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35モフ目

戦闘よりも書きやすい、だと!?


 さて、戦闘以外にもイベントはあるんだけど。どこから回ろうかな。

「さあ、新しい公開処刑ですよ。この頭だけ出して砂浜に埋めたサブリーダーの横に置いたスイカ。このスイカでスイカ割をします。ルールは簡単。目隠しした状態で三回まわった後、わんと鳴いて、スイカを目指します。サブリーダーに与える恐怖の度合いにより、ポイントの増加。ただし、サブリーダの頭をぴちゅっとするとポイントはなくなります。ぜひふるって高得点を狙ってください。ぴちゅっとやられたかたには運営から惜しみない拍手を送らせていただきます」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁここからだしてええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「なお、この心躍るお楽しみに参加される場合は、一時的に感知系スキルを無効化させていただきます」

「もうお楽しみって言った!?」

 たまってるなぁ、運営。

「ぴちゅっといっても即座に再生して競技続行しますのでどんどんどうぞ」

「いやぁぁぁ反省したから、反省したから許して!」

「だめです。プロジェクトリーダーから部長、課長、副社長、社長ほか他課の管理職の方々から笑顔でやっちゃえ♪といわれてるので、私の独断では止められません」

 どんだけだよ、あのサブリーダー。

「これパワハラ、パワハラだから!」

「法務部からは、何も見えない聞こえない、だから会社の弁護はしっかりするよ、とのコメントをいただいています」

 法務部か。きっと僕のこともいろいろ迷惑かけてるんだろうな。

「うおっしゃ!オレっちのかわいい玄武岩ゴーレム、ぱすてるちゃんが挑戦するぜ」


玄武岩ゴーレム

テイム済み

火山岩の一種、玄武岩で構成されたゴーレム。石材のため温度変化に強い。あまり器用ではないが道具を使えなくもない。


「ではこちらをどうぞ」

 取り出されたのは……スイカ割用とかいう規模じゃないぞ、あの丸太。あの円柱の内側には僕がすっぽり収まると思う。

「待って!それ待って!それスイカと一緒に私も一緒にぴちゅんしちゃう!」

「無問題です。すぐにアバターは復元されます」

「いやぁぁぁぁだしてぇぇぇぇぇ!」

「いくら運営でもオレっちのぷりてぃーできゅーとなぱすてるちゃんを侮辱するのはゆるさんぞぉぉぉぉ」

 あれはぴちゅんいくかな。ぴちゅんというかぶちゅっとかぐちょっとかいきそうだけど。

「見学の皆さんは声で誘導してあげてください。ではぱすてるちゃん、三回まわって……ワンとは言えないからそのままどうぞ」

 ゴーレムが三回まわったくらいでふらつくのかはともかく、プレイヤー達の右だ左だ散歩進んで二歩戻るだの掛け声で、だんだんぴちゅんに近づいて、もとい、スイカに近づいていく。

「振り下ろせ―!」

 ぶおんと音を立て、丸太が振り下ろされる。おしい。顔から30cm手前だ。

「ひぃぃぃぃ」

「おしいぞ。もう一歩前だ」

ぶおん

 今度は顔の横、スイカと反対側に10cm。っていうかスイングの旅にここまで風がくるとか。すさまじいな。

「いやあああ怖い怖い怖い怖い!」

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔が、ゴクリ。ドリーさん、喉を鳴らさないでください。

 ずぱん、といい音を立ててサブリーダーの顔が赤く染まった。

 スイカの果肉で。

 その後、レオタードなエンジェル、トップスに盛大に詰め物をしたビキニのスケルトン、三回転するときに詰め物が落ちた女性の狐プレイヤー、筋肉をてかてかさせて盛大にどことはいわないけどもっこりさせた狸プレイヤーが、スイカ、スイカ、ぴちゅん、股間を顔面におしつけして、僕らも参加してみることにした。

「ご立派さまぁ」

 しかしサブリーダーは驚き戸惑っている。

 かの立派なシンボルな魔王様は実装されていないだろうか」。

「さあ、僕が行くか、トトが行くか」

くいくい

「え?プラムがいく?」

こくこく

「なら任せてみようか」

「はい、続いての参加者はブラウニーのプラムちゃんです。では、こちらをどうぞ」

 取り出されたのは黒くって、硬くって、大きくって、てかっていて、1tとかかれた巨大なハンマーだった。

「いやいやいや、プラム持てないだろ」

「その辺は運営権限であれやこれやのパラメーターをいじってますので大丈夫です」

 さすが運営。

「プラムちょっとこっちにおいで。簡易付加 痛覚増加」

 ハンマーに短時間だけ有効な付加をほどこしてみる。

「待って、それシャレにならない!」

 サブリーダー(的)が何か言っているけど、ここは意図的に難聴になっておこう。

「おっと、これはポイント高いですね。では三回まわってワンと鳴け……ないので」

「わん」

「代わりにプレイヤーさんが鳴いてくれました。はりきってどうぞ」

 まっすぐまっすぐ。

 右だ右だ。

 あーちょっと行きすぎ!

 待ってちょっと待ってこっち来ないで。

 振り下ろせ!

ずぱん

 ひぃぃぃぃ!

 ああ、おしい!

 ちっ、悪運の強い。

 ちょっと横に振って。

がつん

 ひぎゃぁぁぁ!

 ちょっと持ち上げて。

 左左。

 そこだ行け!

ずぱん

「クリーンヒットォォォォ。見事スイカが割れたのでポイントを差し上げます。ついでにぴちゅんしてもらえませんか?」

「遠慮しておきます。あの子は無垢なままがいい」

「うぐっ」

 プラムのにぱーっという感じの笑顔を見て、運営、プレイヤーみんながうずくまる。

「笑顔がまぶしい。わ、私は汚れきっていたとでもいうの?」

「お、おれの良心が……」

「なんて愛らしい笑顔……」

「そう思ったならここから出してぇぇぇ」

「いえ、それとこれとは話が別です」

 あ、運営さん立ち直った。

「プラムちゃんにぐちゃぴちゅんをしてもらうのをあきらめただけで、公開処刑は続行です」

「いやぁぁぁやめてえぇぇぇぇぇぇ」

「はあ、でもこの汚れた心、どうしましょう」

「運営さん、それは汚れてるんじゃなくて疲れてるんだよ」

「そんな、私には癒しなんてないし」

「済まなかった。サブリーダーがあんなのなばかりに、みんなを疲れさせて」

 あれ、この人どこから、って人型だから運営か。

「毛皮丸君初めまして。プロジェクトリーダーです」

「あ、お世話になってます」

「いや、こちらもデータは有用だからお互い様だ。むしろ、君に迷惑をかけたことを謝罪したい」

「いえ、済んだことです」

「ご家族には謝罪に伺ったんだが、君の方には会いに行けていなかったんだ」

 ああ、そっか。あんまり実感ないけど安全管理で瑕疵が出たから、責任者が頭を下げるのは当然なのか。

「君のアバター整備の担当を私とオラトリオでやっていて、関係各所への説明とかもろもろ終わったのがようやくで先ほどだったんだ。申し訳なかった」

「い、いえ、頭を上げてください」

「ああ。で、だ。先ほど美穂さんに指示した奴から芋づる式に飢えのやつまでかかわった連中が逮捕された。まだ、隠れているやつがいるかもしれないので頭にひとまず、とつくが、安全が確保された」

 なるほど。それでようやく顔を出す時間がつくれたのか。

 しかし、逮捕か。そりゃそうだよな。いきなり目の前に出てきて対決、捕縛して引き渡しとかイチ高校生にできるわけがない。

「要件はそれだけですか?」

「ああ。末席に伝えて安心を、と思ってね」

「わかりました。ありがとうございます。で、こんなところでこんな話をしていていいんですか?」

「他のプレイヤーにはあのサブリーダーへの愚痴を長々と垂れ流しているように見えるよういろいろといじってるから大丈夫」

 さすが。

「で、はからずしも知ってしまった部下の心労はどうしようか」

「モフモフすればいいとおもうよ」

「え?」

「そうモフモフの偉大さは人類すべてに伝達されるべきであの柔らかさと手触りたとえ熊系の剛毛の手触りでもそれが鳥類の羽毛であろうとモフモフすればその人はすべてを忘れて没頭してモフモフのモフモフによるモフモフのためのモフモフを作り寝てる時も起きているときも食事の時もトイレの時も風呂に入っているとき買い物に行くときキャンプに行くとき登山に行くときサイクリングの時トライアスロンの時家族団らんの時勉強の時読書の時一人でモフモフ友達とモフモフ恋人とモフモフクラスでモフモフ会社でモフモフ学校でモフモフ国会でもモフモフテロ組織だってモフモフ赤ちゃんもモフモフ幼稚園児もモフモフ小学生もモフモフ中学生もモフモフ高校生もモフモフ大学生もモフモフ鼻先から尻尾の先まですべてを愛し捧げそれはアガペーむしろ崇拝」

「お、おう」

「聞いてますか!?」

「は、はい!」

「つまりアニマルセラピーですよ!せっかくのこの世界なんです。モフモフして癒されればいいじゃないですか!」

「な、なるほど」





「ねー、終わったんなら出してよー。放置しないで―。ねぇってばぴちゅん」

 再開したのは一時間ほどたってからだった。

 おや、いったいどこでこんなに時間を使ったんだろう。


この世界いったいどこにまともな人がいるんだろうか。

どこぞの二刀流の黒の剣士さんのように現実世界で犯人をぶん殴る展開にはなりません。警察だって無能じゃないんです。

12:00更新は掲示板回となります。

海はまだまだまだまだ引っ張ります。

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