十三話 就職試験~面接編~
〈side ラムール〉
「ぎゃあああああああああ!全員、逃げろぉぉぉぉぉ!!」
こんにちは、現在〈エレメル村〉にて、実況をしております。元受付にして現臨時ギルド長Rです。
そして、今ここでは阿鼻叫喚といった具合な事態が発生しています。
そう―――モンスターの出現です!
国すら恐る、《特殊災害指定個体》の国家級の混沌百足が突如出現したのです!
村の中心にいた鋼装巨蟲の影から、飛び出してきたのです!そこから察して、鋼装巨蟲はおそらく混沌百足の僕なのでしょう。
「くそっ!なんで生きてやがんだよ!?」
「ここは俺たちが食い止める!B部隊は住民の避難を!ほかは俺に続けっ!」
「「「「「「おおっ!」」」」」」
住人は逃げ惑い、冒険者は決死の表情で立ち向かっています。
おお!えっと・・・冒険者Aが今、紫色に光る槍を構え、突っ込んでいきました!
しかし、残念!いともたやすく跳ね返されてしまっています!あ、槍が折れました!
今度は、十人ほどの屈強な男たちが、隊列を組んで突撃していきます!
おおっと!ここでついに、魔術が発動しました!火の玉です!でも正直そんなに熱くなさそうです!燃え盛る火の玉が、混沌百足に向かって突き進んでいきます。
しかし、混沌百足も負けてはいません!絶えず繰り出される火の玉を、全て両脇にある大きな紅鎌で切り裂いています!
さあ、両者の戦いの決着はどうなるのでしょうか!?
『―――実況しなくていいから、さっさと誤解をといてヤツらを止めろ!!』
・・・やれやれ、折角いい気分で実況していたのに、止められてしまいました。
では、無謀にも立ち向かっているシグルたちを止めにいくとしましょうか。
あ、あと、エレメル村の人たちも連れて来なければいけませんね。
本当に、仕事が増えてばかりで困ります。自業自得ですが。
〈sideout〉
*
・・・やっと終った・・・。
あの後を解説すると、森羅万象辞典俺読めなくても、ラムールは読めるんじゃね?→早速渡す→渡した瞬間消滅→遠くから賑やかな声、村の人たちが帰還してきたみたい→何故か魔法で飛んで消えるラムール→俺ひとりぼっち→村の皆さん到着、そして村の中央にいる俺→何故ここに死んだはずのモンスターが!?→バトルスタート!
てな感じ。
・・・俺悪くないよね。飛んで上からニヤニヤと傍観していたラムールのせいだよね。
現在皆さんは、村の中央に集合・・・ではなく石造りの教会の中からチラチラとこちらの様子を伺ってきている。
冒険者のみなさんは、武器をこちらに向けて顔をこわばらせている。
どうみても、友好的には見えませんね、はい。
「色々と聞きたいことがあるかもしれませんが、まずはこちらから話させてもらいます。まず、みなさんが最初に思ったことはこれでしょう。『何故ここに討伐されたはずのモンスターが?』・・・でしょうか?」
「そりゃ当たり前ですよ姉御!俺たちを騙したんですか!?」
「それもそのはず、この子は私の使い魔になったんですよ」
「俺のことは無視ですか!?」
なんかシグルがわめいているけど無視するラムール。俺にもよくわかる、あのタイプはやたらめったら暑苦しいし、人の話きかなさそうだからな。
ラムールはどこからかギルドカードを取り出し掲げると、そこには確かに、混沌百足という文字が記されていた。
「このとおり、この混沌百足は私の支配下に置かれていますので、別にとって食ったりはしません。そしてもう一つ・・・シグル!」
「・・・なんすか姉御・・・?」
「ここからの話は、国家機密です。あなたたちが他に漏らさないという確約ができなければ、即刻ここから立ち去ってください」
ラムールは、冷たい声でそう言う。まあ、確かに〈神域〉はいろんな方面で貴重なことだからな。
いくら信用できる仲間だとしても、村以外の人物に情報を漏らしたくないのだろう。
シグルたち冒険者は、一度顔を見合ったあと、再びこちらをむく。その顔には、先ほどまでにはない覚悟が伺えた。
「・・・大丈夫っすよ。俺たちは、本来ならばここにいちゃいけない。だが、姉御はそれを分かっているのに、俺たちにそう訪ねてきた。その信頼を裏切ることは決してしません。―――そうだろてめえらっ!!」
「当たり前ですよ隊長!」
「姉御たちが信頼してくれるなら、それそうおうの覚悟を俺たちも見せるってもんですさ!!」
「一体どんなことであれど、ついていきますよ!俺たちをここに残してるってことは、俺たちの力を借りたいってことなんでしょう?」
「そうだ!俺たちは力を貸すだけだ!そうだろ皆!!」
「「「「「おおっ!」」」」」
息のあった掛け声が村に響き渡る。暑苦しい・・・。
「・・・では、いきましょうか。実は・・・ここが次期〈神域〉に選ばれたのです」
「・・・・・・・・・はあああああああああ!!??」
またしても、息のあった驚きの叫びが、村の人たちを交えて、村の響き渡った。
*
「え、嘘、嘘ですよね?姉御?」
「私を疑うのですか?シグル」
「いやいや、いくらなんでもそれは・・・」
村の人たちもどうにも半信半疑で、いまいち信じられないようだ。
まあ、当然の反応だわな。いきなり、自分の住んでいる所が期間限定の世界遺産に選ばれました、といっても誰も納得できないだろうし。俺もできない。
皆が首を傾げていると、一人の大柄な男が出てきた。
鍛えられた重厚な筋肉と、光り輝くスキンヘッドがまぶしいぜ!
「いや・・・ラムールさんが言っていることは本当だ。俺にも覚えがある」
「それは、本当ですか!?村長!?」
男がそう言うと、周りの村人が騒ぎ始める。
なるほど、あれがこの村の村長か。村長といったら、もっと老人かと思ったんだけどな・・・。
「確か少しくらい前のことだ・・・夢の中に、一人の少年が出てきてな。銀の髪に、とても人の手でできるとは思えない装飾と、見ただけでわかるほどの上質な服を着た少年だった。彼は薄く笑いながら言った。
『もうすぐ、面白いことが起きる。豊かな豊穣の地か、もしくは争い止まぬ戦乱の地。どちらにせよ、われらを楽しませることだ』
・・・そう彼は言った。あの時は何が何だか分からず、魔物による悪戯かとも考えたが、今ならわかる。彼は、多分神なのだろう。そして俺に、ここが〈神域〉となることを教えに来てくれたのだろう・・・とな」
「そんなことがあったんですか・・・」
夢の中に神様か・・・テンプレだな。そう言えば、俺は転生のはずなのに、神様に会ってないな。
正直、いきなり放り出されるのには参った、事前にどこか不思議空間に連れて行って、説明ぐらいしてくれてもいいと思うんだけどな・・・。
・・・ん?村長が夢の中教えられたってことはわかったんだけど、じゃあラムールはどうやってここが〈神域〉になることを知ったんだ?
『なんでお前は、ここが〈神域〉になるってわかったんだ?』
「ああ、それはですね・・・」
「「「「「・・・・・・・・・シャベッタアアアァァァァァァァッッ!!!」」」」」
『うっさいわ!』
なんか懐かしさを感じる村人アンド冒険者の叫びに思わず一喝。
想像以上の大声だったようで、一気に萎縮してしまった。
ラムールは、うわっ、とでも言わんばかりの目で非難してくる。
『・・・脅かしてすまなかったな』
無言の圧力に屈しました。無理だ、俺にあの圧力は耐えられない。視線による圧力は、この鋼の装甲でも防げないのだ。メンタルが弱いからね。
冒険者たちは、顔を再び見合わせて、意を決したように問いかけた。
「お、おいムカデ!お前は、俺たちの言葉がわかるのか?」
『一応な。逆に、魔物とかの声はわからんぞ』
「・・・・・・これも、姉御の魔法ですか?」
「私のせいじゃないみたいですよ。どうにも、スキルのせいみたいです」
「スキル?それって、俺たちが使う、【十字切り】とか、【突貫】とか、そういうやつですか?」
『だいたいそんな感じで間違えないな。というか、二個目は特攻技だろう。そんなスキルをよくつかってんのかお前ら』
「それは、多少疲れはするがなかなかの攻撃力があるし、大抵のモンスターはそれで一発だからな。・・・お前の場合は、刺さるどころか、かすり傷すらできなかったがな」
ああ、もしかして村のときに特攻してきた槍が紫色に光ってたのはそういうことか。俺のはいまいち光らないからな。その分、威力的とか周りに与える被害度は段違いだがな。魔物と、人との違いか?
「あんたら、馴染んでるところいいんだが・・・そろそろ俺たちにも教えてくれるとありがたいんだが・・・」
どこか置いてけぼりを食らっていた村長が、寂しそうに聞いてきた。男のそんな声を聞いても全くもって気持ち悪いだけなんだけど。
「つまりザックリと言いますと、
・混沌百足に危険はない。
・この村は、次期〈神域〉。
・この村に、守護者として混沌百足が滞在する。
てな感じ「いやいや待てよお前」・・・なんですか。人の話を途中で遮るとは失礼ですよ」
ラムールが睨みながらそう村長に言う。
しかし、どちらかというと話を遮った村長より、ラムールの方に非難の視線が注がれていた。
「そこにいる、混沌百足がこの村の守護者にってか?馬鹿言っちゃいけねえよ。そんなこと聞けるはずねえ」
「何故です?戦闘能力には、問題はありませんよ?」
「姉御・・・流石に俺も同意できません。いくら強かろうと、モンスターなんか、信用できないっすよ。それに、そのでかさじゃ食料も足らないし、村に入ることさえできないっすよ」
そりゃそうだよね。食料は自分で獲ってくるし、僕の中に【影忍び】で入れば村に入れるといっても、信用だけはな・・・いくら善人であっても拳銃片手に自分の部屋に入ってきたら、怖くて仕方ないしね
。
さらに言うと、俺はモンスターだしな。
「その点に関しては、問題ありません。この混沌百足は、物の影に入ることができるみたいですし、食料は・・・虫さんは、人間を食べるタイプですか?」
『えっ、無理無理!まずくて食えたもんじゃねえよ。正直『緑鬼小僧』の方が、数十倍ましだし』
「・・・だそうです」
「・・・これで信用しろと?無茶だろ」
ですよねー。
ラムールが、村長を説得していると、教会の中から少女が飛び出してきた。
金色の少しウェーブのかかった髪に、ワンピースのような服の少女―――レイラだ。
「あ?レイラか、ここは今大人の話をしてんだ。ちょっと母さんとこで遊んでてく―――」
「―――その虫さんはいい人だよ!!」
レイラは、そう大声で叫んだ。いい人っていうよりは、いい虫って方が正しい気が・・・。
村長も、ラムールも、シグルも、ここにいる全員が目を開けてその声に驚いていた。
「虫さんが助けてくれたから、お母さんは助かったんだもん!だから虫さんはいい人だよ!」
「落ち着けレイラ。何を言っているかわから「その子が、ミスラさんのために薬草を取りに行ったところ、そこにいる|混沌百足《カオスセンチビートル』がなんと治癒属性の精霊石をくれて、この村まで運んでくれたみたいですよ」・・・」
先ほどの意趣返しか村長の言葉を遮り、ラムールはそう言った。
仕返し成功といった感じで、ラムールは口元に笑みを浮かべている。
「これで、信用は大丈夫ですよね?無力な子供を喰らうどころか、わざわざ村まで送り届け、あまつさえ貴重な精霊石さえ分けてくれるんですから」
「・・・その点に関しては、礼を言う。しかし、どうにも村にモンスターを引き込むには・・・」
「私からもお願いします。あなた・・・」
教会から、少女の母親(先ほどのラムールの発言からして、ミスラか?)がよろめきながらも周りの人の手を借り、ゆっくりと歩いてくる。
村長は目を見開き、慌ててミスラのもとに向かう。
「ミスラ!まだ寝ていなくては・・・」
「私のことは大丈夫です。それより、そこにいる虫さんのことですが・・・どうにかこの村に住ませることは出来ないんですか?」
「いくら妻を助けられたといっても、俺は公私混同はしない。たとえ俺が納得しても、村の連中が納得しないだろう」
・・・えっ、マジで?夫婦なの?てことは・・・レイラの父親は村長!?
この強面から、どうやってこんなに可愛い子が・・・。
「・・・わかりました。では、虫がこの村に滞在中、シグル達を何人かここに常駐させます。さらに、混沌百足にいくらか農作業などを手伝わせても構いません。これでどうですか?」
なんか譲歩したみたいに言ってるけど、あんた何もしないよね?やること増えたのは、俺とシグル達だけだよね。
「それなら、村の奴らも納得するかもしれん。今はいろいろと忙しい時期だからな。なんであんたがそこまでこいつに入れ込むかは知らないが・・・まあいいだろう。守護者を頼むぞ。妻と子の恩人・・・いや恩蟲よ」
こうして、俺の就職先(?)は決まった。
*
『結局、なんで〈神域〉に関してわかったんだ?後、なんで俺にそこまでしてくれるんだ?』
「〈神域〉に関しては、その地域に魔力が集まり始めるので魔術師にはわかるんですよ。ただし、微妙な変化なので、それなりに修業を積んで魔力を魔法なしで感じるぐらいまで、鍛えなければいけませんが」
『どれくらい修業すればできるようになるんだ?』
「だいたい・・・四十年くらいですかね?私は、二年ちょっとでできるようになりましたが」
『・・・・・・・・・』
「あなたに入れ込む理由は、そうですね・・・なんとなく、面白そうだからですよ」
誤字脱字アドバイスなどありましたら、ご報告ください。




