五十二話 断章―目覚めた恐怖
今回はなんでこんなに早いかって?
前話でネタに詰まった時にちょくちょく書いていたからさ!
今回ちょっと重いので注意。
あんまりおもいのはちょっと・・・という人は飛ばしてもおそらくOK
「うん・・・」
小さな小さな墨色の鬼は眼を覚ます。
影以外に色無き白の檻の中、墨色の鬼は起き上がる。
拘束はされていなかった。鬼は自分の体を調べるが、すべすべした見たことも無いほど編目が綺麗な白い布を重ねただけのような服に着替えさせられているだけであった。
自分は攫われた。それは理解できるが、何故攫われたのかが理解できない。
いや、その答えはすぐに思いついた。
自分たちの一族は、他の種族には無い特殊な力があった。
鬼を従える、それが自分たちが持つ力だ。
墨色の鬼は、耳にたこが出来るほど母に言われていることがあった。
『村の人以外に、心を許してはならない』
そう母は、口をすっぱくして言った。
信用はしてもいい、だが決して信頼するな。それが、母の教えであった。
墨色の鬼は、母の教えを忠実に守った。いや、守らざるおえなかったというのが正しい。
隣村に買出しに行くとき、墨色の鬼はどれだけ頼んでも連れて行ってくれなかった。無理やりついていこうとしても監視がついたぐらいである。
極々稀に村の外から人が来ることもあったが、一目見ようと思っても村中の大人が結託して墨色の鬼を村長の家の屋根裏に閉じ込めた。
不遇されているのではないかと思い泣いたこと時もあった、だがそれ以上に村人が自分を愛していることが理解できていた。
自分はこの村の中でも特に血が濃い【しそがえり】と呼ばれている。この一切混じりけの無い墨色の髪の毛がその証拠と村一番の長老は言っていた。
とにかく、すぐにここから逃げなくてはいけない。
ベッドから降りようとすると、あまりの自分の重さに転げ落ちてしまった。
はて、こんなに自分の体は重かっただろうか?まるで、鉄の塊を体中に巻き付けられたように体が重い。
だが、立ち止まっているわけにはいかないとなんとか壁まで這いずり、壁を支えにして立ち上がる。
つるつるとしてひんやりと冷たい壁が何で出来ているかも気になるが、今はここから逃げることが重要だと墨色の鬼は自分の言い聞かせる。
壁を伝って扉らしき壁の境目にたどり着くが、取っ手もなにもついていない。
無理やりこじ開けようにも、境目はぴったりとくっついていて爪も入りそうにない。
ペタペタと何か無いか探っていると、ある壁を触ったところでわずかに沈み、音も無く壁の境目が開かれていく。
何故開いたかはわからないが、とにかく今はそんなことは重要ではない。
墨色の鬼は、足早に部屋から出た。
白い部屋の次は、細長い白い部屋であった。
先ほど墨色の鬼が開けたような境目がたくさんある白い部屋であった。
また開けられないかと境目の近くの壁を触るが、境目が開くことは無い。
触っていない壁がどんどんなくなっていき、墨色の鬼の目に涙が浮かぶ。
墨色の鬼はまだ六歳だ。精神は未熟であり、涙を堪えろと言うほうが酷な話であった。
だが、無情にも触っていない壁は無くなってしまった。
もちろん、開いた境目も一つもない。
「ひっく・・・ひっく・・・うぐ・・・」
涙が止まらず、視界が滲む。
何時間も眠っていたせいかお腹も空いたし、喉も渇いている。
いつもより重い体を動かしたため、もう足を前に出すのも辛い。
最初の部屋に戻って、ベッドで少しだけ休憩しようと立ち上がろうとしたところ、ウイーンと聞きなれない音が墨色の鬼の背後から響いた。
はっと振り返ると、一番奥にあった境目が開いていた。
境目の更に奥にいたのは―――最愛の母の顔。
「まま―――!!!」
鉛のように重い体を無理やり動かし、境目へ駆け出す。
何度も転びかけるが、それでも気力を振り絞り最奥の境目を目指す。
「まま―――!!!」
墨色の鬼は、最愛の母に飛びつくように走り寄った。
一人でいたところに現れた、子供にとって救世主のごとき母親の顔。
墨色の鬼の顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
だから、気づけなかった。
「まま、まま、まま・・・ひうっ!」
母親の顔に抱きついたところで、墨色の鬼は尻餅をついた。
疑問で墨色の鬼の頭の中は一杯になった。何故自分は母に抱きついたはずなのに、転んでしまったのかと。
手元には、確かに母の顔があるのに。
そこで、墨色の鬼は気づいてしまった。母は顔しかなかった。
首から下―――綺麗さっぱり無かった。
「まんま・・・?」
顔を上げると、母の顔の横には厳つくも優しき父の顔があった。
笑いながら遊んでくれた友の顔があった。
得意げに歴史を語った長老の顔があった。
だが、首から下があるものは誰一人いなかった。
「そう、君は一人だ」
どこからともなく聞こえた声が、墨色の鬼に問う。
「両親の顔はあったかい?友の顔はあったかい?隣人の顔はあったかい?
―――ここにいない村人の顔は思い出せるかい?」
墨色の鬼は首を横に振った。
編み物を教えてくれたおばさんも、内緒と言って甘い菓子をくれたおじさんも、少し前に生まれたばかりの赤ん坊も、村人の全てがここにいる。
そして全てが―――死んでいる。
「もう一度言おう。よく聞くんだ。決して聞き間違いの無いように、聞き逃しが無いように。
―――君は一人ぼっちだ」
墨色の頭の中でそのことばが反響する。
ゆっくりとその言葉を反芻し、否定しようとし
「ああ、ああああああ―――ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
全てを理解してしまった。
頭の中が沸騰するように熱い。全身が鎖で縛り付けられたかのように苦しい。
頭の熱を取ろうと床に頭を叩きつけ、鎖を振りほどくようにのた打ち回る。
一人、孤独、誰もいない。
それらの言葉が全てが墨色の鬼の脳裏に焼きつく。
嘘だ、信じないと誓っても目の前の現実がそれを否定する。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
細い喉から上がる雄叫びは、全世界へその悲しみを知らせるように響き渡る。
だが、この閉ざされた空間に空しく響くだけ。
孤独、孤独、孤独・・・・・・・・・・・・・・・・・
たった二文字の言葉が墨色の鬼に圧し掛かる。
「あああああああああああああああああ―――っっっ!!!」
喉が潰れるほど声をあげ、涙が枯れるほど泣き、
―――プツン
墨色の鬼の中の、何かが切れた。
声は―――狂った蛇は笑う。
その喜びを世界へ示すように。
「はははははははは!!!実験は成功だ!なるべく血が濃い彼女を選んだが、隔世遺伝とはいえ純度はかなり落ちていた!それでは私の夢は叶わない!よって邪魔な鬼の血全てを抜き遺伝子を破壊し、村人から抽出した血でそれを補填する!成功する可能性は極僅か!昔の私であったなら絶対にやらない馬鹿げた行為だ!だが、我らならできる!運などではない、全ては確定された歴史!」
まるでオペラのように演技がかった口調で、狂った蛇は叫ぶ。
「さあ、さあさあさあさあさあ!暴れろ原初の魔物よ!腐った神々が創り出した停滞の箱庭を破壊してくれ!」
*
『 条件【永遠孤独】、を確認しました 』
『 条件【希望消失】、を確認しました 』
『 封印【鬼姫の愛鎖】、が解除されました 』
『 封印【鬼姫の愛鎖】、が解除されたことにより、封印されていた能力が開放されました』
『 固有能力【不朽生命】、が開放されました 』
『 固有能力【星潰】、が開放されました 』
『 固有能力【恐怖の源泉】、が開放されました 』
『 固有能力【否定理論】、が開放されました 』
『 封印【鬼姫の愛鎖】、が解除されたことにより強制的に存在進化します 』
『 『鬼人(混血・幼体)』から『星巨人(混血種)』に強制的に存在進化しました 』
『 警告、【混血】により、一部の能力と全ての身体能力にペナルティーがつきます 』
『 撤回、【隔世遺伝】及び外的要因により、全てのペナルティーが解除されました 』
『 『星巨人(混血種)』より、『星巨人(純血種)』へ変化しました 』
『 『星巨人(純血種)』に存在進化したことにより、鬼人の基礎能力を全て喪失しました 』
『 封印解除により、状態異常が【暴走】【悲嘆】が付与されました 』
『 封印解除により、身体組織が再構成されます 』
「・・・始まってしまった」
腰まで黒髪を伸ばした男は呟いた。
古き神々はそのものを呼んだ。世界最古の恐怖と。
「・・・解かれてしまった」
額から一本の角を生やした女が呟いた。
古き人々はそのものを呼んだ。恐怖を愛した鬼姫と
「もう、止まれない。止まらない」
「我らは無力、我らは非力」
「暴走は止まらない。その星を破壊するまで」
「悲嘆は終わらない。全てが絶望に落ちるまで」
「悲劇しか見えぬ未来を食い潰す蟲の神よ」
「狂った蛇の戒めを破壊する黒太陽の神よ」
「「どうか彼女の瞳に光を」」
二人の声は、闇に沈んでいった。
パソコンの対処方法に関して色々と教えてくれた方々ありがとうございました。
色々と試してみたところブラウザをファイアーフォックスからIEに変更したところ再起動がかかることはなくなりました。
何故かは知りませんが、まあ直ったってことで良いんですかね。




