その3: コンプレックス
3. コンプレックス
カタッ・・・
「・・・っいって」
振り返ると例の失礼男 友君?とやらが立っていた。
私は見て見ぬ振りをして、また目の前の風景を見つめていた。
「今、見たよね。」
彼が私の横から覗き込みながら私に聞く。
「見てないよ。」
私は、目を合わせずに言った。
だって、普通恥ずかしいでしょ。そんなとこ見られた。
いつもの私なら「ダサっ」とか言っちゃうんだけどね。さすがに初対面だし、気を使ったつもりなんだけど、
「うっそだぁ〜!だって見たの確認したし、ってか、ほっとかれるほうが恥ずかしいんだけど。」
私は黙ったまま、ちらっと彼を見た。
彼はニコニコと話を続けた。
「ちっちゃいねぇ。いくつ?・・いやっ身長じゃなくて、年ね?女の人に聞くのって失礼なんだけどさ。でもそんだけ小さかったら中学生?もしくは小学生に間違われそうだし、実際街で声かけたとき子供かと思ったんだよね。でも二次会に出席してお酒まで飲んでるってことはさすがに高校生にはなってるんだろうし?でも、未成年のお酒はダメなんだよ?」
まくし立てるようにスラスラと私への失礼な発言が飛び出す飛び出す。
さすがの私もこれだけ身長のことでバスッ!バスッと言われたのは初めてだし、ましてや小学生?だとか言いやがって。
あまりに言いたい放題のこいつにむかっ腹が立ってそばにあったワインをなんとボトルごとガブ飲みすると、
「うるさいわねぇ!!私は身長のことが言われるのが一番いやなのよ!ほっといてよ!
だいたい、そんな子供がこんなとこにいるわけないじゃない。バカじゃないの?私はもう二十歳だって超えてるし、立派な成人女性よ。21歳なんだから、バカにしないで。」
思いっきり威嚇しながら吠えると、彼は少しビックリした様子で、でもどこかニヤニヤしながらひらひらと左手を振りながら去っていった。
そうしてまた、いろんな来客者たちにお酒や料理を配りはじめた。
私は火山の爆発寸前のような顔で鼻息をフガァ〜っと出すと、近くにあるテーブルからいくつかワインボトルを引ったくって自分の前のテーブルにのせると、これは私の酒よ。 と言わんばかりのオーラを出しながら飲みだした。
所謂ところの「やけ酒」であります。
お酒には弱くない私なんだけど、怒りのためかお酒の巡りが早かったようで・・・。撃沈です。
大事な陽子の結婚式の日だったのに。
この後、ハネムーンへの見送りをするはずだったのに、
こんなはずじゃなかったのに。
今日一日は最高の笑顔で過ごすはずだったのに。
友君。とか言う意味不明の巨人のおかげで私の記憶はここで虚しくも終わってしまいました。
小さいころは身長のことなんてぜんぜん気にしてなかったし、大人になっても身長の小さい人なんてたくさんいるんだから、普通に生活する分にはなんの支障もないのだけど、私は顔も童顔のせいか、たいてい初対面の人には中学生くらいに間違われる。
それが高校3年くらいからかさすがに気になりだし、初対面の人には自己紹介の中に年齢を言い加えるようになった。
そう、コンプレックスになっていた。
新しい年になりました。更新はなかなかうまくいきませんが何度も書き直してやっと投稿できました。
今年もがんばっていきます!