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昔のはなし(七年前)

昔のはなし(七年前)


 「よく、世界にはたくさんの可能性に満ち溢れているとか言っている鼻たれ小僧がいるけど、そんなのは嘘っぱちだ。世界にはな、味わうべきたくさんの絶望と、砂漠にある米粒ほどの可能性しかないんだよ。米粒だぞ、米粒。そもそも、可能性は溢れるべきものじゃねえよな」

 授業参観でたくさんの父母が教室の後ろで自分の子供の成長を見ようと集まった中、担任の竹田先生は教卓に着くなり、つまらなそうに呟いてから算数の教科書を開いた。

 竹田先生はよくこの様な、あまり小学生には言わないような話をしてから授業をはじめる。まさか授業参観の日までこんな話を切り出すとは思わなかったので、前々からこの担任ちょっとおかしいぞ、とみんな薄々感じていたものの、僕たちは驚きを隠せずにいた。 実際には見ていないが、恐らく授業参観に来ていた後ろにいた父母達も驚いたことだろう。

 そんな僕らを無視して竹田先生は、じゃあ五十二ページ開いて、と言ってから黒板に練習問題を書き始めた。僕はみんながするように慌てて教科書を開き、ノートを開き、問題を解こうとシャーペンを持ち、姿勢を正したが、先ほどの竹田先生の言葉が頭から離れず、思わず手が止まる。

 こめつぶ、と小さな声で復唱してみる。米粒、米の粒とまた呟く。皆がシャーペンをカリカリと動かす音で僕の小さい声は簡単にかき消される。

 米粒ほどしかない可能性に絶望するよりも、果たして僕は広い砂漠の中でそんな小さな可能性に頼るのだろうかと考えてみた。だが、つい最近十二歳になったばかりの僕は砂漠に行った事がなかったので分かるはずがなかった。

 じゃあ砂漠に行くのはいつになるのだろう、とふと考えた。

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