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20モフ目

お読みいただきありがとうございます

 おはようございます。起きても僕の尻尾は編み込まれたままです。

 さて。今日の朝ご飯は何かなっと。

「うむ。息災のようだな、毛皮丸よ」

「何でここにいるんですか、師匠」

 食堂には、僕に【陰陽】を教えてくれたタヌキのドーマン師匠がいた。

「なに。わしの故郷も米が主食でな。たまに食べたくなるとここに来るだけの話よ」

 米は正義!

「なるほど。そうだ師匠聞いてください」

「む?」


「なるほどのう」

 麦とろ定食をぱくつきながら昨日のマンモス戦のことを話す。

「確かに技術として符を重ねる方法はある。しかし、偶然とはいえ自らその方法に気づき成功させるとはな」

 師匠の土手煮もうまそうだな。

「術が逆流してきたのは単純にお主の技量不足だ。今の技量で扱えるのはせいぜい三枚が限度だろう」

「なるほど」

「扱いきれぬほどの力を無理に発動させたために魔力回路損傷などとなる。ちなみにこれがもっとひどいと魔力回路破損となり、かなり高度な治療を継続して受けないと治癒しないので注意するように」

 こわっ。

「さて、符重ねができるようになっているのなら、少々遅いがこれを渡そう」

「これは?」

「手引書の中級編だ」

 そんなものあるんかい!

「実のところ、威力が上がらなくなったあたりで一度相談されるかと悠長に構えていたところもある。その点は謝る」

 あ、はい。米が食べたいばかりに先に先に来たのは僕です。

「その本の内容を修めたらまた顔を出せ。上級編を渡す」

「わかりました」

「では、わしは行く」

「ありがとうございました」


 さて、これからどうするかな。短期的な目標は達成してしまったし。

「やほー、毛皮丸。道端でぼーっと突っ立ってどうしたの?」

「モフナーか。いや、米を手に入れるという短期的な目標を達成したからこれからどうしようかと思ってね」

「次の街に行く?」

「それもいいけど自分用の拠点も欲しいしなぁ」

「家でも買う?」

「土地ごと指定できるスキルがあるんだよね」

「なにそれ!?」

 おっと。これはしまったか?

 モフナーに襟首をつかまれがっくんがっくん前後に揺さぶられる。

「ちょ、わ、わかった、話すから、話すから放して」

 だって一回頭が往復するごとに地味にHPが削られていくんです。

 そうして僕はモフナーの手腕(物理)により、地鎮のことをあらいざらい吐かされた。


「そんな便利なものがあったなんて」

「まだ一回も使ってないからどうなるかわからないけどね」

「ギルドとか作りたいプレイヤーにとって垂涎のスキルだよね」

「いろいろめんどくさいけどな。僕だからこそこの短期間でとれたんじゃない?」

「それはあるかも。掲示板には載せる?」

「決めてない。でも、載せるなら次の街に行ってからかなぁ」

「好きにするといいよ」

「で、これからどうするかなんだけど」

「私は一度ベルトリスにもどるつもり」

「そか。僕も戻るかなぁ」

「一緒に行く?」

「でもログイン時間は?」

「世の中は今日からゴールデンウィークというものでして」

「……そっか。もうそんなになるか」

「湿っぽいのはなしなし。ギルドで輸送依頼とかないか見てみない?」

「そだな」


「これとこれとこれとこれが採取依頼で達成済み。マンモスの討伐はこれ見せればいいんだよね?」

「は、はぃぃぃ、依頼報酬が……」

「で、こんだけの輸送依頼を受諾で。アイテムボックスで運んでいいんだよね?」

「大丈夫ですです、はい」

「私はこれだけ受けるね」

「はいぃぃぃ、これで手続き完了ですぅぅぅ。荷物は裏に回ってもらえますか?」

 持っていたドロップ品などで複数の依頼を達成して輸送依頼を受諾する。

 いやあ、アイテムボックス可でよかった。ベルトリスで受けた配達依頼は不可だったからな。

「じゃ、行くか」

 荷物をすべてアイテムボックスに収納し、ベルトリスに向かって出発する。



 二日かけて淡雪をクラスチェンジさせたストーンサークルまで来た。

「モフナーごめん、ちょっと寄り道」

「クラスチェンジ?いーよー」

 ようやくシンシナティのクラスチェンジをやってやれる。

 一緒にいたドリーとマイスナを待たせ、馬具を外す。サイズが変わったら大変だからな。

 ……馬具が調整で聞かなかったらどうしよう。歩くか、ここで作るかすることになるな。

「さてやるか、シンシナティ」

「ぶるるる」

 ≪従魔:シンシナティのクラスチェンジを行ないます。クラスチェンジ先を指定してください≫

 魔法陣が光ったところで流れるシステムメッセージ。

 選択肢は


ホワイトホース


ドサンコー


バトルホース


 三つもあるんですか。

「どうしたのー?」

「選択肢が三つもある。ホワイトホース、ドサンコー、バトルホースだって」

「なにそれ」

 淡雪もトトも一択だったからなぁ。分かれるにしてももっと先かと思ってたよ。全部同じように分かれるんじゃないんだな。

 さて、どうしよう。これ、【識別】とか効くのか?

 ……ダメでした。うーむ。素直に一番上を選ぶか。

 白い光に包まれてクラスチェンジが完了する。


ホワイトホース:シンシナティ Lv:1


 HP:192 up

 MP:61 up



 STR:28 up

 VIT:25 up

 DEX:14 up

 AGI:37 up

 INT:16 up

 MIN:16 up


スキル:疲労軽減 障害踏破 跳躍 暗視new 耐暑new


 移動に便利なスキルが生えたな。

「真っ白になったねぇ」

 結果を知りたくてうずうずしているモフナーに、ステータスウィンドウをスクショして送ってやる。

 ちなみに尻尾の編み込みとリボンはクラスチェンジしてもそのままだ。

 取るのを忘れてただなんて言えない。

 馬具は……そのままつけれるな。

「アダムスのクラスチェンジは別ルートにしようかなー」

「アダムス?」

「あれ?うちの子の名前言ってなかったっけ?」

 今明かされる驚愕でもない事実。ちなみにウサギは雪見、ぴよこはぴーというらしい。

「さて、行くか」


 その日の夕方にはベルトリスまで戻ってこれた。納品先である冒険者ギルドで荷下ろしをする。アイテムボックスから取り出すだけの簡単なお仕事です。

「ありがとうございました。依頼達成です」

「では、これで」

「あ、毛皮丸さんは少々お待ちください」

「僕だけ?」

「はい。今回の依頼を持って毛皮丸さんの依頼達成数が500を超えたのでギルドからの表彰と粗品があります」

「えー、めんどくさい」

「いえいえ、式なんかなくて本当に表彰状と粗品を渡すだけですから」

「んー、ならいいか。っていうか500もクリアしてたか?」

「えっと、魔物よけの柵の作成がすごい数で達成になっていますが」

 え?【儀式】の熟練度上げに何度も受けてたけどそんな数になるか?

 もしかして柵十個くらいで依頼一つ分とか?そう考えると、作った数と達成数の釣り合いがとれるな。

「じゃあ、私は行くね」

「はいよ」

「ではこちらの中から二つお選びください」

 二つももらえんの?

 ふむ。

 渡された羊皮紙には結構な数のアイテム名が書かれている。っていうか粗品レベルじゃないぞ。

 ざっと目で追ったところで気になるものは多いな。振動低減馬車、モンスターの卵、読むだけで魔法が使えるようになる本。

 そしてひときわ目を引くこれ。

「では、空間魔法の書と儀式魔法核(極大)でお願いします」

「それでよろしいのですね?」

「はい」

「では、ギルドの中までお願いします」

 儀式魔法核。これ、魔法核生成ためせるんじゃね?対象となる核を持っていなかったから試すことができなかったけど、これはきたんじゃね?

 だって選択肢の中に浮遊岩核っていうものがあったから。うまくいけば空飛ぶ拠点が作れるんじゃね?うまくいったときのための拠点移動手段のために空間魔法の書ももらったし。

 すぐに進めたいけど時間が時間だから明日だな。

 きょうはほんをよんであしたにそなえよう。

 どきがむねむねするな。




 おはようございます。太陽はまだ昇っていないけど、僕は元気です。

 だってテンション上がって上がってしょうがないんだもの。

 空間魔法は無事に覚えることができた。特定の二点間の移動がせいぜいだけどな。ま、それはいいや。

 では、広場にいって、早速魔法核生成発動。

 ≪広さが足りません≫

 え?

 無慈悲なるシステムメッセージ。

 ここでできないと街の外に出るしかないか。

 しょうがない。シンシナティに乗ってさくっと移動しましょう。


 ≪魔法核生成を発動します。発動すると術者は一週間この場より動けなくなります。よろしいですか≫

 おいいい。ちょっと待って。キャンセルキャンセル。

 見過ごせないメッセージが流れましたよ?これはまずい。先に魔物よけの結界を張って、これを【祝福】で強化。熟練度が上がるとこんなこともできるらしい。


結界 消滅まで:2W1D12H


 二週間と一日。十分だな。一応淡雪、トト、ドリーの戦闘向けメンバーにしておこう。

 では改めて。魔法核生成発動。


 それから一週間。とても暇だった。

 だってさぁ。魔法核生成の魔法陣が発動した後ずっとそれにかかりきりになるかと思ったら、魔法陣の中にいるのが必要なだけで、僕がやることなんかないでやんの。暇で暇でしょうがない。

 でもそれももう終わる。

 ≪浮遊岩核の生成が終了しました。続いて岩殻の生成に入りますか?≫

 もちろんです。

 ≪周囲に取り込める岩石がありませんでした。岩殻生成を終了します≫

 な……んだと。

 ≪以降、核に岩を接触させることにより取り込むことができます≫

 これは岩を集めざるを得ないな。

ぽーん

『やっほー毛皮丸。第二陣の情報って聞いた?』

『いや。そういえばもう来てるころだっけか』

『それがね。最初の地点がパツダじゃないんだって』

 なんですと?

『なんでもこの大陸の反対側が開始地点になっているらしいよ』

 うわー。運営やるな。第一陣の攻略情報がほとんど意味をなさないのか。

『情報さんきゅー』

『クラスの一部が第二陣で来てるんだけど、毛皮丸に合う予定が狂った―っていってた』

『それは頑張って攻略を進めないといけないな』

『それじゃ、またね』

 運営め。開始時期ごとにスタート地点を変える気か?それはそれでありかもな。

さて。すぐに会えない悪友どもことはひとまず脇に置いて蹴り飛ばしておいて。

 どこにいけば岩があるだろうあ。ストーンサークルやストーンヘンジの岩を使うのはまずいよなぁ。

 うん。とりあえず米喰いに行こう。


明日も更新します

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