ると、フワフワと巻いた髪にクルンと大きな目。ほのかに甘い香りがしているし、体のラインからいっても小学生じゃないのは歴然としている。最低でも高校生くらいか?
顔はムスッとふくれているが、多分俺が子供扱いしたような話し方をしたせいだろう。軽く睨みを利かせているようだけど全然怖くない。むしろもっといじめたくなるような顔をしている。
会場の場所?
あぁ、この建物か。あっちだよ。と教えてあげる。向きを換えあからさまに逃げるように去っていく背中を見つめているとなんだか追いかけたくなる。
って、今の場所。俺と同じとこ?まさか、先輩の知り合いか?!
ニヤァ〜と笑うと俺は彼女の後を追いかけた。なんだか楽しくなりそうだ。
案の定、彼女は逃げた。ちょっと声を掛けただけで予想以上の速さで逃げていった。
ドレスのせいかフワフワと妖精が飛んでいるように見えた。パタパタ羽音が聞こえている。(足音だけど。)
すぐに追いついたから近くのベンチに腰掛けた。彼女はそんな俺の行動が見えなかったのか、後ろを確認すると俺の隣に腰かけた。
どうやら、後ろばかり気にして周りが目に入っていないらしい。
本当におもしろい。
彼女が息を整えている間に通りすぎた事も、すぐ横に俺が座っていることもまったく見えてないようだ。
つい、意地悪がしたくなってそうっと、耳元で話しかけた。
でも、彼女はもう力が残っていなかったのかヘナヘナと座り込み洋服が砂だらけになっていた。
ベンチに座り直させて俺が追いかけた訳を説明してやると小型犬ようにキャンキャン吠えた。
ここは一先ず退散したほうがいいかな?
俺は彼女を1人残して逃げるように会場へと入っていった。
会場ではたくさんの仲間や先輩の知り合い達で賑わっていたので俺は招待客をもてなして大忙しだった。
「悪いな。お前もゆっくり飲んでくれていいのに。」
先輩が挨拶の合間に声をかけてくれる。でも俺はまだ19歳だし、どうせ飲めない。料理もだいたい食べたし暇つぶしにみんなの相手をしているだけなんだけど、先輩の役に立てなら良かった。
先輩は俺が入社後、新入社員教育係りとしていろんなことを教えてくれた。飲み込みの悪い俺に同じことを何度でも教えてくれて、それでいて絶対にイヤな顔ひとつしない。同じ時期に入った同期でも何人かは上司の厳しさと、企業の厳しさとに負け辞めていったけど俺は先輩に支えられて今までやってこれた。
本当に感謝しているし、兄貴のように慕ってる。
俺には兄弟がいない。他にもいない家族はいるのだけど・・・。
せっかくの結婚式でする話じゃないよな。とにかく俺は先輩のために今日は楽しいすばらしい日になるように手伝うって決めてきたんだ。
ふと、目線を外へ向けると、あの子がいた。
またおどかしてやるか。と、そうっと近づいていった。
俺はドキッとした。
髪がフワフワとなびきオレンジの空が彼女を照らす。遠くにキラキラと月が輝き、彼女全体を白い柔らかな光で包んでいる。
天使だ。思わず見とれてしまった。