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バグズ・ノート  作者: 御山 良歩
第四章 最古の恐怖
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五十八話 堕ツル太陽

この物語は、作者の中二病で汚染されています。

お気をつけを。





 深刻な損傷確認―――修復必要

 修復開始―――修復完了

 修復完了―――内部エネルギー不足―――修復率63パーセント

 エネルギー不足―――エネルギー不足―――エネルギー不足―――外部よりエネルギーを確保を推奨

 エネルギー確保―――捕食によるエネルギー確保推奨

 巨大エネルギー発見―――捕食―――捕食―――捕食―――捕食―――捕食―――捕食―――捕食―――捕食

 (ガガガ、ピー)捕食―――捕食―――捕(ガガ、ピー)―――捕喰―――捕喰―――捕喰―――捕喰―――捕喰


 空腹―――エネルギー確保―――巨大エネルギー発見

 捕食―――(ガガガガ、ピーー)―――喰―――喰――喰―喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰喰―――






―――ひひひ、やっぱりこうなっちまったか。


―――人間性と同時に理性まで捨てるなんて、とんだ大馬鹿野郎だなあ【俺様】よ。


―――ちょっくらやばいが、まだいける。


―――【俺様】だけが犠牲にさせるわけにはいかんからな。


―――俺もしばらくぶりに、命をかけるとしましょうかね。




          *




 その姿は、紛れもなく異形とでもいうべき姿であった。

 辛うじて人としての原型を残していた上半身は消え去った。

 まるでワームのように滑らかな流線型をし、漆黒の殻の継ぎ目からは黒い炎が吹き出る。

 凶悪なまでの鋭さを誇る尾はその数を二つ増やし五本に、六本の脚はまるで盾のように分厚く平たく変化し大地を噛み締め、胸部を中心に描かれた太陽を抽象化したような紋章は背中へと移り、全身には幾何学的な模様がはしる。


 異形には二つの大きな特徴があった。

 一つ目の特徴は、頭―――巨大な顎であった。

 頭と思わしき部分を半分ほどまで裂く巨大な顎からは、継ぎ目から漏れる炎とはまるで別物の深く底の見えない漆黒の炎が漏れ出る。

 鮫の口のように、ぎっしりと敷き詰められた牙の奥からは血を求め飢える獣のような息が唸る。

 二つ目の特徴は、その背に負う巨大な歯車。

 どす黒い赤が、まるで血管のように走る歯車は見るものを怖気で凍らせかねないほど不気味であり、異異形の背中の上に浮きながらゆっくりとゆっくりと右回りに回転する。

 その姿には、以前の原型はなかった。

 だが、眷属達には理解できた。


「主様っ!!」


 それが自らの創造主であることを。

 そして、眷属達は気づいた。

 自らの創造主の異常さを。


「グラス!アゲハを戻せ!」


「はいよっ!」


 地平線のかなたから音の壁をぶち抜いて現れたグラスは、ラリアットをするように主の元へと飛ぶアゲハを抱え、その場所から離脱した。

 アゲハは、その特徴により眷属達の中ではあまり体が強いほうではない。

 硬質な装甲もないし、再生能力がずば抜けている訳でもない。

 速度を緩めることもなくぶつかった衝撃は、大怪我とまではいかないが、確実にアゲハを傷つけてしまうだろう。

 しかし、ベルゼ、そしてグラスの判断は間違ってはいなかった。

 当人達も、間違っているとは微塵も思わなかった。


 ガシュッと、何かが削れる音が小さく鳴った。

 異形の口が、少しだけ開き閉まったことからその音であることは理解できる。

 異形の周囲が―――綺麗に真ん丸に消滅していなければ。 


『ギギギギギギギガガガガガガゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!』


 言葉として意味を成さない、ただの文字の羅列が異形の口からは放たれる。 

 だがその瞬間、全身の模様が一瞬にして大量の文字列へと変化し、光を放ち始める。

 知識を持たない愚者でも理解できる模様―――魔方陣へと。

 

『ギガゲゲゲガギギギゲゲゲゲゲゲゲ!!!!!』


 異形の咆哮と共に、体中にびっしりと刻み込まれた魔方陣が古文的な糸のような文字に、そして象形文字、何らかの絵、大量の漢字と次々と別のものへと変化していく。

 だが、光が収まることはない。むしろ、徐々に光はその密度を上げ、辺りを白へ染めていく。

 光が直視できないほどにまで達したとき―――魔術が発動した。

 炎の塊に雷が巻きつき、岩と氷の欠片がその周りを公転する。闇と光がその上を雲のように渦巻き、小さな小さな死の星は流動する。

 無茶苦茶だ。もはや、魔術というのも馬鹿らしいただの力の塊。

 

 だが―――脅威でないはずがない。そんな無茶苦茶なものが。

 

 少しでも術式が乱れようなら、あの塊は一瞬にして爆散し、この星に巨大な穴を作り上げるだろう。

 下手したら星の質量を削りきって公転の軌道すら捻じ曲げかねない。

 そう豪語できるほど、限界すら超えて力が捻じ込まれていた。

 全ての属性がぐちゃぐちゃに混ざり合った小さな星はより混沌へと変化していき―――その横っ腹を巨大な足が蹴り飛ばした。

 巨人の足だ。

 死の星もろとも蹴り飛ばされた異形は猛烈な速度で吹き飛び山へと突き刺さり、死の星も巨人に触れたことによって消え去った。


「主様っ!!」


 アゲハの悲痛な叫び声が聞こえるが、ベルゼは内心ほっとした気持ちで一杯であった。

 あれほどのものが今この場所で放たれていようものなら、どれほどの被害がでたかわからない。

 この大陸全てが蒸発しかねなかった。それは過言ではなかった。 

 しかし、自らの寵愛を授けた者―――レイラがいる近くでそんなものを放とうなど正気の沙汰ではない。

 そう・・・正気じゃない。


「・・・主様の様子がおかしい」


「そんなこたあ見りゃわかる。どうするんだ兄貴、足止めしようにも、進化した親父の相手なんて巨人よりも厄介だぞ」


「主様は私がっ!」


「無理ですアゲハ。先ほど地面が削れたところを見ると、我々を認識することすら出来ていないようです。あなたの機動力では、喰われかねない・・・巨人の怪物もいる中で、一人でも戦力を減らすことは得策ではありません」


「ですがっ!」


「大丈夫です。策はあります」


 ベルゼが頭を上げると、丁度真っ黒な影が崩れた山の中から飛び出した。―――異形だ。

 全身の甲殻はひび割れ、隙間からは黒い炎が噴出しているが、倒れそうな様子はまるでない。

 異形の口にはいつの間にか、真っ赤な塊が咥えられていた。

 それは―――巨人の肉片であった。

 ふと巨人を見れば、気がついてはいないようだが確かに親指の肉が深く抉れていた。

 異形は実に美味そうに、肉片を咀嚼する。まるで、極上の甘露を味わうように。

 

「・・・主様は、一度死に掛けてから生き返っています。おそらく、進化も同時に行ったためか極度のエネルギー不足に近い状態のはず・・・この世界を守る、我々の目的は変わりません。グラス、上手く誘導して主様を巨人にぶつけなさい。巨人を食わせてエネルギーを確保できれば、もしかすれば正気に戻る可能性もあります」


「・・・骨ぐらいは拾ってくれよ」


「残っていたら考えておきますよ」


 ちっ、と舌打ちしてグラスは異形の元へと跳ぶ。

 状況は絶望という言葉すら生易しく思えてくるレベルだ。

 主力であり、最後の鍵であるムーは暴走状態。

 敵である巨人は恐怖を啜り成長し、神へと至っている。

 グラスにはああいったが、上手く誘導どころか近づいた瞬間喰われる可能性だってある。

 だが、グラスはあえてそれを承知した上でその任務を引き受けた。

 自分の犠牲で、主の世界が救えればと決死の覚悟で死地へと向かった。

 ベルゼも、それ承知した上で命を下した。

 もはや、個人の感情など優先している状況ではない。

 そっと、ベルゼは箱へと触れる。

 自らに下賜された【廃具の棺】。

 中にあるのは、宇宙規模の戦争が行われた世界で神が収集した兵器群だ。

 その中には、現状を打開する可能性のある兵器もある。

 しかし・・・それを展開するには、あまりにも強固な覚悟が必要である。

 命など惜しくはない。だが使えば・・・主の二の舞になる危険性すらある。

 惑星すら容易く破壊する無数の兵器群の中でも極めて異質。

 享楽的な蝿の神をもってしても、決して使うなと厳命された三つの兵器。


「上手くやれよグラス・・・私とてこれは使いたくない」


 ベルゼは巨人へと足を進める。

 自らの愚かで愛しき弟を信頼して。


「主様・・・どうか・・・」


 何も出来ぬアゲハは祈ることしか出来ない。

 誰に祈るか、それすらわからなくても。

  




          *





―――オーイ、ソロソロ起キテクレネエカ?


「うーん・・・」


 だるい体を無理やり起こし、妙に耳に響くダミー声のほうへ向く。

 目に映るのは、一面黒の世界。

 何故だ。もう一人の俺が言ったとおりなら、俺は元の世界へ戻っているはずだ。


―――オーイ、コッチ見ロッテ


「・・・うるせえな・・・ってお前は・・・」


 耳障りなダミー声のほうを向くと、そこにいたのは先ほど見たばかり青白い人影があった。

 器用に空中で足を組み、両腕を一直線になるように伸ばしている。

 しかし・・・


「なんかお前小さくなってないか?」


 そう、もう一人の俺は異様なまでに小さくなっていた。

 見上げるほど背丈が、いまや手のひらサイズだ。


―――ソリャソウダ。体ノ大半アゲチマッタンダカラナ。ソレヨリ一言言ワセテクレネエカ?


「なんだ?」


 もう一人の俺は、胸が膨らむほど息を吸い込み―――


―――バーーーカッ!!! 


 ―――出せるだけの声で俺に罵声を浴びせた。

 全く持って意味がわからない。

 もう一人の俺に語りかけられ人間性を捨ててまで現実世界に戻ろうとしたら、いきなり罵倒された。

 

「・・・意味がわからないんだが」


―――ソウダロウナ、ナンデ俺ガコンナコトイッテイルノカモワカラナイハズダヨナ。


―――教エテヤルヨ大馬鹿野郎。・・・誰ガ人間性ト一緒二理性マデ捨テロッテイッタ。


「・・・はっ?」


―――マア、予想ハシテイタサ。言葉ガ使エナクナリ、感情ガ薄クナル程度ハ覚悟シテイタサ。


―――ダガナ、マサカ・・・マサカ理性全テヲ捨テテ本能ノママニ暴走サセルトハ思ワナカッタヨ。


―――オカゲデ地上ハ大惨事ダヨ。見セテヤレネエノガ残念ダ。


「ちょっと待て!人間性捨てろって言ったのはお前だろ!?なんでそんなことになってるんだよ!!」


―――【俺様】ノ中デハ人間以外ノ生物ハ何モ考エテナイッテ言イタイノカ?


「それは・・・」


―――俺ガ言イタカッタノハ、人間トシテノ未練ヲ忘レテ、人間特有ノ言葉モ忘却シ、人間トシテノ体ノ動カシ方ヲ頭ノ中カラ消去シロッテナ・・・


「おい、それも結構な犠牲だろ!」


―――タッタソレダケノコトデ、覚醒ガデキルンダ。安イモンダ。


―――ソレヨリ、時間ガ足リネエ。サッキヨリモ遥カニダ。


―――今モ【俺様】ノ体ハ暴走シ続ケテル。アレ以上好キ勝手二ヤラセルノハ世界ニトッテモマズイ。


「そうはいっても・・・どうすればいいんだ?」

 

―――ソノタメニ、【俺様】二貴重ナ体ヲ削ッテマデ器ヲツクッテヤッタンダヨ。


 目の前に、全身が映るぐらい大きな鏡が出現する。

 そこにいたのは・・・青白い人影であった。


「これは・・・」


―――半分二割ッタ俺ノ理性ヲ【俺様】ノ残滓二埋メ込ンデ、俺ノ体ヲ削ッテ嵩上ゲシテヤッタンダヨ。


―――オカゲデ、俺ノ言葉モ若干可笑シクナッチマッタヨ


―――ソシテ、ソレヲ無理ヤリ【俺様】ノ体二ツナイデル。


―――今ノ体ノ支配権ハ本能ガ握ッテイル。


―――ソレヲナントカシテ奪イ返セ。


 それだけ言うと、青白い人影は徐々に薄くなっていっていく。

 まるで、霧に浮かぶ幻影のように。


「待てって!そんなのどうやってやるんだよ!それにお前、なんで消えかけて・・・!!!」


―――本能カラノ妨害ダ。シャベルコトモ辛インダヨ。


―――体トノ接続ヲ保ツコトデ限界ダ、俺ニハナニモデキネエ。


―――頑張ッテクレヤ


―――支配権サエ奪エバドウニデモナル

 

 それだけ言って、青白い人影は消えてしまった。


「・・・どうしろっていうんだよ」


 体の支配権を奪い返せと言われても、何をすればいいのかさっぱりわからない。

 どうすればいいのか・・・

 とにかく、止まっているだけでは何も始まらないので、おそらく奥だと思われる場所へ足を進める。

 体感時間で数分経った頃―――それはあった。


 空中に浮かぶ、真紅の結晶。

 俺の中の何かが、ひどく懐かしがる。

 俺は理解した。あれが俺が本来持っていた体だと。

 無言で、何かに誘われるがままにただ前へと手を伸ばす。

 真ん中にある結晶へと右手を合わせる。

 触れたところから、真紅の結晶は蒼へと徐々に徐々に変化していく。

 それに反応するように、結晶の奥から巨大な影が現れた。

 懐かしい、実に懐かしい芋虫の形をした赤色の蟲。

 まだ弱かった、あのときの俺。


 しかしあの頃と違い―――あまりにも巨大であったが。


―――ヒヒヒ、本能ト理性ノ綱引キサ。負ケタラ消滅、消エタクナキャ勝チナ


 歴史には語られず、誰の記憶にも残ることのないもう一つの戦いが始まる。

 敵は―――




『ギガゲガガガガガガガガガゲゲゲゲゲ!!!』




 ―――己自身だ。

予想以上のポイント増加と感想で大歓喜しております。

更に加え絵も貰って、超歓喜しております。


もうなにもこわくない。

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