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俺は使い魔で毒使い(らしい)  作者: 檸檬紅茶
第一章
7/30

武器選択と屋敷探検

 

 食堂に入るとエトムートさんが食事を摂っていた。

 せっかくなので隣の席に座る。


 「エトムートさん、こんにちは」

 「あ、エイトさん、こんにちは」


 昨日と変わらず爽やかな笑顔を見せつけてきた。

 今日は昨日とは違い、鎧を着ていない。

 腰に剣があるが、軽装で爽やか顔のイケメンが身につけていると違和感がすごい。


 「今日は何をするんですか?」


 エトムートさんはう~んと唸って


 「それは内緒です」

 

 ニコッと、いたずらを企む子供のような顔。

 笑顔……眩しっ!


 後は他愛もない話をしながら食事を摂る。


 食べ終えて皿を返すとエトムートさんが


 「付いて来てください」


 というので付いて行く。

 

 付いて行くと、外にでた。

 

 中庭なのかな?

 

 昨日と同じで日差しは温かい。

 

 エトムートさんが昨日着ていた鎧に似たものをを着た人たちが木刀みたいなのを振り回し打ち付けあっていた。


 「これは?」

 「訓練してるんですよ。 彼らも僕もまだまだ未熟ですからね」


 ほへぇ~すごいな~真面目。

 もしかしたら、俺もこれに混じって、色々やるのかな?

 と、思っていたがどうやら違うらしい、訓練をする彼らをスルーして屋敷とは別に中庭に建てられた背の低い建物に入る。

 

 建物の中には様々な武器があった。

 剣や槍、斧、弓……他にも見たことがない物がたくさんあり厨二心がくすぐられてしまう。

 

 「ここで何を?」

 「ここは武器庫です、まずは武器を選ばないことには始まらないと思いまして、好きな物を手にとってみてください」


 なるほど……確かに武器を選ばないことには始まらないか。


 まずは壁にかかっている剣を取ってみる。

 剣はファンタジー主人公の大定番だからね。

 

 「それは結構重いですよ、気をつけてくださいね」


 エトムートさんが注意してくれる。

 確かに重たい、金属バットのような重さがある。

 片手だとキツイ、両手でやっと振れる感じがする。


 「う~ん、やっぱりちょっと重いですよね? 初心者は基本的には槍を教えるのですが……」

 「へぇ~そうなんですか」


 そういや、厨二病スレにそんなことが書いていた気がする。

 槍は振り回すだけでも相手を寄せ付けないから……みたいな。

 

 ということなので、今度は槍を手にとって見る、先ほどの剣よりは軽いが微々たる差、あまり軽くはない。


 「しっくり来ないなぁ……」


 あんまり重い武器は好きではない、モン○ンとか俺片手剣、双剣の2択だったしなぁ……

 大剣とかあれ絶対重いでしょ、アレぶん回すとかハンター人外すぎる。

 

 この世界で話しても誰に通じないような事を考えていると、エトムートさんが、そういえば、と前置きしながら


 「エイトさん、魔法は何が使えるんですか?」


 と聞いてきた。


 そういえば、言ってなかったかも知れない。


 「無属性で……毒でした、具体的には分かりませんが……」

 

 毒……毒……と小さくエトムートさんは呟く。

 

 「そうですね……取り敢えず、その毒が液状だと仮定して……片手で扱える物にしておきたいですね、斧の刃とかに毒を塗ってもあまり効果はなさそうですし……」

 

 ほう……ここまで分析してくれるとは。

 

 「あ、すいません、好きなモノを選んで、と言ったのに……」

 「いえいえ、大丈夫ですよ。 むしろ全部選んでほしいくらいです」


 正直何があってるとか、分からないし。

 すると『それじゃぁ…‥』 と呟きながら、エトムートさんは武器庫の奥の方から何かを取ってくる。


 「これなんてどうでしょう」

 

 エトムートさんの手のひらには60cmほどの変わった形の短剣があった。

 通常の短剣とは大きく異るのが目で見てもわかる。

 片刃ではなくV字の両刃。

 通常は刃と水平にあるべきが握る部分が垂直に、逆に鍔とは水平になっている。

 メリケンの刃物バージョンといえば分かりやすいだろうか。


 「これは……ダガー?」

 「そうです、正しくはジャマダハルですがね」

 

 ドラゴン○エストのドラゴンキラーがこんな形状だった気がする。


 どうぞ、と差し出されたので手にとってみる。

 重さは……うん、大して重くない、500mlのペットボトルより、ちょっと重たいくらいだ。

 

 「このジャマダハルは斬るよりも突きに重点を置いていて、鎧も力次第では貫通が可能です。 殴るように拳を突き出せば、それだけでなかなかの威力になります。 こちらの方が剣や槍などよりは実用的かもしれませんね」


 へぇ~こんなに軽いのに鎧を貫くことができるのか……

 確かに殴るような形で刃物が扱えるのなら、エトムートさんの言うとうり、実用性は高いのかもしれない。

 

 「エトムートさん、俺、これにします」


 軽く高威力、と言うのは魅力的だ。

 

 「分かりました、今日はもういいですよ。 明日、具体的に指導していきます」

 

 と、にこやかに言って、エトムートさんは外へ出ることを促してくる。


 「あ、ありがとうございました~」

 

 礼を述べて俺は武器庫を出た。

 

 武器庫の外、中庭には先ほどと変わらず騎士たちが雄叫びと汗を振りまいている。

 その雄叫びの中には甲高い声もあり、女性がいると予想。

 女騎士ってかっこいいよね……性格はツンデレ系でしょうね!素晴らしい!

 

 時刻は体内時計的には午後の2時。

 一番気温の高い時間帯だと思われるがその日差しはギラギラではなく、ぽかぽかであり草や花のふわふわとした匂いが全身を駆け抜け、空は潤いに満ちた海のように青い。春を思わせる。

 

 この世界には四季はあるのかな……?


 青い空を見て思い出したがセラフィーは一体どこにいるのだろうか?

 鍛錬、と言っていたがこの中には居ないようだ。

 騎士と魔法使いでは鍛えることが違うだろうから当然なのかもしれないが。

 

 もしかしたら、この騎士たちのように魔法使いたちも1箇所に集まって教え合っているのかもしれない。

 

 本来は賢者に教えてもらうためにここにいるのに、その賢者が寝たまんまの状態だから、きっと大変な状況なのだろう。


 することもない、セラフィーを探すついでに、敷地探検でもしてみようかな。

 

 まず、屋敷の外を歩いてみる。

 やはり、ここは本で読んだ通り、シリント湖という場所らしい。

 湖の近くに丁寧にシリント湖と立て札が立っていた。

 

それを囲む森は、きちんと整理が行き届いている。 

 森のなかは適度に日差しが入りこみ、鳥のさえずりが風にのって飛んで行く。


 森から屋敷を囲む道に戻ると、騎士が何人か巡回していた。

 今、中庭で稽古をしている騎士が全てではないのだろう、むしろこの水の賢者の屋敷を警護することが本来の目的なのかもしれない。

 

 道に沿って歩いて行くと、やがて、水堀が現れ、敷地の外側を見ることが出来た。

 水堀をなぞるように歩くと、門が見え、騎士が門番をしているのが見えた。

 門の大きさはトラックが余裕で通れそうだ。

 この世界の場合、馬車なのだろうけども。


 敷地をグルっと一周したが、出会うのは巡回中の騎士と森の手入れや洗濯物を干しているメイドさんやおばさんだけだった。

 

 屋敷に戻り、今度は屋敷探検だ。

 この、屋敷は少なくとも3階建てだろう。

 外から窓が2~3つ縦に並んであるのが見えた。


 まず1階。

 この階は俺の部屋、食堂、書庫、そして水晶のあった部屋もこの階だ。

 一定間隔に扉が1つ、また一つと並んでいる。

 数えていないので分からないが優に百は超えるだろう。

 ここの階は生活スペースであるようで人たちの部屋が殆どがある。

 

 あと、歩いてみて分かったことだが、この屋敷はロの字の形をしているようだ。

 角を4回曲がると玄関に戻っていた。

 一周見て回ったので次の階に行こう。


 階段は螺旋階段とかではなく、普通の階段であったが装飾が見事で、青い絨毯はもちろん、手すりには艶のある木が使われ、手すりを支える柱は金色に輝いている。

 この階段は各角に1つ備えられていた。

 

 小刻みに足音を立てながら階段を登ると、2階からは魔法使いの詠唱の声が響いている。


 「「「「ウィータアクア 」」」」


 ひたすらこれが聞こえてくる。

 確か、下級の魔法だったか。

 まぁ、屋敷の中で大技ぶっ放すわけにも行かないだろう。


 声の聞こえる方向へ歩いてみると大きな部屋がある。

 ちょうど食堂の上辺だろうか。

 

 開いた状態の扉からチラリ、と頭だけを出して、覗き見てみると、多くの魔法使いが、コップに生み出した水を入れ、それを見て喜びや落胆を顔に表していたり、飲んでみたりするものもいた。

 

 中には湖から汲みとったのではないかと思わせるほどキラキラと輝くものもあれば、水たまりに泥を混ぜたのではないか、というほどに濁った水を生み出すものもいた。

 

 その部屋の奥、ステージのように少し高いところにはセラフィーが他の魔法使いへ魔力の込め方等のアドバイスをしている。

 ここからでは声は聞こえないが、大きな身振り手振りで何かを表しているのがわかる。

 寝たきりの賢者の代わりといったところだろう。

 

 セラフィーは俺に気が付いて手を降っていたが、邪魔をしても悪いので、手を振り返して静かに部屋を後にする。

 

あそこで鍛錬をしているのか、俺も魔法が具体的に分かったら、お世話になるかもしれない、覚えておこう。


 セラフィーを見つけるという目的は果たしたが、どうせなら3階も、見ていこう。


 3階は先程の部屋とは比にならない大きな部屋が2つと小部屋が1つ。

 賢者の部屋と、宝物部屋、小部屋はメイド長の部屋と書かれている。


 賢者の部屋と宝物部屋の前には騎士が立っている。

 納得だ、警護するのはここだよな普通。

 

 入れそうにないので2階へ戻る。


 これで、屋敷探検は終了。


 1階に大浴場見たいなのを見つけたので、夕ご飯の後に行こう。


 夕ご飯前まで自分の部屋で借りた本を再び読む。


 この大陸の形、各種族が収める領地と地名はなんとなく理解できた。

 

 なので、今度はこの屋敷周辺の魔物を見てみよう。


 水の賢者、シリント湖を中心に2kmは魔物はいないと書かれている。

 

 それ以降は肉食ネズミ、肉食うさぎ、大蛇、でかいミミズみたいな見た目をしたウォーム、他にも多数いるがあまり強力な魔物は付近に居ないらしい。

 なんでも、人の営みがある町や都、賢者の屋敷周辺はあまり強い魔物は現れないらしく、山や洞窟、海などの険しい場所に行くにつれ魔物が強力になっていくらしい。

 

 ダンジョン、なんてものもあるらしい、なんでも、過去の英雄の遺品をしまった所、らしい。

 ダンジョン内の魔物は外に出ることはないが、強いらしい。

 

 また、魔人の領地に近づくに連れ、知性の高い魔物が増えるとのことだ。

 これは知性のある魔物を魔人が操るため、呼び寄せているからだ、とされている。

 ある程度、大陸全土の魔物を魔人が制御しており、知性のある魔物は、そのまま武力として引き込み、国が管理しているためと書かれている。

 

 魔物の活動を抑えることが魔人という種族の大きな役目のようだ。

 だが対立した今、その恩恵は受けられないと思われる。

 

 なんで対立したんだろう?

 むむむ……この本には書かれていないから分からない。


 まぁ、そのことは置いておこう。

 

 次にここら周辺で取れる薬草だが、水の賢者が住まう湖、ただの薬草でも高値で取引されるそうだ。

 水が良いと育つものも良いらしい。

 

 これは土の賢者のいるグレッシュ樹海も同様のようで、樹海の場合は質も量もいいようだ。

 こっちは土が良いからよく育つとか。


 ちなみに、火や雷、闇の賢者の住まい周辺の薬草に関しては、水と土とは真逆で、生えていても質は悪く、薬草を原料とした薬は国や、賢者たちから譲り受けたり、購入して、どうにかしている、とのことだ。

 

 確か、この3つの賢者の住まいは、火の賢者は火山の近くだったし、雷の賢者は世界一高い塔で、闇の賢者は魔人の領地の近くで魔物が強い、なので育てられない、という事だろう。

 その分鍛冶技術やらが高いと、簡単に書かれている。


 ここらの薬草に話を戻すと

 

 『ウンディーネの涙』


 というものがあるらしい。

 これを口にしたら一時的にだが魔力を一切消費しないらしい。

 魔法をMPゼロで扱えるということだろう。

 

 使い魔召喚するときに使えよ! と思うかもしれないがこの花は1年に1度花を咲かせればいいほうとのことで、俺を召喚するときには手元になかったのだろう。

 

 咲くときには夜に湖を内から照らすように強く輝くとのことだ。

 咲く季節は決まっておらず、冬に咲けば、夏に咲くこともあるらしい。


 ……ってかこの一文のおかげで四季がこの世界にあることが判明したね、やったぜ。

 

 土の賢者の方にはノームの帽子、という名の花がある、と書かれている。

 死んでさえいなければありとあらゆる体の傷を癒やしてくれるらしい。


 この2つの植物は摘んでから1日で枯れてしまうため、その日に食べるか、効果を半減させて薬にすることで長期保存できるようにするかの2択しかなく、大抵は薬にしているらしい。

 

 ふむぅ……もう日が暮れている。

 今日はここまでだ。

 明日からは本格的に訓練があると思われる。

 頑張らなくてはさっさと寝てしまおう。


 風呂と食事をすませ、早々にベッドに入る。 

 そういえば……セラフィーと話をしていないなぁ……

 まぁ、いつでも話せるか。

 召喚されてまだ2日目だし。

 

 などと考えていると、いつの間にか寝てしまっていた。

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