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バグズ・ノート  作者: 御山 良歩
第四章 最古の恐怖
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五十七話 邂逅、そして・・・

 昔・・・ネロに負け、死んだときとは別の深みを持つ黒の空間を漂う。 

 痛みは既に無い。あるのは、後悔だけだ。

 ・・・負けた。

 俺は、大陸ごと巨人に叩き潰された。

 思わず、口元に笑みが浮かんでしまう。

 これほど滑稽なことは無いだろう。

 決して破壊されることの無い鎧を纏い、いつしか慢心を覚えていた。

 決して死ぬことの無いこの生命力に、いつしか油断が生まれてしまった。

 その結果がこれだ。

 おそらく、オーディン達も神界で腹を抱えて大笑いしていることだろう。

 いや、奴らなら俺が担当していた分の仕事が増えたと言って嘆くかもしれない。

 だが、どちらも俺には関係の無いことだ。もう死んでしまったのだから。

 せめて・・・レイラ達を、村の皆だけでも助けたかった。それだけが無念だ。

 言葉も通じない化け物の時でも俺を受け入れてくれた皆、その死を俺はここで待つことしか出来ない。

 真っ黒なこの世界は、まるで俺の心情を表すかのようにより深い黒へと沈んでいく。

 油断、余裕、慢心・・・何が最強か、何が不死か。

 俺には、魔神など過ぎた名前であった。

 つけるとしたら、慢神か?

 クックックと低い笑い声が闇に響く。

 

『ハッハハハハハハハハハハハハ!!!』


 軽快な笑い声が闇を満たす。

 もう、あの世界へ帰ることは出来ない。俺の死は覆せない。いかなる力を使おうと、俺の死は覆らない。ただでさえ無駄に力を持つ俺だ。それだけの量を満たすだけの力は、あの世界には存在しない。

 例え・・・あの世界全ての力を抽出しても無理だろう。それほどの生命力が、俺にはあるとオーディンに断言されている。

 まあ、無様にも死んでしまった今としては関係の無い話ではあるが。


 そうだ、俺は慢神だ。この意識が続くこの時間が終わるまで、自らを諌めるとしよう。

 次の生で、このような悲劇を繰り返さないために。


―――そいつは、困った話だな。お前さまが慢心を名乗ったら俺はなんと名乗ればいい?


 闇から、若い男の声が響いた。

 いや、違う。俺の頭に直接男の声が響いたのだ。 

 

『誰だ?』


―――半分だけ転がりな。そうすりゃ見えるはずだ。


 声の言うとおりに、百八十度体を回転させる。

 そこにいたのは、青白いのっぺらぼうの巨人であった。

 また巨人か・・・


『大方、だいだらぼっちの親か何かだろうな。お前の娘か息子かは知らんが、俺をぶっ殺すぐらい元気だよ』


 皮肉を混ぜて言葉をかけると、青白い巨人はやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。


―――予想は大外れ。俺はあの巨人の親じゃねえよ。


『じゃあなんだ?もしかして、あの巨人の始祖である本物のだいだらぼっちか?』


―――違うね。だいたい俺が巨人なわけじゃねえよ。お前さまが小さいんだ。


 青白い巨人は笑いを堪えているのか、肩を震わせて俺を指差す。

 気づけば、俺がいた場所には境界があった。

 そして、直径十五メートルほどの円の大地には、様々なものが置いてある。

 巨大な封筒、羽ペン、コップ・・・その中でも異色を放つのは時計だろう。

 大量の円盤と針が不揃いながらも規則的に動いており、長く見ていれば酔ってしまいそうだ。


―――おっと、そいつはあまり見ないほうがいい。


 そういって、青白い巨人は時計をどこかへ放り投げる。

 時計は境界のかなたへと消え、ガシャンと金属が歪む音が聞こえてきた。


『いいのか?』


―――構わねえさ。どうせ、創ろうと思えば直ぐに準備できる。まあ、長々話してもしょうがないだろう。自分の立場は理解できたか?


『・・・いやさっぱりだ。お前の言うとおりなら、ここにある物が通常サイズ・・・俺が小さいということがわかるんだが・・・というかお前は誰だ。妙に懐かしい感じはするんだが、全く思いだせん』


―――おうおうひどいねえ。まあ一発でわかったなら賞賛もんだがな。これ見りゃ思い出すかい?

 

 そういって、青白い巨人は自身の腹の部分を指差した。

 指の先を見れば、青白い巨人の腹には黒い影が落ちていた。

 いや、違う。その部分だけなかったといったほうがいいだろう。

 ぽっかりと開いた穴は、とても、非常に見たことのある形をしていた。

 上半身は人であり、下半身は蠍と・・・まるで俺をそっくり写したかのような形に。


『それはなんだ?何故俺が・・・いやまて。お前は自分が巨人ではないといったか?俺が小さいといった。つまりお前の正体は・・・』


―――察しが良いな。お前の考えは正解だ。ついでにもうちっと補足してやろう。

 

―――始めまして、いや久しぶりだな【俺様】よ。


―――俺は【俺様】が魔神になった時、その体に合わせられるため削られた魂だ。どっちかと言えば、規模としては【俺様】の方が小さいけどな。


 魔神になったとき・・・そうか、確か―――


『・・・【燃え盛る憎悪の太陽】の発動条件にあった【心身一致】・・・』


―――大正解だ。先ほどまでと違い異常に察しが良いな。頭でも打ったかい?ってか、むしろ全身だったな。


『・・・俺にしてはお前は異常に嫌味ったらしいな』


―――そりゃそうだ。俺は【俺様】の不要な部分を全て集めて作られた存在だ。その中には慢心、嫌悪、狂気、色欲、怠惰、その他もろともありとあらゆる”負”と呼ばれるべきものが集まって出来ているからな。


 青白い巨人の一言に少しむっと来たが、そこで俺はあることに気がついてしまった。

 つまりこいつのいうことを整理して要約すると・・・


『元々の俺は・・・そんなにクズだったのか・・・?』


―――カッカッカ!!!気に病むことはないぜ。どうせ人間なんてそんなもんさ。とりあえず、俺のことも現在の【俺様】の状況も理解できたかい?


『・・・俺は死んだ。そして、何故か俺の切り離された魂に邂逅している・・・これで十分か?』  


―――そう拗ねるなよ【俺様】よ。まあ、さっきの一言には若干誇張も入ってる。そう気にするなって。


 青白い巨人はそういうが、どうにも俺は気分が戻らない。

 実際に、自分の汚点を客観視と言うか量としてみると、なんか凹む・・・


―――・・・はあ。【俺様】もめんどくさいやつだな。まあいい、簡潔に話すからちゃんと聞けよ。


―――本当なら、【俺様】と俺がこうして出会うことはありえねえ。不要だと判断されて切り離されてるんだからな。


―――だが、どうしてか俺たちはこうして出会っている?理由はわかるかい?


『お前が不要ではなく、必要になったからだろう?』


―――正解だ。どうした、不満そうだな。


『当たり前だ。お前は俺の不要な部分なんだろ?今更融合したところでどうにかなるってはなしじゃないはずだ。俺の中で見ていたかは知らないが、お前だってあの巨人の強さぐらいは知っているだろう』


―――うーん・・・そうだな、逆に考えるべきだ。俺が【俺様】の不要な部分で出来たのではなく、【俺様】が必要最低限の、”本当に必要不可欠なもの”で出来てるってな。


『・・・というと、重要度が低い、もしくはあったほうがいいという部分も全てお前に入ってるのか?』


―――そうだ。あの時は急を要する事態だったからな。まあ、今がそうじゃねえってわけじゃねえが、お前の可愛い息子たちと龍、そして精霊王に仙人・・・あの世界に住む全ての強者が集ってダイダラボッチを足止めしている。今すぐ蘇生してやっても良いんだが、それじゃ罠にかかる鼠と同じだ。多少時間かけても、【俺様】を強化する必要があるってわけだ。


『ベルゼ、アゲハ、グラス、アラクネ、コーカサス、アルゼン、龍神・・・それに精霊王に仙人もでてるのか・・・』


―――それに、俺だって既に一つの人格を保有した独立した存在だ。融合なんて、なんでわざわざ俺が消えなきゃならんのだ。俺がすることは手伝うだけだよ。


『手伝うって・・・融合以外に何をするっっていうんだ?』


―――気づかせるだけだよ。【俺様】は重要なことを勘違いしていらっしゃるからな。


―――なあ、【俺様】よ。何故【俺様】はそんな奇怪な形態を取っていると思う?


―――上半身が人でありながら下半身は蠍、【俺様】は納得したが、どう見てもおかしいよな?


―――【俺様】がどうしてそんな姿をしてるか、俺は知っている。


―――捨てきれないのだろう?例え蟲になろうと、人間であった頃の幻が。


―――もう諦めな。どう頑張ろうと嘆こうと、俺たちはもう人には戻れねえ。俺たちは蟲だ。


―――創世からその姿かたちを変え生き続け、全ての大気を焼き尽くした隕石の衝突の中でも、絶対零度の氷河期の中でも行き続けてきた絶対的な強者だ。


―――言葉も不要、人間性なんて捨てろ。邪魔にしかなんねえもんなんて糞くらえだ。


―――もう一度言う。俺たちは蟲だ。


―――ダイダラボッチに勝ちたきゃ、世界を守りたければ、そのことを受け入れろ。


―――人間じゃなく・・・【俺様】が怪物であることを。


 諭すように、青白い巨人はそう告げた。

 ・・・確かに、最初は芋虫と続いて百足、そして俺は今の形態へとなった。

 だが、多少異形になっているとはいえ人としての形を残しているのはやはり俺の中で、未だ捨てきれぬ未練があったのだろう。

 エレメル村の皆のように、一人だけ別ではなく皆と同じ”人”でありたいと。

 人型は便利だ。細かい作業も、道具も器用に使える、全てが平均的な理想的なフォルムだ。 

 だが、平均では駄目なのだ。

 今の俺に必要なのは、全てを捻じ伏せる圧倒的な力だ。

 ならば、青白い巨人のいうように、俺は捨てなければならない。

 微かに残った人としての記憶、未練、その全てを。


『・・・頭が冴えた。ありがとうとでもいっておこう』


―――かっかっか。気にすんな、クライアントからの御達しだからな。


『クライアント・・・?』


―――おっと、誰かは言えねえぜ。匿名希望だからな。おっとそうだ、【俺様】に聞いておかなきゃいけないことがあったな。


『なんだ?』


 青白い巨人は口元を歪ませ、何も無い天を指差す。


―――何かに火をつけるには種火が必要だ。


―――お前の太陽は何で燃やすかって一応聞いておこうかとおもってな。


『決まってる、これだ』


―――おいおい・・・随分太っ腹だな。


 胸の中からあふれ出た光を青白い巨人へ差し出す。

 これは俺の全てだ。俺が今まで歩んできた、そして今の今まで全ての戦いで俺を支えてきた全て。

 俺が俺である、その存在全てを。


『構わんさ。まあ、多少ロキ達には申し訳ないが・・・俺は既に、蟲なんだろ?』


―――吹っ切れたか。いいだろう、こいつだけは種火には出来ねえから返しておくとしよう。

 

 青白い巨人は光の一部をちぎりとって、俺の中に押し込んだ。

 

―――【俺様】も犠牲を払った以上、俺だけ何もしねえってわけにはいかねえな。


―――太陽は燃え続ける、永遠と豊穣、そして創造を太陽は象徴する。


―――されど、我らの太陽は赤にも非ず、白にも非ず、破壊と終焉何も生み出さぬ黒き太陽なり。


―――燃えよ黒き恒星よ。


―――黒にありて、悪に非ず。魔にありて、邪に非ず。破滅にありて、創造に非ず。


―――我らは善にも悪にも、何者にも平等に破滅を齎す、全て世界で最も偉大な【黒】である。


―――さあ、正真正銘最終最後の質問だ【俺様】よ。




―――我らの太陽は・・・どこで燃える?





          *





『 一部の能力(スキル)を除いた、全ての能力(スキル)を消失しました 』


『 全ての称号が消失しました 』


『 全ての加護が消失しました 』


『 【種族属性・人間性】を放棄しました 』


『 称号【喪失者】を獲得しました 』


『 【喪失者】獲得により、秘奥能力(シークレットスキル)【燃え盛る憎悪の太陽】は、権能【唯一全宇宙論オンリーワンコスモロジー】へと昇華しました 』


『 【唯一全宇宙論オンリーワンコスモロジー】獲得により、【造盤《黒太陽創造図》】が授与されました 』


『 **より、【創世の黄金歯車クリエイトギア・ゴールド】が授与されました 』


『 【創世の黄金歯車クリエイトギア・ゴールド】と【造盤《黒太陽創造図》】、が合成されました 』


『 【創盤《漆黒恒世創造図》】、を獲得しました 』


『 【唯一全宇宙論オンリーワンコスモロジー】、を獲得したことにより能力(スキル)を獲得しました 』


『 世界能力(ワールドスキル)終焉捕食(エンドイーター)】、を獲得しました 』


『 世界能力(ワールドスキル)【不滅の陽蟲鎧】、を獲得しました 』


『 世界能力(ワールドスキル)黒色恒星暴縮炉メルトダウナー・ブラック】、を獲得しました 』


『 世界能力(ワールドスキル)【刻み込まれた禁忌の叡智】、を獲得しました 』 


『 権能【唯一全宇宙論オンリーワンコスモロジー】、を獲得したことにより【破滅の因子】を獲得しました 』


『 条件【権能獲得】【因子獲得・破滅】【歯車授与】【世界承認】を達成したため、『滅喰破蟲(イータービートル)』に転生します 』


『 **より、―――閲覧制限が解除されました―――世界より、メッセージが届きました 』


『 ようこそ、闇よりも尚深き深淵と絶望の狭間へ 』


『 破滅をもって救済となし、破壊をもって創造となす 』


『 世界で最も偉大なる黒よ。世界で最も脆弱にして強靭な蟲よ 』


『 その身に刻み込まれたのは破滅の因子。どうか汝の(きぼう)が呑まれないように 』


『 歓迎しよう。創造を捨てた者、偉大なる黒を受け継ぐもの―――四番目の破壊神 』





たくさんの感想ありがとうございました。

超ハイテンションで喜んでます。


訂正

・だいだらぼっちの親かだろうな→だいだらぼっちの親か何かだろうな

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