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俺は使い魔で毒使い(らしい)  作者: 檸檬紅茶
第一章
6/30

食堂のご飯

 

 扉との格闘が終わり、本を2冊、抱えながら廊下を歩く。

 

 なんでも、この本は書庫から取ってきたとのことだ。

 この屋敷は俺の通っていた高校並に広い、きっと書庫もそれなりに大きいものなのだろう。

 

 廊下には香ばしい匂いが漂っている。

 そのせいで俺の腹は夏場のセミのように騒がしい。

 

 ……早く……絶品の魚料理を食べたい……

 

 空腹のせいで本を持つ手にも力が入らない。


 だらだらと歩いき、曲がり角を曲がったところでセラフィーが 

 

 「あっ、あの部屋ですよ」


 と、声を上げる。

 視線をたどると両開きの扉がある。

 あ……あそこに本を置けばご飯が食える……

 

 さかなさかなさかな~さかなを~たべ~ると~

 

 頭のなかで魚を連呼してどうにか気を持ち、どうにか書庫につく。

 

 扉を開けるとそれなりの利用者がいて書庫と言うよりは図書館、という表現のほうがしっくりくる、本の量は棚の数を見る限りかなり多そうだ。

 

 机、椅子、本棚それぞれが木製でかなり使い込まれているもの特有の、あたたかみとあじがあった。

 が、そんなもので腹は膨れないのでさっさと本を戻したい。

 

 「メイドさんが片付けてくださるので、机に置いておいてください」


 セラフィーが適当な机に本を置いていたので持っていた本を重ねる。

 見渡すと、せっせと本を運ぶ白と黒のフリフリとした服を着た女性達がいる。

 メイドさんがいるんですか! 素晴らしい! でも今は性欲より食欲!

 

 本を置いたことで、この部屋には今は用がなくなった。

 

 メイドさん……後で……必ず……会いに行くからね!


 後でメイドさんを鑑賞することを誓いながら再び廊下を歩くと書庫のすぐ近くに食堂があった。

 どうりでいい匂いが……


 開けた食堂には多くの騎士と思われるオッサンやら、魔法を学んでいるであろう若人、それに比べれば少数だが耳が尖ったエルフや、モッフモフの尻尾を生やした獣人、様々な人達がテーブルを囲んでいた。

 美味しい料理に、どの顔も綻んでいる。

 

 あぁ……腹減りの目の前でご飯を美味そうに食うとは……ここは生き地獄かぁぁぁぁぁ!


 「あそこの席、空いてますね」


 俺が苦悶していると、セラフィーが手を引いて空いた席に俺を座らせる。

 さり気なく触れるとは、魔性の女! なんて考えたがやっぱそんなことより腹減った。

 

 「ここで待っていてくださいね、注文してきますので」


 と言われたのでおとなしく待つ。

 本日3回目の一人ぼっちだ。

 

 胴より上を支えられるほど体にエネルギーが残っていないので机に突っ伏せながら待っていると、セラフィーが戻ってくる。

 隣にセラフィーが座りながら呟く。


 「あと、10分くらいらしいですよ」

 「うん……」


 そこは魔法でどうにかならないかね、まぁ、無理ですよね。

 

顎を机に乗せたままあたりを見渡すと、腹にいっぱいの香辛料を詰め込んだ焼き魚とパン、リンゴ的果実が並べられている。

 

 それを、またみんながうまそうに食べている。

 これは、なんという魚なのだろうか、分からないが……ウマそうだ……

 

 香辛料の刺激的な香りと、いい具合に焼けた魚の香ばしい香り、パンに塗るためのバターの香り、全てが鼻から胃へ。

 

 あぁ……とギリギリになっているところで、書庫と同じようなメイド服を着た人が料理を持ってきてくれた。


 机に置かれるなり、がっつく。


 やはり、見た目通りウマい。

 香辛料の辛味と魚の油の旨味が口の中の神経に触れ、もっと、もっと! と言うように、広がる。

 おかげでパンが止まらない。

 空腹は最大のスパイスとはよく言ったもので、普通に食べてもウマいもであろうこの魚がより一層美味しく感じられる。

 

 一方のセラフィーは俺の食べるスピードに驚いているようだ。


 「あ、あまり急いで喉につまらせないでくださいね……?」


 と心配している。

 ペロリと何事も無く食べてしまったのでその心配は杞憂というもの。

 

 そのセラフィーは髪が料理がつかなように手で抑えながら口に魚をを運んでいる。

 顔一面には満悦らしい笑みが浮かんでおり、俺のようにガツガツとではなく一口一口味わうようにゆっくりと食べている。


 「やっぱり、美味しいですね~」


 すでに食べきってしまった俺としては周り、特にセラフィーが食べている様子をボーッと眺めることしか出来ない。

 セラフィーさんまじかわいい。

 

 セラフィーが食べ終わった頃には食堂も人が少なくなってきていた。


 「お皿を返したら、自由時間ですよ、あ!エイトさんのお部屋、案内しますね」


 とのことなので、お皿を返し、食堂を後にする。


 昼の下がりともなるとあたりには朝の意識を貫くかのような眩しい日差しとは違う、ぽかぽかとしたあたりが太陽の匂い。

 例えるなら朝日がレモンティーで昼の日差しはミルクティー。

 包み込むような暖かさと、ご飯を食べたこともあって非情に眠い。


 「……ふぁぁぁ……」

 「瑛斗さん? 眠いんですか……? ふぁぁぁ……」

 

 口を手に当てて目からは涙がでている。

 あくびは伝染するよね、あるある。


 うつらうつらと歩いていると、セラフィーが


 「着きましたぁ……」


 と瞼を擦りながら教えてくれる。


 中に入ると青で統一された家具が沢山あった。

 統一感のある部屋というのはなんだかキッチリ感があっていい。

 青は水のイメージともぴったりで涼しい印象がある。

 

 だが、残念なことに俺が朝目覚めた部屋とは違い、窓からは湖は見えない。

 

 「私は隣の部屋なので何か用があれば、来てくださいね」

 「は~い」


 ウムム……お隣はセラフィーさんのお部屋なのね……

 まぁ、眠いからねるんだけどね


 「あ、あと、部屋にはいる時はノックしてからですよ!?」

 「オッケーオッケー」


 俺がそんな不純な男に見えるかね、悲しい。


 「お昼は基本的に魔法の鍛錬をしていて居ないので、あ、でもエイトさんもエトムートさんに教えてもらうんでしたよね?」

 「うん」

 「それでは、お互い頑張りましょう! あと、夕ご飯は日が赤くなってくるあたりには出来ますので、一緒に行きましょうね!」


 あら、ディナーのお誘いですか、喜んで。

 正直、注文の仕方もわからないしね。


 「了解」

 「それでは、また夜に」

 

 夜……ゴクリ。 

 あ、俺不純な男でしたわ。


 セラフィーは開けた扉を閉じていく。


 さて、今から日が赤くなるまでには十分な時間がありそうだ。

 毛布も布団も青いベットに体を滑りこませる。

 食後の睡眠は気持ちがいい。

 スイッチを切り替えたようにスッと寝息を立てた。


 トントン、という音で目が覚める。

 窓の外はすでに暗い。

 もう夜のようだ。


 「瑛斗さ~ん、夜ですよ~ご飯の時間ですよ~」

 「ハイハ~イ」


 食堂で再度食事を摂る。

 ちなみに夕ご飯はシチュー的何かであった。

 あと、オッサン勢が酒を飲んでいて、食堂が酒臭かった。


 「そうだ、セラフィー。 書庫って、俺も利用していいのかな?」

 「はい、大丈夫ですよ。 でもなんでですか?」

 「いや~勉強もしなくては、と思ったんだよ」

 「お~やる気にあふれてますね!」


 異世界に来た人たちって基本的に本読んでるからね。

 ほんとに、世界の仕組みがわからないから、学ばなくては。

 

 ……でも、数学はしたくないなぁ……


 ご飯を食べ終わり、皿を返す。

 オッサンが本格的に酔ってきてうるさくなってきた。

 絡まれても面倒なのでそそくさと、セラフィーとともに部屋に帰る。


 「エイトさんお休みなさい」

 「おやすみ」


 部屋の前で別れてお互いの部屋に入る。

 俺からするとおやすみの時間ではないのだが、やることもないので、昼と同じようにベットに入る。

 

 お風呂にはいるのを忘れていたが、そもそもお風呂があるのだろうか?

 ベッドから出るのも煩わしいので今日はいいか。

 昼寝をしていたのと、体内時計では9時であったこともありなかなか寝付けない。

 結局寝付けたのは1時間ほど後のことであった。

 

 

 

 

 翌朝、セラフィーとともに朝ごはんを摂る……つもりだったが部屋にも食堂にも居ないようだった。

 おそらくもうすでに朝ごはんを食べて、魔法の鍛錬をしているのだろう。

 真面目そうだからね。


 仕方ないので一人で食事を摂る。

 注文の仕方は昨日の夕ご飯の際にセラフィーがレクチャーしてくれた。


 朝ごはんを食べた後は書庫で本を読み漁る。

 毒のことはもうクテュールという人物に教えてもらえそうだから読まない。


 まずはこの世界の地理や政治体制等の現代で言うところの社会科について学ぼう。 

 本の量は膨大だったため読みやすそうな薄めの本を数冊手に取る。

 薄い本って意味じゃないからな!

 そう、薄めと言っても、教科書程の厚さがある。

 

 読むのが億劫だが、とりあえず、読まないことには始まらない。

 初めに手にとった本は草と魔物の生息地、という題だ。

 地理のついでに、魔物や薬草なんかの知識も入れたいなぁと思い、もちだした。

 ピラピラ、とページを捲る。

 まずは、この世界、もしくは今いる大陸の地図を見たい。


 パラララララララ

 なかなか地図が出てこないのでパラパラ漫画を再生するときのような速度で本を捲っていく。

 最後の方のページにやっと見つけることが出来た。

 2ページを使ってデカデカと書かれている。

 捲り方のせいで本と鼻先の間にはインクの匂いが漂っている。

 

 どうやらこの地図は4種族が住んでいる大陸とその大陸の南側の海を挟んだ大陸、要するに2つの大陸が描かれている。

 

 軽く大陸のゲシュタルト崩壊が起きたところで、具体的に見ていこう。

 

 4種族が住んでいる大陸には地名がビッシリと書かれているがもう一つの大陸の方にはチラチラ、としか書かれていなく大陸自体も途中までしか書かれていない。

 下の大陸は今は関係ないだろうから4種族の方を見ていく。


 大陸の形は……ざっくりというと台形のような形をしている、上に細くなっていて、プリン型。

 

 その台形の中心には王冠とともに“王都フィグネリア“と書かれている。

 フィグネリアって騎士団の名前だった気がする。

 王国直属なのかな?

 あと、無の賢者とも、王都フィグネリアの上に書かれている。

 ここにクテュールという人物がいるのかな?


 さらに王都から北東に行ったところに水の賢者、シリント湖と書かれている。

 きっと、ここが今俺のいる所なのだろう。


 西にはエルフの領域と書かれている。

 大体大陸の4分の1。

 

 大半が森なのだろう、木のイラストが所狭しと描かれている。

 エルフの領地の中心に土の賢者、グレッシュ樹海と書かれている。

 土の賢者から更に北には風の賢者、フォール谷。

 あとは森都クイエット、ここにエルフの長がいるようだ。

 

 東には獣人の領域。

 これまた4分の1。

 

 獣人は魔法が使えないから賢者は居ない。

 だが、そのかわりに気になるものがあった。

 

 人間と獣人の領地の堺に和の国、と書かれている。

 これは……意味は文字道理なのかな。

 京都的な町並みが広がってそう。

 中心には獣都ソナンティス、こちらには獣王なるものが居るらしい。

 

 北には魔人の領域がある。

 これも大陸4分の1。

 光の賢者、闇の賢者、その上にはバッテンが書かれている。

 敵対したからなのかもしれない。

 魔都フォルティ、魔王が居るとのこと。

 

 魔王……完全にラスボスですね……まぁ、会ったこともないのに否定しちゃダメだよね。

 でも、敵対するってことは、それなりの事をやらかしたのかな?

 

 ふむふむ……と、そろそろ、腹が減ってきた。

 そろそろエトムートさんとの約束の時間だ。

 この本中途半端にしか読んでないから借りれないかな……


 「すいません、メイドさ~ん。 この本借りれますか?」


 近くに居た、メイドさんに聞いてみる。


 「えぇ、どうぞ」


 と、塩対応。

 まぁ、借りれるならいいか。


 「んじゃぁ、借りますね~」


 本を小脇に抱えながら食堂に向かう。

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