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 人が堕ちていくのは一瞬でも、人が実際に落ちていくのは一瞬ではないと知った。実際に、僕の体はスローモーションのようにゆっくりと落ちていく。

 一分ぐらい経ったのではないか、と閉じていた目を開けてみるが地はまだまだ先。確実に地に近付いているのだが、これほど長いと、これから起こるであろう痛みに身震いもしてくる。だが、これは仕方がない事だった。

 目を再び閉じて今度は(本当につい先ほどの事なのだが)落ちた瞬間を思いだしながら、身体で世界を感じる。

 足が地から離れて宙に舞ったあの瞬間、これほどの解放感はないと思った。手足が風だけに任されてぶらぶらと左右に踊ると、自分の手足なのに別の生き物のように見えた。

 ある説によると、人間の身体と言うものは魂の入れ物だけの存在であって、身体が本体ではなく魂が人間の本来の姿であるらしい。人は死んだ後、本来の姿に戻るだけなのだ。だから、今この風だけに任されてぶらぶらと踊っている身体は別の生き物と認識してもいいはずだ。怖い事は何もない、はずだ。

 そんなくだらない事を考えているうちに、ふと目を開けると、コンクリートの地面は目の前だった。

 嗚呼、これって何て言うんだっけ、暗転?と軽く頭を過ぎったが考え直す。何故ならば、演劇などでは通常、舞台を真っ暗にして暗転し第二幕へと移るのだが、僕には場面が変わるような第二幕なんて存在しないからだ。

 これにて終幕。

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