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バグズ・ノート  作者: 御山 良歩
第三章 百年後の世界
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二十七話 伝説の始まり

『終わった・・・・・・』


 そう、終わったのだ。

 あの白亜の魔城―――書類の山の処理が。

 天井までぎっしりと敷き詰められてあった書類の山はもう存在せず、執務室は元の姿を取り戻していた。

 まあそうは言っても、書類だらけの散らかった部屋から、何も置いていない殺風景な風景に変化しただけだけどな。

 本棚もないし、観葉植物もなし、机とソファーは申し訳程度においてあるがそれ以外なし。

 部屋の広さが、逆に孤独感を際立てている。ああでも、梟なら一匹いたか。後、色々とスキルを組み合わせて魔改造が施された眷属が三体。

 ああ、眷属といっても虫っぽい奴はいない。全員表向きには人だ。あくまで表向きだけどな。


「はあああああああ!やっと終わったよ!疲れた・・・」


「おやおや、神であるミネラルヴァ様ならば疲労はないはずでは?」


「気分の問題だよ~」


「そうでしたか、口を挟んでしまい申し訳ございません」


「そんなに畏まらないでよ~」


 相変わらず、漫才のような会話を繰り広げるミネラルヴァと第一眷属―――ベルゼ。ちなみに本性は蝿の王だ。

 他の二体は処理済みの書類を運搬中。手があるっていいね、それでも書類の処理は俺しかできないんだが。

 本当に・・・長かった・・・。


「おっす、お疲れ様」


「なかなか根性があるさね」


『いつ入ってきたお前ら』


 この書類地獄の元凶、アマテラスとオーディンがいつの間にか入ってきていた。

 まさに神出鬼没。まあ、神出はあるが帰るときは普通にドアから帰っていくんだけどな。

 本当に、どこから入ってきてるのか。隙間でも開いてたか?


『それで、全部書類処理が終わったからには下界に降りてもいいんだよな?』


「ああ、そういう約束だしな」


「あたしらは別に止めはしないさ」


『・・・なんか引っかかる言い方だな』


「別にそんなことはないさ。ただ・・・一つ忘れてることあるんじゃないか?」


 そう問いかけられるも、まるで覚えがない。

 ・・・もしかして・・・


『眷属なら全員連れてくぞ』


「いやそっちじゃねえ」


『じゃあ・・・遊びで作ったブッ壊れ性能のチート神器か?』


「それは発案者として責任もって処理・・・はできないから封印するさね」


『他の主神の許可とか?』


「それもないな」


 思いついたことを全て口にしたが、オーディンたちの首が縦に振られることはなかった。

 ・・・もう思いつかねえぞ。


『・・・・・・棄権だ』


「おいおい、これはさっきの言葉を撤回しなくちゃいけないんじゃねえか?もうちょっと頑張って―――すいません、そのハリセンを持つのはやめてください」


 対主神用最終兵器―――痛剣《沈黙と絶叫の申し子(クライエット)》の活躍も、相変わらずだ。


『次ふざけた事抜かしたら、これを複製してお前らの部下に配布するぞ』


「ちょ、マジやめて!あいつらなら容赦なく使う!」


「それだけは勘弁さね!」


 そして二人の土下座も様になってきている。この兵器、こいつらでも対処できないぐらいえぐい設定になっているからな。

 俺もこの前ちょっと気になって自分の手を叩いた時、脊髄反射で思わず腕を引きちぎってしまった。

 一応俺の外骨格には【不壊】がかかっているが、どうやら自分が望めば切り離すことができるらしい。もちろんそんなことしようものなら激痛が走るが、ネロの一件で痛みに慣れてしまったみたいだ。

 もちろんありがたく思うことなんて一生ないが、その痛みに慣れた俺でも耐えきれない激痛とか、完璧に設定が狂っている。

 クライエットによる激痛も叩かれた場所を切り落とせば消えるみたいだ。それにしても、まさか自分の体で人体実験することになろうとは思わなかった。

 まあ、腕ぐらいならすぐに生えるからいいんだけど。


『それで?答えはなんだ?』


「ああ、うっかり言い忘れていたんだが・・・お前がここにとどまっていた時間は大体十年くらいなんだ」


 なるほど十年か・・・両手(四本あるけど)で数える程しかこの部屋から出たことなかったから時間感覚がずれちゃったんだよな。

 十年・・・レイラももう立派な成人か・・・綺麗になってるんだろうな。

 村長は微妙だったが、ミスラはかなり美人だったし将来は有望だろう。


『それで?』


「ここ神界は下界と時差が生じる場所でな、お前が行きたがっている世界はここと比べて十倍くらい時間の流れるはやさが早いんだよ」

 

『・・・・・・え?』


 オーディンの言っていることを、しばし頭の中で整理してみる。

 神界より十倍早い、ということはここでの一年はあっちで十年。

 俺がここにこもって十年ということは、あっちの世界では百年たっているということ。

 そして人間の寿命は・・・長くて百年。

 つまり―――村のみんな全滅。


『・・・っておい!誰も残ってないじゃねえか!?』


 確実に、寿命で全滅している。

 唯一レイラだけはギリギリ生き残っているかもしれないが、希望は薄いだろう。

 あの世界は俺の元いた世界と比べ、医療技術が発展していない。怪我をしても薬草を塗りこむぐらいだったし、治癒魔術も回復速度を上げているぐらいだった。(それでも、ラムールの治癒魔法の回復速度は異常だったが)

 現代の日本が最長寿国なのは、医療技術の発展が関係している。

 年をとって免疫力が落ちても、その発展した技術があるため長生きすることができるのだ。

 それが期待できないあの世界で、誰か一人でも生き残っている確率は限りなく低い。


「ちょっと言い忘れててな・・・大丈夫だ!だからそのハリセンを捨て・・・!」


『忘れてんじゃねえぇぇぇぇぇぇ!!!!』


「え、ちょ、まぁ!ひぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


『アマテラス!今すぐ出発できるか?』


 クライエットの一撃を脳天に食らいもだえ苦しむ馬鹿をほおっておき、アマテラスに問う。

 急げば、まだ生き残っている可能性がある。

 今は一分一秒も惜しいのだ。なんていったて一秒が十秒になっているのだから。


「わ、わかったさね!扉を抜けた先のところに下界への窓を作ってあるから、そこに飛び込むさ。だから、その物騒なものを降ろしてくれさね!」


『俺は先に行く!ベルゼは後で二人を連れてこい!』


「かしこまりました。いってらっしゃいませ、マイロード」


 それだけ告げて、俺は部屋を飛び出し、炎の穴の中に飛び込んで行った。

 できるならば、生きててくれ、レイラ・・・・・!




          *




「・・・大丈夫さね?」


「くっそ~あの野郎・・・力一杯叩きやがって・・・」


「それで?もう行っちまったけどいのかい?」


「いいんだよ、人の話を最後まで聞かない奴なんて・・・全く、誰も死んでるなんていってないだろうが・・・」


「紛らわしいあんたがいけないさね」  


「普通に言っただけじゃ面白くねえだろ!」


「・・・それで、本当にあのことについても言わなくて良かったのかい?」


「本当はダメなんだろうが・・・もういっちまったしな・・・」


「まあ、別にそんなに重要なことじゃないから大丈夫さね」   


「そうだな、実は全員生きてるなんて、大したことじゃないしな」


「アッハッハハッハッハッハッハ!」


「ハッハッハッハッハッハッハッハ・・・今すぐ追いかけるぞ!」


「それが、どうやらあいつが急いで飛び込んだせいで転送の座標がズレちゃったみたいさね。もう追いつくのは無理さね」


「なんだと!?くっそ・・・早く追いつかねえと、どんな目に合わせられるものか・・・」


「おそらく、クライエットが部下の手に渡るだろうさね」


「・・・他人ごとみたいに言ってるが、お前も言わなかったんだから同罪だぞ?」


「アッハッハッハッハ!そんなわけ・・・」


「ないと思うか?」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「やばいさね!?」


「だろ?」


「でももう手の打ちようが・・・」


「俺たちが下に降りるわけにはいかねえし、あの世界をくまなく調べるのは時間的に無理だし・・・」


『―――はぁぁぁぁぁ・・・やっと終わったぜ』


『くすくす・・・そんなに疲れていないからいいでしょ?それと、誰かいらしゃってるみたいよ?』


『はあ?誰かって誰・・・おお!オーディン様とアマテラス様じゃねえか!?』


『久しゅうございます。オーディン様、アマテラス様。後愚弟、言葉づかいが間違ってるわよ?くすくす・・・』


『お、おう、すまねえ姉ちゃん、だからその物騒な獲物を下してくれるとありがたいんだが・・・』


『お仕置き・・・必要かしら?』


『いらねえ!』


「あ~、ちょっと深刻な事態だから、静かにしていてくれるとありがたいんだが・・・」


「まちなオーディン・・・アゲハ、でよかったかい?」


『私ですか?』


「そうさ、もしかしたらなんだが・・・自分の主の場所とかわかるかい?」


『くすくす・・・それは大丈夫ですよ』


「おお!これなら、ギリギリ間に合う!」


「じゃあ、早速座標を教えてもらえるさね」


「それは、無理でございます。お二方」


「・・・どういう意味だ、ベルゼ?というか、まだいたのか?」


「ええ、そこにいる兄弟を連れていかなければいけませんからね・・・それでですが、私たちは主の場所はわかりますがあくまで感覚的なもの。正確なものもわかりません」


「なん・・・だと・・・!」


「意識をつなげれば一瞬で主の元まで転移できますから、そのあたりの感知系必要ないので」


「どうするさね!?先にムーのほうが気づいちまったら、あの恐ろしい未来が襲いかかってくるよ!?」


「俺のルーンじゃ馬鹿どもが確実に気づいて揚げ足とってくる・・・なんでこんな派手なやつしかないんだよ!俺のルーン!」


「それでは、全員揃いましたので我々は主のもとにいかせてもらいますね・・・いきますよ、アゲハ、グラス」


『わかりました、お兄様』


『おう、それじゃあまた今度会いましょうぜ。オーディン様、アマテラス様』


「え、ちょっとまって・・・・!」


「・・・いっちまたさね」


「・・・いっちゃたな―――じゃねえ!」


「どどどど、どうするのさ!?あいつらも行っちまったからにはもう、本当に打つ手がないよ!」


「かかかかかかか、考えろ!そうすれば、道は開けるはずだ!」


「なにか・・・そうさね、オーディン、【眼】はどうだい?」


「そうだ!その手があったか!早速・・・あれ?」


「どうかしたのかい?」


「なんか・・・使えなくなってる・・・ん?これはミーミルの奴からか、どれどれ・・・『しばらく、旅行行ってきます。眼はしばらく使えません、すいません』・・・馬鹿野郎!今行くんじゃねえ、空気読めよ!」


「本格的に、手がなくなってしまったさ!!!」


 結局、あーだこーだ言って、ベルゼ達に伝言を頼むことを思いつくのは一時間後であった。

ううん・・・もう進化できないしな・・・。

そうだ!タイトルを変えよう!似たようなタイトルもいっぱいあるし、心機一転で!

ということで、タイトル変えます。

候補は「バグノート」か「バグレポート」。

他に何か良さそうなやつあったら教えてください。

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