十一話 守護者とある時の雑談
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「―――この村の守護者になりませんか?」
ラムールはそう微笑みながら告げた。
守護者?しかもこの村の?
守護者ってことは、守る仕事としてわかるけど、この村ってのはわからない。
いやだって、このどこにでもありそうな村の守護だよ?
どう考えても守護を付けるほどの重要さが考えられない。
「その様子ですと、どうしてこの村に必要なのかがわからないという感じですか?」
首を縦に振り、肯定を示す。
「確かに、この村には国家規模の機密があるとか、この村でしか作れない貴重な物資があるとか、そういうことはありません。この村に守護をつけるのは・・・この〈エレメル村〉だからですよ」
ふむ・・・さっぱりわからない。
実はこの人、ちゃんと説明してるようで全く説明する気が無いな。
殆ど要領得てない説明だし、それとこの村は〈エレメル村〉っていうのか、覚えておこう。
「・・・ああ、すいません。わかりにくかったですね。つまり言うと、この村の存在自体が守護が必要に値するのですよ」
ふむふむ、つまりこの村は何か由緒正しき村とかそういうことなのか?
もしかして、この世界で最初の国王が生まれた村とか?国自体があるかどうか知らないけど。
「国王が生まれたとかそういうことはありませんよ」
いい加減心を読むのをやめてもらいたい。
さっきから、本当に絶妙なタイミングで読んでくる。
俺が不機嫌そうに唸っても、ラムールはどこ吹く風と言わんばかりに無視し、話を続ける。
・・・都合のいい時だけ、心が読めないふりしやがって。
「実はですね、この〈エレメル村〉は、次期神域区域なのですよ」
神域?神様か何かが降りてくる場所か何かなのか?
「『神域』とは、比較的争い等が起きず住民などの気性が穏やかな場所が五十年に一回神によって選ばれ、神が一年の期間をおいて、本当にそこが『神域』に選ばれるかどうかにふさわしい場所なのかを選定し、それも合格した場所に送られる称号です」
・・・神様ってほんとうにいるのか。まず、そこに驚きだ。
しかも、称号って・・・俺と同じものか?ほらあのステータスに乗ってる奴。
しかし、『神域』とやらにはそんなに価値があるのか?
「とんでもなく価値があるものですよ。神に選ばれるだけでも光栄であるのに、更に『神域』された場所では、神による加護や祝福を受けた者が続出するのですよ。具体的には、農作物の収穫が倍増したり、雨等に困らなくなったりとか、強力な戦士や魔法師が誕生したりとか、そういうことです」
めちゃくちゃ価値があるじゃねえか、神様大盤振る舞いじゃねえか。
そう俺が驚いていると、ラムールは悲しそうに顔を伏せた。
「そう・・・それだけの場所が狙われないと思いますか?神々の恩恵が与えられる場所を、戦争で有効な強力な兵が生まれる場所を・・・」
・・・なるほどな、それだけの恩恵が与えられる場所つまり、それだけ旨味がある場所を、ほかの奴がほおっておくわけがないと。
「『神域』に選ばれる条件は、『比較的争いが起きず、住民の気性が穏やかな場所』・・・選ばれる条件ということは、つまり、選ばれたあとは何をしても恩恵を受けられてしまう、ということが問題なのです。この村に住む人たちは、皆が皆いい人ばかりです。それだけに、ただ他国や盗賊等に蹂躙されると思うと悲しくてしょうがありません・・・」
選ばれる条件さえ満たせば、後はなんでもやりたい放題か・・・条件を満たさなくなったら、自動的に『神域』が解除するよう設定すればいいのに・・・いや、それを神様が分かってやってるのかもな。
「幸いにも、この情報は私とあと一人しか知っていません。あと一人は、この世からいますぐ消し去りたいほど憎いですが、いちおう信用には値する人だと・・・思いたいです」
願望系!?まさかの!?
「・・・(本当に、なんでこんな面倒くさいことばかり・・・最初は左遷されたばかりと思っていましたが、まさかこんな裏があったとは思いませんでしたよ。全ては、ギルド長の手のひらの上ということですか・・・ということは異常種がなんたらも建前で、全部あとの展開を読みきっていたとかそういうことですか。)・・・」
なんか、めっちゃぼそぼそ呟き出した。はっきりいって負のオーラが漂いまくってて、怖い。
子供いたら泣くぞこれ。
しばらく経って落ち着いたのか、ラムールは一つの鉄製のカードを取り出した。
これは・・・屍街道で死んでいた、旅人たちが持っていたものか?でも、こっちのほうが煌びやかだな。
「これは、ギルドカードと言って端的に言うと便利なものと覚えていただければいいです。このカードに、あなたを使い魔として登録すれば、この場所にて生活することができます。もちろん、本当に使い魔になってもらうわけではありません。あくまで建前です」
使い魔か・・・確かにそれに登録すればこの図体でも、下手に怯られることもないか。本当に使い魔になるわけでもないし、どうしようか・・・。
守護者になる・・・しかし、イマイチ俺にメリットがあるようには思えない。どうしたものか・・・。
俺が悩んでいると、ラムールは言った。
「あなたのメリットに関しては安心してください。ここが神に選ばれた土地な限り、守っているということでなにかしら恩恵が与えられるはずです」
それなら、俺のメリットに関しても大丈夫か。
あとは、気持ちの問題・・・ここで受けるか・・・受けないか・・・。
「さあ―――どうしますか?」
俺は首を――――――――――。
*
『―――クハハハハハッ!アハハハハッ!』
『あら、どうかしたのかしら?』
『なんじゃなんじゃ、なにか面白いことでもあったのかのう?』
『アハハハハハハハッ!―――ああ君たちか。見てみろよこれ!』
『これは・・・随分とおかしなものね』
『確かに、魔物の体に、人間の魂が入っておるな。しかもこの魂、この世界のものではないであろう?』
『大正解!この魂は、別の世界のものだよ!』
『なんと!いったい誰がこんなことを?』
『僕だよ僕!最近はなにかと暇だからね、面白そうだからやってみたんだが、これがなかなかの暇つぶしになってね・・・ククク』
『やれやれ、またあの爺さんに怒られてもしょうがないわよ?』
『バレなきゃいいのさ。どうする?君たちも見るかい?』
『共犯者ということかしら?いいわ、のってあげましょう!』
『儂ものらせてもらおうかの』
『あたしも!』
『・・・・・・私も』
『おお!?いつのまに来たんじゃお主ら!?』
『いや~なんかが起きそうな気配がしたからね!内容は知らないけど、とりあえず賛成してみた!』
『・・・・・・右に同じく』
『本当に、油断にならん子ばっかりじゃな・・・』
『同意だわ・・・』
『もう!子供なんて年じゃないよ!』
『・・・・・・右に同じく・・・』
『僕から見れば、みんな子供だよ』
『あなたと比べるのは、いろいろと基準がおかしいわよ・・・』
『・・・・・・右に同じく・・・』
『・・・あなた、さっきから右に同じくしか言ってないじゃない・・・』
『・・・・・・私も、そう思う・・・』
『・・・・・・・・・』
『諦めちゃダメだよ!そんなことじゃ、三十回は心が折れちゃうよ!』
『・・・あなたは、明るくていいわね』
『それがあたしの取り柄だしね!』
『・・・・・・・・・』
『ほらほら、しょげないしょげない!話がずれてるよ!』
『何の話じゃったかの?』
『ほら、新しい魔物の話だよ。物忘れが激しすぎるよ』
『ホッホッホ!最近は年のせいかのう、許してくれ』
『まあ、いいんだけど・・・君たちもひとくち乗るということでいいんだよね?』
『そうだよ!』
『・・・・・・そうよ・・・』
『それで、今はどうなってのよ』
『いまかい?いまは、『神域』の守護者になるところみたいだよ』
『神域?それって今回は・・・〈エレメル村〉だったかしら?』
『そうそう、正解だよ。どうやらそこの守護者になるところみたいだね』
『今回の『神域』選定者は確か、おじいちゃんだよね!』
『・・・・・・大丈夫なのそれ?バレない?』
『ハッハッハ!耄碌してるあの爺にバレるはずないじゃないか!』
『本当よね・・・』
『・・・・・・多分・・・』
『大丈夫じゃないかな!』
『・・・まあいいわ。さっさと続きでも見ましょう』
『さあ虫よ。存分に―――僕らを楽しませてくれたまえ!』
謎の人物!
深まる謎!
まあ、なんとなくわかる気がしますが。
誤字脱字アドバイスなどありましたら、ご報告ください。




