前書き
県立富士葉理高校。そこは、数年前まではごく普通の高校であった。しかし、この高校の敷地内にある古より伝わりし歴代校長の像が破壊されて以来、不可思議な現象が起こり始めた。
何が起こり始めたのか。具体的には学園祭や体育祭など、ある人たちに対して上下や勝ち負けが発生する行事において、負けた方に良くない事が起こるようになってしまったのだ。
はじめの数年はまだ良かった。何もないところで転んで擦りむいたり、重くても学園祭で展示した作品が原因不明の出火によって消失する程度だった。それでも当人たちにとってみれば、時間をかけて作った作品がダメになってしまうのだからたまったものではないのだが。
だが、昨年の体育祭。ついに死者が出た。死んだのは二年生の生徒で、運動能力のテストで学年一位をとるほどの生徒だ。五チームに分かれて行われる体育祭。優勝候補はほぼ二つのチームに絞られ、その雌雄は最後のリレーに託された。その少年は、各チームのエースがひしめくアンカー直前のランナーを務めたが、バトンを落としてしまい、それが原因でチームは負けてしまった。
最後のリレーは落としてしまったものの、総合二位という結果に満足した彼ら。しかし、週のあけた月曜日に全校集会で彼等が聞いたのは、あまりに衝撃の強過ぎるニュースだった。
バトンを落とした少年は、自宅で変死していたのを発見されたのだ。その死に方も奇妙で、まるで何かに怯えるように大口を開けて、トイレの便座に座っていたという。
勝負事のあとの凶事はもうすでに全校の知るところとなっていたので、これもその事が原因だとすぐに全員が考えた。
ついに死人を出してしまった。このことは教師たちにも非常に重く受け止められた。体育祭の直後に開催される学園祭も、職員会議のすえに中止の取り決めとなった。毎年、学校の周囲に住む人々も多く来場し大変な賑わいをみせる学園祭で、多くの反対にあうものかと教師たちは考えたが、生徒たちは素直にその決定を受け止めた。はっきりと決まってないとはいえ、原因はおそらく例の祟りだとだれもが考えていたからこそ、反対はなかったのだろう。
一月後。学園祭が本来開かれる予定であった日の翌日。全校朝礼。
「えー。みなさまに大変残念なお知らせがあります。生徒会長の山田太郎君が亡くなっているのが今朝分かりました」
ざわざわと、あちらこちらで話し声が起こった。校長はあえてそれを止めることもなく、事の経緯と残りの諸連絡を済ませてその日の朝礼は終了した。
学園祭の後も、二、三の行事が中止となったり、延期となったりしたが、その度に死者や怪我人が出た。祟りに関する生徒の噂もある結論に達しようとしていた。
「歴代校長の像は血を求めている。それは勝負に負けたものの血である。もし勝負を辞退するなら、もっともその行事に対して責任を持っているものが犠牲となる」
これから読むお話は、そんな噂の渦巻く中執り行われることとなった、血で血を洗う体育祭のお話である。
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