八・五話 ギルドの人々 byエレメル村出張版
お待たせしました!
今回はラムール視点で進めていきます。
少し短いですが、お楽しみいただければ嬉しいです。
それではどうぞ!
〈side エレメル村臨時ギルド〉
「―――無理です」
「では、依頼失敗ということで違約金を支払い下さい」
こんにちは、シムル砦街ギルド支部のギルド長に左遷され、エレメル村臨時ギルド長に就任したラムールです。
今日もまた無茶な依頼を受けた冒険者が帰ってきました。
・・・てか、冒険者いなさすぎでしょう。まだ、六人しか見たことありませんよ。
それにしても、なんて退屈なところに飛ばされてしまったんでしょう・・・。
シムル砦街ギルド支部では、たくさんの冒険者たちが常にいて仕事のしがいがあり、また付設された喫茶で(騒ぎを起こすので酒場ではない)いつも出してくれるマスターの紅茶を飲むのが私の唯一の楽しみだったというのに・・・。
それに比べここは・・・冒険者も少ないし、紅茶もありません。
はぁ・・・・マスターの紅茶が飲みたい・・・。
「―――えーと、あの、聞いてますか?ギルド長?」
私が窓を見ながら黄昏ていると、先ほど依頼の失敗を言いに来た冒険者(男)が何かを言ってます。
「・・・なんですか?さっさと違約金払って消えてください」
「何故!?てかなんでそんなに不機嫌なんですか!?」
「明日消える人にはわからないんですよ・・・左遷された人の気持ちなんて」
「だからなんで!?物騒なこと言わないでくださいよ!ってそんなことはどうでもよくて!今回の依頼失敗には理由があるんです!」
・・・またこいつは・・・。
「なんですか?また前みたいに竜でも出ましたか?もしくは、オーガの大群ですか?妄想はあなたの頭の中だけにしてくださいね」
「俺そんなこと今まで一言も言ってないですからね!?てか妄想じゃありませんよ!ちゃんとした理由です!」
「いちおう聞いておくだけ聞いておきましょう。特に何をするということはありませんが」
「ちゃんと対処してくださいよ!今回の失敗の原因は、混沌百足が出たからなんです!」
「・・・なんですと?」
これはめんどくさそ―――聞き逃していけないことを聞きました。
「・・・それは本当なんですか?」
「マジです、マジ!あの《特殊災害指定個体》の、混沌百足ですよ!」
―――《特殊災害指定個体》。
それは、モンスターランクがBランク以上であり、更にそれらが発生した場合甚大な被害が発生するという強力なモンスターに付けられる称号みたいなものだ。
《特殊災害指定個体》の中にもランク付けがしてあり、一番下から順に、
都市級:対策準備があまり整備されていない都市が殲滅されるかもしれないほどレベル。
砦級:対策が完璧に準備されていても、突破されてしまうかもしれないレベル。
国家級:国家存亡の危機。非常事態宣言。
大陸級:大陸中の国の存亡の危機。これが発表された場合、戦争中であろうと紛争中であろうと、すべての国家が手を組み合わなければいけないレベル。
という感じになっている。
今回出現が確認されたモンスターは、国家級のAランクモンスターの混沌百足だ。
複数属性耐性をもちながら、繰り出される技も強力であり、並みの魔法や武器では傷つけることすらできない堅牢な鎧を持っている。
しかし、混沌百足が恐れられるのはそこではない。
国家級まで混沌百足をいたらしたのは―――配下の無限召喚。
そう、まだ詳しくは解明されてはいないが、混沌百足には自分よりランクが下のモンスターをほぼ無限に召喚することができるのだ。
これはとても恐ろしいことだ。
数というのは一種の武器という賢者の格言がある。
どれだけ倒しても一向におわりが見えず、無限に湧き出るモンスター。
そのため、混沌百足は、国家級とAランクではありえないランクに位置づけられているのだ。
「・・・本当に、本当に、本当に、混沌百足だったんですか?」
「どれだけ俺信用がないんすか!?」
「そりゃ、いつも身の丈に合わない依頼ばっかりこなしているものだから、ギルドでブラックリストに登録されるくらいには」
「全部俺のせいじゃないのに!ウワーン!」
いじめいていたら、泣いてしまった。
しまった。あまりに暇だったから、やりすぎてしまった。
しかし、大の大人が泣いているのがこんなにもみっともないとは・・・。正直気持ち悪いですね。
しょうがないので、慰めることにしましょう。
「・・・大丈夫ですよ。ギルドは今回の報告に対し、調査をすることに決定しました」
「ぐすっ・・・信じてくれるんですか?」
「まあ、無視して被害が出た場合、私の責任になりますしね」
「・・・なんか本音が聞こえるんですけど」
おっと、つい口が滑ってしまいました。
「まあ信じてもらえるならいいです。では―――っと一つ言い忘れました」
「・・・?なんですか?」
「不思議なんですか。その混沌百足―――黒色だったんです」
「・・・・・・黒色ですか」
「そうなんですよ。確か普通は茶色でしょう?だからおかしいと思って一応報告を・・・」
黒色の混沌百足・・・そして、私がここに来ることになった理由の鋼装巨蟲・・・何処かでつながりがありそうですね。
てか、忘れてました。さっさと終わらせればよかったですね・・・。
「では、私が調査に行くとしましょう」
これが、後に伝説に残る女魔道士と虫の出会いだった。
「それなら俺はこれで―――」
「あっ、待ってください」
「?どうかしましたか?」
私は手を前に差し出して、言いました。
「―――依頼失敗の違約金を」
「なんで!?納得したじゃないですか!?」
「ちなみに、私が報告しなければギルドには理由もなく依頼を失敗した。ということになりますので」
「堂々と賄賂請求!?とんでもねえ悪徳ギルド長だよ!」
そんな今更な。
ちなみに、冒険者(男)はとても運が悪いです。
ラムールは、腹黒です。
名前とか決めたほうがいいのかな?
訂正
・女騎士から女魔道士に変更。
次回は主人公視点で進めていきます。
たぶん、次は人間と会えるかな・・・?




