表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

僕の家とは反対の電車に乗って二つ目の駅を降りて、数分歩いた所に宏美さんが大家の貸しアパートがある。一階にある宏美さんの部屋をヒデ兄がノックした。

「彼氏だったら合鍵ぐらいもらっとけよな。」

僕がヒデ兄の横っ腹を小突いた。

「うるさいな、持って出るの忘れたんだよ。」

ヒデ兄が『ふん』と言っていると奥から『はい?』という返事と共にドアが開いた。

「なんだ秀樹か、鍵ぐらいちゃんともってこい出てよね。」

「怒られてやんの、宏美さん晩ごはんご馳走になります。」

僕は宏美さんに向かって手を合わせ、遠慮なく宏美さんの部屋に上がった。

「今日は私張りきって作ったから沢山食べてね。」

「もちろんですよ。」

ふと足元を見ると宏美さんとはサイズが少し違う女物の靴が一足チョコンと並べられていた。

「誰か来てるのか?」

ヒデ兄も知らなかったらしく、部屋を覗き込んだ。

「実はちょっとヒロ君に紹介したい人がいてね、会ってくれる?」

そういうことか、僕は小さくため息をついた。

「部屋まで来て会わずに帰るのは相手にも失礼だろ。」

そう言って僕は部屋に入っていった。小さな部屋の真ん中にある長方形のテーブルの向こう側に、その人は長い髪を肩に乗せ、細い足を二つ折りにして座っていた。

その人を見たとたん、僕の真っ白だった心の中に筆がサラッと触れた感じがした。

「彼女は進藤由紀(しんどうゆき)さんよ、私の大学の後輩でいつも堤防で海を見ているヒロ君と話がしてみたいて言っててね、今日呼んだのよ。あれ、ヒロ君?」

僕はいつの間にか鞄からキャンパスノートを取り出し『進藤由紀』を描いていた。僕の心の中に色が付いていくように、僕はこの人に『恋』という色に染められていく予感がした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ